報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「人の形弄びし美女」 

2014-04-27 20:48:18 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月26日 16:25.JR大宮駅埼京線E233系10号車内 稲生ユウタ、栗原江蓮、蓬莱山鬼之助]

〔この電車は埼京線、各駅停車、新宿行きです〕
〔This is the Saikyo line train for Shinjyuku.〕

「はー……もう少しでマリアさんに会えるのに……」
 ユタは寝落ちして寝過ごしたことを悔やんでいた。
「あれ?稲生さん?」
「おう、ユタじゃねぇか。何してんだ?」
 そこへ栗原江蓮とキノがやってきた。
「あっ、2人とも……。家に帰る途中……」
「大宮に1人で?」
「う、うん……」
「珍しいこともあるもんだ。おかげで今、外は今にも雨が降りそうだぜ」
「マジ?」
「さっき、何かorzみたいになってたけど、どうしたの?」
 江蓮がニッと笑って聞いて来た。
「い、言えない……。寝落ちして寝過ごしたなんて……」
「いつもイブキに起こしてもらってるからだろうが」
「そ、そうだね……。もうすぐマリアさんに会えるのに、しっかりしなくちゃ!」
「マリア?ああ、あのおもしろ魔道師コンビの弟子の方か」
 キノは笑いを堪えた。
「威吹達が応対してるはずなんだけど、失礼なことが無いかどうか心配だ……」
「ヘタすりゃ中央区が焼け野原になる勢いだもんな」
「しかし、オメーも趣味悪いな」
「え?」
 ユタはキノの言葉にムッとなった。
「ま、人の趣味に口出すなって姉貴に言われてるから、それ以上言わねぇが……」
(何をどう言ったら、そんなことを注意されるのだろう???)
 2人の人間は心の中でそう思った。
「ユタのような草食系には合わないと思うぜ。幸せになるんだろ?日蓮正宗の御信徒さんよ?」
「キノ。それ以上は言わない方がいいよ」
 江蓮が言った。
「おう、そうだな」
 驚くほど素直に頷いたキノだった。

 発車時間になり、電車が走り出す。
 副線に停車していた為、本線に出るポイントの移動で電車が大きく揺れた。
 地下線の闇、窓ガラスに映る鬼族の瞳は赤色で……赤色?
「キノ、キミの瞳は赤色だったっけ?」
「ああ、これか」
 キノは参ったと言った顔をした。
「満月が近くなるとよ、妖怪ってな、皆こうなるんだよ」
「どういうこと???」
「昔は妖力が暴走して、我を忘れるほど狂暴化してな、気がつきゃ人間共の死体の山よ」
「ええっ!?」
「今はいい薬も妖術もある。せいぜい、こうして目の色が変わるくらいだ。安心しな」
「いざとなりゃ、私がA級の霊力を駆使して押さえ込むから」
「大丈夫かい?」
「最悪、盟約書は焼却処分にする」
「……も、もう少し抑制剤飲んどくかな……」
 江蓮がキッパリ言い放つと、キノはポケットから錠剤を更に2〜3錠飲み込んだ。

[同日16:30.JR北与野駅バスプール側出口 稲生ユウタ]

 何でも栗原江蓮とキノは思うところがあり、今から正証寺に行くらしい。
 何だか深そうだったので、ユタは敢えて聞かないでおいた。

(※別作者の作品、江蓮側の視点で動く物語ではユタと別れた後、強い雨が降る中、寺院には行っていない。妖力の暴走を完全に抑え切れなかったキノは、最低限の理性を保ちつつも、ほとんど半強制的に江蓮をラブホテルに連れ込み、レイプまがいの方法で処女強奪をしている。当作品も本来ならその流れを踏襲する必要があるが……)

