報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 第4章 「記憶」 10

2016-07-24 20:39:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月28日05:46.天候:晴 アンブレラコーポレーション・ジャパン 霧生開発センター]

 4階の女子トイレは個室が4つある。
 奥から2番目の個室に、“トイレの花子さん”は出るという。
 私は早速、奥から2番目の個室をノックした。
 すると、中からドアがノックされた。
「花子さん、いますかー?」
 と、声を掛けると、
「はーい!」
 という返事が返って来る。
 ベタな“学校のトイレの花子さんの法則”だ。
 そして、ドアを開けると……誰もいない。
「くすくす……」
 という笑い声がするので、上を見ると、ドアの上から花子さんがこちらを見ている。
 捕食者のような目で……。
 ……のはずなのだが、いない。
「何だよ、もう!」
 私は肩透かしを食らった気分になって、トイレを飛び出した。
 あの研究員を助ける為だ。
「!!!」
 案の定、研究員はタイラントに捕まっていた。
 身長216cmもある大男で、土気色のスキンヘッドにサングラス、そしてくすんだ緑色のロングコートを羽織って、両手には黒い革手袋を着けている。
 それが研究員の襟首を掴んで、持ち上げていた。
「た……たしゅけ……」
 研究員は虚ろな目をして私を見た。
 だが、マシンガンすらろくすっぽ効かなかったタイラントだ。
 今の私は丸腰。
 とてもどうすることもできない。
 すると、背後から気配を感じた。
 振り向くとそこにいたのは……。
「花子さん……いや、リサ・トレヴァーか?」
 肩まで伸ばした黒髪に、白を基調としたセーラー服をモチーフにしたと思われる制服のようなものを着ている。
 白い仮面には目の部分に2つの細長い穴しか開いていない為に、顔は分からない。
 タイラントとは、明らかに50〜60cmもの身長差があった。
 その少女が口を開いた。
 もちろん、仮面にその口は隠れているのだが。
 その為か、地声ではない声が聞こえて来た。
 よく、何か凶悪事件などが発生した時に、テレビが関係者にインタビューすることがあるだろう?
 その際、関係者のプライバシーを守るという名目でボイスチェンジャーが使われることがある。
 そのボイスチェンジャーで喋っているかのような声だった。
「お前はその男を助けたいか?」
「何だって?」
「今しがた会ったばかりの赤の他人と、今まで一緒に戦って来た仲間達……男1人と女1人だったか。どちらかを助けてやろう」
「高橋君と高野さんは無事なのか!?」
「ああ」
 仮面の少女は大きく頷いた。
 高野氏の安否は分からないが、高橋は私の前であのタイラントに焼却炉に投げ込まれ、生きたまま焼かれたはずだが……。
「仲間達を選べば、高橋君と高野さんを助けてくれるのか?」
「ああ」
「た……たしゅけて……くらさ……!な……何でも……しますか……ら………!」
 研究員は苦しそうだ。
 私は言葉を選んだ。

 1:高橋君と高野さんを助けてくれ。
 2:あの研究員さんを助けてくれ。
 3:両方助けてくれ。
 4:まず、高橋君と高野氏が無事である証拠を見せて欲しい。

「あの研究員さんを助けてくれ」
 私はそう言った。
 何も、高橋君や高野さんのことなんかどうでもいいと思っているわけではない。
 それに、本当にあの2人が無事なのかどうか疑わしい。
 証拠を見せてもらおうと思ったが、さすがに目の前の苦しんでる人を助ける方が先だと思った。
 この事態を乗り切れば、必ず活路を見出せる。
 そう思ったのだ。
 だが、仮面の少女はニヤリと笑った……ような気がした。
 そして、
「ダメだ」
 冷たく言い放つと、タイラントに向かって何か合図した。
 タイラントは頷いてその研究員を……。
「わあああああああっ!!」
 窓ガラスに叩きつけた。
 窓ガラスが粉々に割れて、研究員は4階から真っ逆さまに落ちて行った。
 地面に落ちた時の、グシャッとかドサッという音が混じったような音が聞こえた気がした。
 私が呆気に取られていると、タイラントがゆっくり近づいて来た。
 今度は私の番だ!
 逃げなきゃと思ったが、後ろにリサ・トレヴァーがいることで、逃げられないと思った。
 動けなくなっている私の様子を見越してか、タイラントは私の右脇を通り過ぎ、リサ・トレヴァーは私の左脇を通り過ぎ、私の前に立った。
「……?」
 どういうわけだか、この2人から殺気が弱まった。
 もちろん、タイラントの大男ならではの威圧感はヒシヒシと背中に伝わっているのだが。
「これから私のする質問に答えてよ」
「……え?」
 相変わらずボイスチェンジャーで甲高い声を出しているかのような声であるが、口調は女の子らしくなった。

