報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“ユタと愉快な仲間たち” 「大団円」

2014-04-01 15:29:57 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
 それから数日間、ユタ達はマリアの屋敷に滞在した。

「人んち、随分荒らしてくれたわねぇ……」
「お前らのせいだろ!」
 あちこち屋敷内からは、修繕作業に勤しむ人形達の槌音が聞こえて来た。
 イリーナのボヤきに、威吹は真っ向から反論した。
 ユタとマリアは街に行って、色々と歩き回っていたようだ。
「ユタを魔道師にするのは反対だ。これだけは断じて譲れん」
「それだって、稲生君が決めることでしょう?それに私は私利私欲の為に言ってるわけじゃないの。あのままでは霊力が暴走するのは目に見えてる。その対策法として、魔道師になることを勧めているだけよ。少なくとも魔道師になって霊力を自由に操れるようになれば、暴走も抑えられるわ」
「そう言えば、ユタが誰かと似ていると言ったな?誰だ?」
「あなたは生まれてる……ね!」
 イリーナは威吹の顔を覗き込んだ。
「何だ?」
「南光坊天海僧正って、知ってる?」
「? 名前からして、坊主のようだが……」
「そう。物凄い霊力を持っていた高僧として、当時から恐れられていたね」
「では、ユタはその高僧の生まれ変わりとでもいうのか。まあ、高僧の生まれ変わりというのなら分からなくもないが……。ユタだって今、仏法をやっている。それで抑えられるのではないか?」
「ダメね。天海僧正と今の稲生君とでは、全く修行法が違うわ」
「魔道師にさせるくらいなら、出家させる方を選ぶな」
「だから、それを稲生君に選ばせましょう。私なら魔道師になる方を選んでもらいたいけど……」
「お前に何か得でもあるのか?」
 するとイリーナは笑みを浮かべた。
「私利私欲ではないけど、少しね。仲間は多い方がいいし、稲生君も永遠の時を生きられるから、マリアも寂しくなくなるでしょう。あっ、あなたもじゃない!?」
「個人的な感情としてはそうかもしれないが、『人間ではない者』を“獲物”にするわけにはいかんのだ。やはり承服しかねる」

「心さえも♪あなたから奪うの♪此処で♪扉の向こうの世界へ♪誘ってあげるわ♪」
 屋敷の中に入ると、ピアノに合わせて歌うミク人形の姿があった。
「少し休憩しましょう。あのコ達戻って来るの、夕方になるでしょう。最後のバス、夕方まで出ないから」
「ユタをこの屋敷に誘い込んだのは、ユタの霊力を探る為だけか?」
 威吹は左腰に差した刀を外すと、椅子の脇に立てかけた。
「あなたにも聞きたいことがあるの」
 イリーナは息をついてから言った。
「ユタとの関係か?」
「そうじゃなくて、あなたが封印される前の話」
「?」
「辛い話で申し訳ないけど、あなたが封印された時の状況を教えてほしいの」
「そんなこと聞いてどうする?」
「もしかしたら、真相に近づけるかもしれない。そしてそれは、あなたのプライドを回復させることになるかもしれないよ?」
「なに?どういうことだ?」
「概要を言えば、あなたは“獲物”の盟約を交わした巫女さんに裏切られて封印された。そうだよね?」
「ああ」
 威吹は憮然と答えた。
「それだけだと、あなたの『女性を見る目が無かった』ってことになってて、今もそのレッテルを貼られているわけだけど、私の記憶だと、それは間違いかもしれない」
「お前の記憶?間違い?」
 威吹は金色の瞳を見開いた。
 イリーナは魔法の杖を出すと、その尻で床をドンドンと叩いた。
 そこからピンク色の煙が発生して、イリーナを包む。
 その煙が無くなった時、イリーナは別の人物の姿になっていた。
「ああっ!?」
 威吹は驚愕のあまり、椅子から落ちそうになった。
 そこにいたのは巫女装束を着た、さくらに他ならなかったからだ。
「魔道師は妖怪よりも更に変化の術が簡単にできるからね。先日の『死んだフリ』も、まあ似たようなものね。でも、問題はそれだけじゃないの」
 イリーナは元の姿に戻った。
「匂いまで一緒だった……」
 威吹は半分脱力した様子で椅子に座り直した。
「そこが妖怪が化けるのとは大きな違いね。つまり……」
 イリーナは大きくを息を吸い込んだ。
「あなたを封印したさくらさんは魔道師が化けていた偽者だったかもしれない」
「お前か!?」
「私じゃない。そこを話してあげるから、あなたも話してくれない?」

(イリーナには当時、宿敵と言える別の魔道師がいた……。その魔道師はイリーナとの喧嘩に敗れそうになり、起死回生を狙うため、この国へ落ち延びて来た……)
 威吹はあてがわれた客室のベッドに横たわって、イリーナの話を聞いていた。
「威吹、風呂空いたよ?」
「……ああ」
 威吹はユタに言われて起き上がった。
 何だか、随分と体が重い感じだった。
「マリアと随分お楽しみだったようだな?」
「実年齢的に僕より年上なんだけど、まるで年下みたいだよ」
「まあ、ユタより体が小さいし、あまり世法も知らぬと見える。無理からぬことだろう」
「そういう威吹はどうしたの?」
「ん?」
「最近、口数が少ないよ?」
「ああ。いや……。ボクも疲れる時はあるからね」
「ああ、そうか。まあ、明日には帰るからさ。それまでの辛抱だよ」
「分かってる」

[滞在最終日18:55.JR信濃大町駅 ユタ、威吹、マリア、イリーナ]

〔「1番線に停車中の電車は19時ちょうど発、普通列車の松本行きです。終点松本まで、各駅に止まります。発車までご乗車になり、お待ちください」〕
「また来てちょうだいね。その時はいい返事を待ってるから」
 イリーナはにこやかに言った。
「そうですね。でも、イリーナさん達も来てくださいよ」
「そうね」
 ホームには3両編成の電車が停車していた。
 威吹はさっさと電車に乗り込んだ。
「これ、どうやって席を確保しろと……?」
 ロングシートしか無い車内を見て、威吹は首を傾げた。
「前に東京駅で渡した、ミニ水晶玉があるでしょう?しばらくの間は、あれがあなたのオーバーフローした霊力を吸収してくれるはず」
「はい」
 電車から戻って来た威吹が、ふと気づいたように言った。
「なあ。もしかして、マリアがこの国の信州に留まり続ける理由というのは……」
「ご想像にお任せするわ」
(図星か……)
 威吹は軽く舌打ちをした。

 発車の時刻が迫る。
〔「まもなく1番線から19時ちょうど発、普通列車の松本行き、発車致します。ご利用のお客様はお急ぎください。終点松本で、新宿行きの特急に接続する最終列車です。お乗り遅れの無いようにご注意ください」〕

 ユタ達は車中の人となって、ドアの前に立った。
 威吹は彼女らに背を向ける移置の座席に座っている。
「それでは……」
「また会いしましょう。マリアさん」
 ユタとマリアは握手を交わした。

〔「ドアが閉まります。ご注意ください」〕

 ピイーッ!ピッ!(車掌の笛の音)
 プシュー、ガラガラ……バン。(ドアが閉まる音)

「何だったんだ、今回は……」
 電車が走り出し、ポイントを通過すると闇の中をグングン速度を上げて行く。
 威吹は座席に深く座り、窓に頭をもたれかけ、節電の為と称して照明が歯抜け状態になっている天井を見上げた。

〔「本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。19時ちょうど発、普通列車の松本行きです。これから先、南大町、信濃常盤、安曇沓掛、信濃松川の順に、終点松本までの各駅に止まります。……終点、松本には19時52分の到着です。……終点松本で、最終の新宿行き特急“スーパーあずさ”36号に接続しております。……次は南大町、南大町です」〕

「疲れたかい、威吹?」
「ああ……色んな意味で……」
「何かね、イリーナさんが乗り換え先の特急のグリーン車のキップくれたから、ゆったり帰れるよ?ちょっとこの211系の座席、固いけど……」
「あー、そうかい。今から買収のつもりか?」
「え?……あっ、そういえば乗り換え先の特急も20時ちょうど。つまり、8時ちょうどの“あずさ”だ」
「?」
 ユタの言っている意味が分からない威吹は訝し気な顔をした。
「まあとにかく、ボクのことは心配しなくていいから」
「そう?」
「ユタが幸せな顔をしてくれていればそれでいいよ」
「やっと仏法の功徳出て来たかなぁ……」
 ユタは笑みを隠しきれなかった。
(いきなり真相に近づき過ぎて、何が何だか……)
 それとは対照的に、動揺を何とか隠している威吹。
「マリアさん、また会いたいな」
「ああ、そうだな」

 電車は闇に包まれた鉄路の上を南に進む。
                                   終
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小説の途中ですが、ここで臨時ニュースをお送りします。

2014-04-01 15:15:53 | 日記
 ◇虚構新聞ニュース◇

 今日午後1時頃、当ブログ作者『雲羽百三』氏(HN、ユタ)は宗教法人創価学会女子部所属の女性との結婚を正式に発表した。

 これに伴い、本日より日蓮正宗法華講を脱講、創価学会男子部へ移籍するもよう。

 尚、創価学会では既婚の男性会員は年齢に関わらず、壮年部へ移籍することになってはいるが、実質的には顕正会同様、男子部に留まることが多いという。

 相手の女子会員については婦人部へ移籍する見通し。

 電源入籍について雲羽氏は、

「顕正会、宗門でも孤独死の不安は拭えませんでした。創価学会は『仕事と嫁には困らない』と聞いてはいましたが、全くその通りでした。正に、創価の功徳です」

 と、語っている。

 尚、一連の動きについて、長野県在住の創価学会員、沖浦克治氏の背後があるとの噂もあるが、

「んっ?さんや厳虎さんとの法論が忙しいので」

 という理由でノーコメントを貫いている。
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