「雨か。傘持って来るんだったなぁ……」
 ユタは雨空を恨めしそうな顔で見上げた。
 こういう時、威吹が気を使って傘を持って迎えに来てくれるのがセオリーだが、そんな気配は無い。
 その代わり、
「遅かった……ね。迎えに来た……よ」
「あ、えーと……」
 普通の20代前半の女性の恰好をしていたから、ユタは一瞬、『誰?このお姉さんは?』と思ったが、
「マリアさんでしたか。わざわざ来てくれたんですか?」
「ええ……」
「ありがとうございます!」
 ユタはマリアからビニール傘を受け取った。
「マリアさん、お1人ですか?」
 ユタは傘を差して歩き出した。
「威吹が迎えに行くつもりだったが、私が行くことにした」
「よく威吹が納得しましたね?」
 ユタは意外そうな顔をした。
「そこは……まあ、その……平和的な話し合いで決めたと言うか……」
「はあ?」
 マリアはコホンと咳払いをした。
「ジャンケンで決めました?」
「いや、違う。……平和的な話し合いだ」
(何か、妙な胸騒ぎがするなぁ……)
 ユタは首を傾げた。
「そういえば、さっき鬼族のキノと会ったんです。満月が近くなると、妖力が暴走しそうで大変だと言ってました」
「ああ、なるほど。妖狐もまた人を食いたくなるわけか」
「その度に、僕の血をちょっとだけあげてるんですけど……」
「いい判断だ……ね」
 マリアは頷いた。
「魔道師なら、そんな面倒なことは無い……よ?」
「いいですねぇ……。あっ、そうだ。珍しいですね。ていうか、初めて見た気がします。マリアさんの普通の私服」
「! そ、そう……?師匠の見立てな……んだけど……」
「いいですよ!」
「……ありがとう」
「でもこの雨で、せっかく傘を差してても濡れてしまいますね?」
「本当は雨を避ける魔術があって、当然傘も要らないのだが、街中では目立ってしまうからな」
「へえ……。便利ですね」
 因みにマリアは眼鏡を掛けている。
 目が悪いわけでないようなので、度の無いダテ眼鏡であるようだ。
 魔道書を見るために掛けることが多いが、ファッションでも掛けるようだ。

[同日16:50.さいたま市中央区 ユタの家 ユタ、マリア、威吹、カンジ]

「ただいまぁ……」
「お帰り。魔道師に何もされなかったか?」
「いや、別に」
「何もしていない」
「ごめんよ。本当はボクが迎えに行きたかったんだけど……」
「どういう平和的な話し合いをしたのかは、あえて聞かないでおくよ」
 ユタは肩を竦めた。恐らく、ユタにとってはロクでも無い内容だろう。
 台所で夕食を作っているカンジは、
(さすがは稲生さんだ。このままどこか遊びに行くという手もあっただろうに、真っ直ぐ帰って来るとは……)
 と思った。
(草食系の成せる事か。まあ、そこが稲生さんのいい所だ。恐らく威吹先生は、稲生さんのその真面目な所も見込んで……)
「ユタ、魔道師とこのまま遊びに行くのかと思ったよ」
「やだなぁ、さすがにそこまではしないよ〜」
「雨だからしょうがないな。ユウタ君、ちょっと着替えてくる」
「ああ、どうぞどうぞ」
 マリアは濡れた服を着替えに、家の奥へ向かった。
「別に遊びに行っても良かったのに」
(んんっ!?)
 威吹の意外な言葉にカンジ、思わず包丁で指を切るところだった。
「またまたぁ……。本当に僕がそんなことしたら、僕の意思であるにも関わらず、マリアさんが僕を拉致したことにして、全面対決するつもりだったんでしょう?」
「はははっ、ユタにはかなわないなぁ……」
「キミと何年付き合ってると思ってるんだ。その手には乗らないよ」
「ごめんごめん」
「とにかく、僕はマリアさんとは好きで付き合いたいと思ってるんだ。揉め事無しで応援してくれよ」
「分かった分かった。だけど、もしやっぱりあの魔道師が危険と判断した時には、それなりの警戒行動を取らせてもらうよ?」
「大丈夫だと思うけどなぁ……」
(恋は盲目って本当だな。やっぱりユタは分かっていない。……いや、それは昔のオレも同じか)
 威吹は封印前、かつてベタ惚れしていた巫女の顔を思い出した。

 外の雨足は強くなっていた。

 今夜一晩中は降り続けるという。

 ダイニングルームに、香ばしい匂いが立ち込め始めた。

 今日の夕食はカレーであるようだ。

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 そういやここ最近、カレー食ってないなぁ……。
 芙蓉茶寮で食って来るかぁ……( `ー´)ノ
 何か大石寺の“なかみせ”、平日は豚汁定食くらいしか出てないし……。美味いんだけど……orz
コメント (5)
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