 1:分かった。
 2:やだよ。

「分かった」
「嘘をついても分かるの。私の能力の1つ。だから、正直に答えてね」

 1:分かった。
 2:やだよ。

「分かった。何を答えればいい?」
「あなたはさっき、仲間達と研究員、どちらを助けて欲しいか聞かれた時、研究員だと答えたよね?」

 1:そうだ。
 2:違うよ。
 3:何て答えたっけなぁ……。

「そうだ」
「あなたはどうして大事な仲間ではなく、見ず知らずの研究員だと答えたの?」

 1:ただ何となく
 2:あの時は研究員を助けたかった。
 3:嘘をついた。

「あの時は研究員さんを助けて欲しかったんだ。それ以上でも以下でもない」
「……次の質問に行くよ。あなたはこの町に何をしに来たの?」

 1:観光
 2:仕事
 3:受験
 4:犯罪
 5:ただ、何となく。

「仕事だよ」
 何だ何だ?このコは私を質問攻めにして、どうするつもりだ?
 タイラントは相変わらず、背後から私を見下ろして見ているだけだ。
 彼女が出した質問は、以下の通り。

『あなた達をレストランのゾンビから助けてくれた警察官の名前は?』
『1:高田 2:高木 3:高原 4:高畑 5:高森 6:名前は名乗っていない』

『その警察官の階級は?』
『1:巡査 2:巡査長 3:巡査部長 4:警部補 5:警部 6:警視 7:分からない』

『倒されたゾンビが低い確率で再び復活し、全体的に赤みを帯びて襲って来る化け物は何と言う?』
『1:赤鬼 2:クリムゾンヘッド 3:リッカー 4:スギャグデッド 5:プラーガ 6:ウーズ』

『霧生電鉄でゾンビ化した駅員は、何に噛まれてゾンビ化した?』
『1:クモ 2:ゾンビ 3:ネズミ 4:ノミ 5:ダニ 6:コウモリ』

『霧生電鉄の大ボス、大グモが網を張らなくなった訳は?』
『1:不明 2:元々そういう種類だった 3:巨大化したことで、その必要性が無くなった 4:クモの勝手でしょ〜』

『大山寺の宗派は?』
『1:日蓮宗 2:日蓮正宗 3:日蓮本宗 4:新日蓮宗 5:正信会 6:単立寺院』

『ジョージ・F・ロックウェルが所属していた特殊部隊の通称は?』
『1:USS 2:FBC 3:BSAA 4:UBCS 5:SECOM 6:ALSOK』

『高野芽衣子が隠れていた宿坊の名前は?』
『1:大恩坊 2:報恩坊 3:理境坊 4:石野坊 5:総一坊 6:広布坊』

『大山寺で壱之坊に現れた中ボスは、誰が変化したもの?』
『1:浅井城道 2:浅井克道 3:浅井信道 4:浅井妙道 5:浅井昭道 6:浅井甚道』

『大本堂で現れた大ボスの正式名称は?』
『1:リッカー 2:ハンターα 3:サスペンデッド 4:スギャグデッド 5:クリムゾンヘッド』

『大本堂で現れた大ボスは誰が変化したもの?』
『1:ジョージ 2:尼僧 3:修行僧 4:信徒 5:寺族 6:正確には分からない』

『大本堂の裏手のヘリポートに、救助ヘリが墜落した理由は?』
『1:操縦ミス 2:整備不良 3:欠陥 4:ガス欠 5:同乗者がゾンビ化した 6:パイロットがゾンビ化した』

『あなたは私を誰だと思う?』
『1:トイレの花子さん 2:リサ・トレヴァー 3:化け物 4:人間 5:未知なる何か』

『あなたは今、殺されると思う?』
『1:殺されると思う 2:殺されるとは思わない 3:殺されそうだが、死にたくない』

 何だろう?
 このクイズに何か意味でもあるのだろうか?
 もしかして、全問正解しないと殺されるのだろうか。
 それとも、誠意を込めて答えれば多少間違えても許してくれるだろうか。
 ……最悪、ただの彼女らの暇つぶしに付き合わされただけで、答えられようが答えられまいが、結局殺されるのかもしれない。
 私はどうなってしまうのだろう?
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする