報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 第4章 「記憶」 7

2016-07-21 19:45:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月28日02:00.天候:不明 アンブレラコーポレーション・ジャパン 霧生開発センター 警備室]

 私は再び警備室に戻ってみた。
 あの2人がどこに行ったのか、もしかしたら、どこかのカメラに映っているかもしれなかったからだ。
「ん?」
 警備室の前に着くと、中から何やらアラームが鳴っているのが聞こえた。
 何だろう?侵入警報か?それとも火災?……何だろう?
 とにかく、入ってみた。

〔「脱走事故発生!脱走事故発生!至急、現場係員はマニュアルEを実行せよ!室内係員は非戦闘員の避難に当たれ。繰り返す。……」〕

 何だって?脱走事故?
 今さら、ハンターが脱走したところで……。
 私はそのアラームが鳴っている機械の所へ走った。
 火災受信盤と同じく、アラーム停止のボタンがあったので、私はそのボタンを押した。
 途端に、室内に静寂が戻る。
 音を止めても良いのかって?うん、大丈夫。
 以前、探偵としての知識を深める一環として、防火管理者の資格を受けに行ったことがある。
 その時、火災受信盤にある主音響停止ボタンは、あくまでそれが設置されている部屋にいる人に、火災感知器が作動したことを知らせる為のものだから、押して止めても問題は無いということだった。
 押して止めるということは、少なくともその盤が伝えていることを了解したという意味だからと。
 恐らく、この警報装置も同じことだろう。
 そう思ったのだった。
 その盤にもモニタは付いていて、ある者が所内を歩いていることが分かった。
「タイラント……?」
 その機械には、タイラントという名の者が脱走したことを伝えていた。
 モニタに映っているのは、明らかに私の身長よりも高い大男。
 土気色をしたスキンヘッドにサングラスを掛け、ロングコートを羽織っている。
「あっ!?」
 そのタイラントと呼ばれた大男を、所内のカメラが自動で追っているようだ。
 そのカメラから映らない所に移動すると、今度は別のカメラに自動で切り替わる。
 だから、その男を映す角度が変わった。
 そこで分かった。
「高橋!」
 タイラントは左脇に、ぐったりした高橋を抱えていた。
 既に意識が無いのか、全く抵抗する素振りを見せない。
 タイラントはどこにいるのか分からないが、どうやらシャッターの降りた階段室に入り込んだようだ。
 タイラントにはクイズは出されないらしく、すんなりドアを開けた。
 そこで、カメラの映像は終わってしまった。
 階段にカメラは無いからである。
「……高野さんは?高野さんはどこに行ったんだ?」
 私は警備室内の個別モニタを見たが、全く高野氏は映っていない。
 あのトイレから彼女はどこに?

 1:あのトイレの中だ!
 2:タイラントに連れ去られてしまった?
 3:トイレの花子さんの仕業だ!
 4:もう1度、警備室内を探索してみよう。

 私は警備室内に何かヒントは無いかと探してみることにした。
 何しろ、電子ロック解除にクイズを出題するような研究所だ。
 で、ハズレるとハンターやリッカーの罰ゲーム付きだろ?
 もしかしたら、敵の仕業というよりは、この研究所の変な仕掛けに引っ掛かっただけなのかもしれない。
 まず、私は今の監視盤を確認してみた。
 今はタイラントが脱走したことを伝えていたが、実は他にもあるんじゃないのかと思った。
 タッチパネル式のモニタを操作すると、それまでの履歴を見ることができた。
 すると確かに、脱走したのはタイラントだけではないことが分かった。
 ハンターやリッカーなどは想定内だ。
 そいつらが電鉄のトンネルを通って、大山寺や霞台、そして市街地までやってきたんだから。
 タイラント脱走の前に、別の化け物が脱走していたことが分かった。

『6月23日 23:54:23.リサ・トレヴァー』

「リサ・トレヴァー?何だこれ?人の名前だよなぁ?」
 この研究所では、ちょこちょこ実験用の化け物が脱走したりしていたらしい。
 何て危ない研究所だ。
 しかし履歴をずっと見ても、明らかに人間の名前……外国人女性だと思われる名前をした化け物はそれだけだった。
 化け物に人間の名前を付けるとは一体、どういうことだ?
 もしかして、名前は人間っぽくても、実はあのタイラントよりとんでもない化け物だったりして。
 あいにくと、警備室内を探しても、それに関する資料は……あった!
 警備室の机の上に警備マニュアルがあって、その中に化け物の写真とその脱走した時の対処法が書いてあった。
 タイラントは確かにさっき、カメラで見た大男そのものの姿をしていた。
 ゾンビやハンターなどと比べると、何だか人間そっくりだ。
 特徴の所に、身長が216cmと書かれているところ以外は!
 対処法としては……マグナムによる集中砲火でもって弱らせた後、ロケットランチャーを撃ち込まないといけない!?
 ロケットランチャーなんてあるのかよ、都合良く!?
 マグナムといったら、高橋が持っているLホークとかコルトパイソンのことだ。
 ……あ、そうか!
 それでタイラントは唯一マグナム弾を放てる高橋を狙ったのか!
 クソッタレが!先手を打たれてしまった!
 マグナム弾を放つ銃を持っているのは高橋だけだ!
 こうなったら、ロケットランチャーを探すしかない!……って、あるのか!?
 私は警備室内のロッカーを開けてみたが、ロケランどころか、銃火器すら見つからなかった。
 この非常事態で、全て持ち出されてしまったのだろうか。
 だが、収穫はあった。
 それは車のキー。
 何の車だかは分からないが、5階の搬入口に止まっているトラックやバンの鍵であることを願う。
 そして、再び件のマニュアルのページを捲ると手が止まった。
 そこに、『リサ・トレヴァー』が写っていた。
 彼女もまた、見た目は人間とよく似た姿をしていた。
 それも、セーラー服のような服を着ており、まるで女子中高生のようだ。
 身長を見ても153cmとしか書いてない為、小柄な体型であることが分かる。
 但し、顔は分からなかった。
 何故なら、白い仮面を着けていたからだ。
 唯一両目の部分に、横に細長い穴が開いているだけであった。
 そしてその対処法は……。

『彼女を処分するのは非常に困難である。銃撃よる集中砲火を浴びせても、ものの数秒間だけ失神する程度である。まるで、アメリカ本国の研究所に存在したリサ・トレヴァー本人を彷彿とさせる』

 って、あれ?リサ・トレヴァーって、他にいたのか!?じゃあ、ここにいる彼女は一体……?

『アメリカ本国では研究所の自爆による崩壊で、ようやく死亡した。当所における“リサ・トレヴァー”もまた、動きをとにかく封じた上で、爆弾による爆死しか方法が無いのだろう。従って、彼女こそ絶対に脱走させてはならない』

 あ、あのー、どうやら脱走してるみたいなんスけど……?
 ん?その時、ファイルの隙間に何やらメモ書きが入っていた。
 それを見ると、こんなことが書いてあった。
 恐らくここの警備員が書いたと思われるメモだろう。

『リサのヤツ、脱走したはいいけど、4階の女子トイレに籠もり切りなんだ。それも奥から2番目の個室がお気に入りらしく、いつもそこに籠もっている。まるで、“トイレの花子さん”だ』
 と。
 アメリカ本国にいたという本物のリサ・トレヴァーとやらは、研究所を脱走してもずっと所内を徘徊して、突入してきた警察隊を翻弄させたらしい。
 こっちのリサ・トレヴァーは、“トイレの花子さん”なのか。
 すると、高野氏は“トイレの花子さん”に捕まってしまったことになるなぁ……。
 さて、どうしたものか?

 1:更に警備室内を探索する
 2:今度は研究室に行ってみる。
 3:4階の女子トイレに向かってみる。
 4:タイラントを探す為、階段に向かう。
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“私立探偵 愛原学” 第4章 「記憶」 6

2016-07-21 11:09:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月28日01:30.天候:不明 アンブレラコーポレーション・ジャパン 霧生開発センター]

 私達は不審な物音がした4階の女子トイレに向かった。
 私達も感染したであろうゾンビウィルス(Tウィルス)を完全に死滅させ、しかも抗体まで作ってくれるというワクチンを投与したおかげか、何だか勇気が湧いて来た気がした。
 そんな気持ちを抱き、件の女子トイレに向かった私は……。

「じゃあ、高野さん、お願いします」
「分かったよ。でも、ちゃんと後ろからついて来てよ?」
「分かってるって。じゃ、高橋君はトイレの前で張っててくれ」
「分かりました」
 私と高野氏とで女子トイレの中に入る。
 男子トイレの個室は3つだけだったが、女子トイレはさすがに4つある。
 但し、こちらは全部が全部引き戸になっているわけではなかった。
「こうしてみると、全部埋まってるように見えるね」
 高野氏はライフルではなく、ショットガンを持っていた。
 敵が出て来たとしたら近場である為、狙撃用ライフルは却って不利だということを知っているのだろう。
「じゃ、手前から開けてみましょう」
 因みに生存者がいるかどうかの確認だが、私達がこうして入ってきているのにも関わらず、また、高野氏のように女性がいるにも関わらず、何の反応も無いところを見ると、どうも望み薄と思われた。
 私がドアを開け、高野氏が突入するというもの。
 もし実は生存者が隠れていたということになっていても、高野氏ならば警戒されずに済むだろう。
 手前のドアは男子トイレには無い開け方だった。
 グライドスライドドアといって、よくノンステップバスの前扉にあるような大きな2枚扉があるだろう?
 そのうちの片側がこのトイレの個室のドアに使われていた。
 もちろん、ガラス張りなんかではない。
 そんなドアを開けてみた。
「……いないね」
「そうか。まあ、いきなりいたらアレだな。次に行こう」
 すぐ隣のドアを開けてみる。
「……いないね」
「ここもか。すると、後は残り2つだな」
「……何か、アレを思い出した」
 と、高野氏。
「あれって?」
「“トイレの花子”さん」
「は?」
「私の母校に、そういう噂があったんだよ。私の高校、木造の旧校舎が残っていてね、私がいた頃はもう使用禁止の立ち入り禁止だったんだけど、今はもう取り壊されている」
「それで?」
「そこの女子トイレも個室が4つあって、3階の女子トイレの奥から2番目の個室には“トイレの花子さん”がいるんだってさ」
「まあ、ベタな学校の怪談の法則だな」
「愛原さんの所にもあったの?」
「俺んところは男子トイレでね、3階の男子トイレの奥から2番目はハッテン場になるという別に意味で怖い怪談だ。……いや、もはや猥談かな」
「なに?ハッテン場って?」
「ANPさんに聞けば分かるんじゃない?」
「……まず、1番奥を開けてみるね」
「はいはい」
 1番奥と2番目は引き戸になっている。
 私は1番奥のドアを開けた。
「……誰もいないな」
「そうみたいだね」
「そうなると、やっぱりここか?」
 しかし、相変わらず中から何の物音もしないし、気配も感じられない。
「きっと、愛原さん達が男子トイレを調べていた時は、誰かがいたんだろうね。で、研究室に行ってる間に出たのかもよ?」
「あー、なるほど」
 そう思ったら、何だか安心した。
 よく見ると奥から2番目の個室にも鍵は掛かっていない。
 この研究所に何かがいるという疑惑は拭えないが、それがいるのはここではないという安心感だ。
 私はドアの取っ手に手を掛けた。
「じゃ、開けるよ」
「お願い」
 高野氏は一応、銃を構えた。
 そして開けようとしたその時!

 ザザー!

「!!!」
「なに!?」
 その個室の中から、水の流れる音がした。
 もちろん、それは便器の水が流れる音。
 男子トイレも含めて、女子トイレもウォシュレット付きの洋式だ。
「誰かいるのか!?」
 私はつい大声を上げた。
 しかし、中から返事が無い。
 そして高野氏は思わず、トイレのドアを3回ノックした。
 すると、向こうからもドアが3回ノックされたのである。
「や、ヤバ……!は、“花子さん”がいる……!」
「はあ?……いや、待て。確かに、何かしらのクリーチャーがいるかもだな。ちょっと、高橋を呼んで来る。3人で対処しよう」
 私がトイレの外に出ようとした時だった。
「わああああああっ!!」
 トイレの外から高橋の叫び声が聞こえて来た。
「高橋!?」
 私がトイレの外に飛び出した時だった。
「きゃあああああああっ!!」
 トイレの中からも高野氏の叫び声が聞こえて来た。

 1:自分は別方向へ逃げる!
 2:高野を助けに戻る。
 3:高橋を助けに行く。

 ……別に高橋のことが心配ではないということではない。
 だがやはり、女性の叫び声がしたら、そっちが先ではないか。
 そう思ったのだ。
 再びトイレに戻ると、高野氏の姿は無かった。
 代わりにあの奥から3番目の個室のドアが開いていて、中を覗き込むと、
「こ、これは……!?」
 そこには便器が無かった。
 いや、あったというべきか。
 便器があった場所にはポッカリと黒い穴が開いており、高野氏が持っていたライフルやショットガンがその横に落ちていた。
「高野さん!高野さん!」
 私は穴に向かって叫んだ。
 ここは4階なのだから、その下は3階になってるはずなのだが、何故か奈落の底に向かって叫んでいるような気がした。
 そして、その穴からは何の反応もしなかったのである。
「……そうだ、高橋は!?」
 私はマシンガンを構えながら、そっとトイレの外に出た。
 やはりというべきか、そこにも高橋はいなかった。

 一体、どういうことなんだ?

 高橋と高野氏に、何が起きたんだ?

 ここにはゾンビやハンター、リッカー以外の別の何かがいるということなのか?

「ゥ……ウウウウウウウウウウウウッ!」

「!?」
 その時、研究所内のどこからか大きな呻き声……いや、唸り声が聞こえて来た。
 それは低い女性の声(アルト)にも聞こえたし、高い男性の声(テノール)にも聞こえた。
 今の声を出したヤツが、高橋や高野氏を連れ去ったというのか。
 私は……私は何をすればいい?

 1:警備室へ行く
 2:研究室へ行く
 3:他の部屋を探す
 4:他のトイレを探す
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