報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「温泉から帰ろう」 2

2021-04-12 16:06:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月28日16:11.天候:晴 東京都八王子市高尾町 JR高尾駅→中央線1646T電車10号車内]

 藤野駅から私達を乗せた中央線快速電車は、高尾駅に到着した。
 ここで列車番号の末尾のアルファベットがMからTに変わる。
 利用客には関係無いが、ダイヤ設定上、『列車』から『電車』へと変わる瞬間だ。
 首都圏にお住まいの方なら、こんな言い回しを聞いたことがないだろうか。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の3番線の電車は、16時11分発、快速、東京行きです。次は、西八王子に止まります〕
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の4番線の列車は、16時27分発、普通、小淵沢行きです。……〕

 なんて。
 乗客にとっては何がどうなるというわけでもない言い回しの違いだが、これはダイヤ設定上の違いによる。
 今は『電車』も『列車』も、自車にモーターを積んで走る車両が多くなったから見分けが付かないが、『電車』とはいわゆる国電のこと。
 かつては焦げ茶色をして走っていた通勤電車のこと。
 『列車』とは汽車ポッポのこと。
 最近のJR東日本は、そんなかつての汽車ポッポも通勤電車みたいにロングシートを増やしてきているが、要はそういうことなのである。
 なので、ダイヤの作り方が違うらしい。
 電車は加減速共に俊敏で、汽車は鈍い。
 だから同じダイヤの作り方では、運行管理に失敗する。
 それで、内部では厳密に『電車』と『列車』を区別しているらしい。
 もちろん、乗客にはそんなこと知ったこっちゃないが。
 新幹線はどうなのかというと、そもそも考え方が在来線と違う。
 厳密に言えば『列車』なのであるが、そもそも開業時からして『電車』であり、旧国鉄内部でも0系のことを『新幹線電車』と呼んでいたので、何とも言えない(実際に新幹線ホームの放送でも、『列車』ではなく、『電車』と言うことが多い)。

〔「この電車は16時11分発、中央線快速電車、東京行きです。途中駅におきます特別快速の通過待ち、接続はございません。まもなく発車致します」〕

 乗務員交替もここで行われる。
 ここでJR東日本の支社が変わるのだろう。
 旧国鉄時代で言えば、管理局が変わるといったところか。
 ホームから発車メロディが流れて来た。

〔3番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 高尾駅にはホームドアが無く、車両のドアが閉まるとすぐに発車する。
 これは高尾駅に停車する車両の規格がバラバラで、それに合わせたホームドアが造れないからだろう。

〔この電車は中央快速線、快速、東京行きです。停車駅は吉祥寺までの各駅と、荻窪、中野、新宿、四ツ谷、御茶ノ水、神田、終点東京です。次は、西八王子です〕

 中央線の快速電車は、平日と休日とでは停車パターンが違う。
 平日はこれよりもっと多くなる。
 その分、特快の本数は増えるのだが。
 せっかくの直線区間なのに、停車駅が多いせいでスピードダウンしている問題が発生している。
 休日ダイヤの快速くらいがちょうど良いだろうに、ここで『杉並三駅問題』が出て来る。
 気になる方はネットで検索。

 リサ:「もうトンネルは無いね」

 リサが話し掛けて来た。

 愛原:「高尾から東はもう無いよ。いきなり景色が変わるからびっくりするな」

 高尾から東はまだまだ通勤路線って感じなのに、そこから西はいきなりガラリと景色がローカル線に変わる。

 リサ:「トンネルの中は、どうも研究所に連れて行かれるような気がして不安なの」
 愛原:「そうなのか。じゃあ、行きはずっと地下鉄だったから辛かったろう。悪かったな」
 リサ:「今は大丈夫。笹塚まで我慢すれば良かったから」

 京王新線は名前の通り、京王電鉄の路線なのだが、笹塚駅以外は地下区間ということもあり、まるで都営地下鉄新宿線の延長線のような感じになる。

 愛原:「帰りはこのまま東京駅まで行こう。そしてこの前みたいに夕食を食べて、それからバスで帰ればいい。それなら、トンネルを通らずに済むぞ」
 リサ:「うん、そうだね。それがいい」
 高橋:「先生のお計らいだ。先生の大慈大悲に感謝しろよ?」
 リサ:「分かった」
 愛原:「……いや、高橋。飯代奢るんだから、そこはオマエにも感謝してもらわないと」
 高橋:「あっ、サーセン!」
 リサ:「お兄ちゃん、アウト~」

[同日17:24.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔次は終点、東京、東京。お出口は、左側です。新幹線、山手線、京浜東北線、東海道線、上野東京ライン、横須賀線、総武快速線、京葉線と地下鉄丸ノ内線はお乗り換えです。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 私達を乗せた電車は、まもなく中距離の旅を終えて終着駅に着こうとしている。
 この頃リサは、私に寄り掛かってウトウトしていた。
 高橋は他の乗客達と同様、スマホを弄っている。
 どうもまた霧崎さんからの束縛が強くなっているらしい。
 LINEが来たら既読してすぐに返信しないと怒るのだそうだ。
 私が大丈夫かと心配すると、高橋は苦笑して言った。

 高橋:「あいつ、生理前でムラムラすると、いつもこんな感じなんです」

 とのことだ。

 愛原:「生理前になるとヤらせてくれるなんて幸せ者じゃないか」
 高橋:「雌蜘蛛に食われると分かってて、ヤりに行かなくてはならない雄蜘蛛の気持ちが分かりますよ」

 との返しに、私は何も反論できなかった。
 この事から、蜘蛛という生き物はきっと創造神から何か睨まれるようなことでもしたのかと思われる。

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京、終点です。車内にお忘れ物の無いよう、ご注意ください。1番線に入ります。お出口は左側です。今日もJR中央線をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 電車がホームに滑り込む。
 東京駅中央線ホームも、たまに規格外の特急車両が発着することもあるからか、ホームドアは無い。

〔とうきょう~、東京~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 ドアが開いて、私達は電車から降りた。
 リサはマスクに隠れた口を大きく開いて欠伸をしている。

 高橋:「先生、夕食はどこにしましょう?」
 愛原:「この前行ったキッチンストリートにしよう。この前はステーキ屋だったが、今度は俺の行きたい所でいいか?」
 高橋:「お供します!」
 リサ:「お供します」

 尚、この時点でリサは肉ではないと思って、少しがっかりしたらしい。

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