日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

暴走プリウス事件の結末

2010-03-16 13:37:20 | Weblog
昨日(3月15日)Toyota Motor Sales (TMS), U.S.A., Inc.がサンディエゴで起きたいわゆる暴走プリウス事件の予備調査結果を報告した。「Toyota Offers Preliminary Findings From Technical Field Examination of Alleged 'Runaway Prius' in San Diego」である。8項目にまとめられているが、トヨタ技術者たちの予備調査結果が暴走プリウスのドライバーSikes氏の一連の説明とまったく相容れないということを強調した形になっている。興味のある方はこの記事を見ていただくこととして、私がとくに注目したのは次の強調部分である。

・There were no diagnostic trouble codes found in the power management computer, nor was the dashboard malfunction indicator light activated. The hybrid self-diagnostic system did show evidence of numerous, rapidly repeated on-and- off applications of both the accelerator and the brake pedals.

abcNEWSの「Toyota Says 'Runaway' Prius Driver May Have Had His Foot on the Gas」によると

a reading of electronic data from Sikes' car showed that he had applied the brakes and the accelerator alternately at least 250 times

と解釈が加えられている。すなわち少なくとも250回、ブレーキをアクセルを交互に踏んでいるというのである。ブレーキをどの程度踏んだのかは電子データからは分からないが、前輪のブレーキパッドがほとんど燃え切って金属部分しか残っていないところから、ブレーキを踏む時に余り力を加えていなかったと専門家は推測している。もしブレーキを力一杯に踏み込んでいたら、このプリウスに備えられていたブレーキ・オーバーライド・システムが作用して車は間違い無く減速したと考えられるからである。Sikes氏は車を停めるよりも動かし続けるのに一生懸命だったのでは、とトヨタの関係者が言い残しているぐらいなのである。さらにはこの記事はこう続く。

Michels said the company was not calling Sikes a liar. "We are not calling him anything," said Michels.

Michelsというのはトヨタのスポークスマンである。トヨタの調査結果はNHTSAの調査結果ともまったく一致しているとのことであるから、これで暴走プリウス事件の結末はついたと言ってよかろう。

トヨタは「unintended acceleration」の二つの原因は突き止められたと言っている。戻りにくい(sticky)アクセルペダルとフロアマットが引っかかることである。それに加えてトヨタのスポークスマンは「誰も
言いたがらないことではあるが・・・」と断りながら、私が昨日取り上げたようにドライバーに原因のありうることを述べている。今回の「暴走プリウス」に関する限りこれで幕引きである。

There are also human factors," said Michels. "NHTSA will tell you that the vast majority of sudden unintended acceleration incidents are due to human factors.

これからはおまけである。トヨタの予備調査結果には出てこないが、最終報告にどのように出てくるか私が一つ関心を持つていることがある。Sikes氏と911番との交信記録を聞いて奇異に感じたことがあったのでサンディエゴで暴走プリウスの怪で次のように書いたが、注目していただきたいのはその最後の強調部分である。

ギアはニュートラルなのかどうか、またニュートラルに入れようとしたかと聞いてもなかなか応答がない。指令者の声ばかりがよく聞こえるが、ドライバーがほとんどまともに答えないのである。指令者の「Hello」「Sir」「Jim」と言葉をかえて呼びかけるが応答しない。車の窓が開いているのだろうか、騒音がかなり大きくて、私の耳には暴走車がほかの車を追い越すのではなくて追い越されるようにも聞こえてくる

時速90マイル(約145キロ)を越す速さでプリウスは走っているのだから、それをビュンビュン追い越す車があるとは思えない。ところが追い抜く車が結構多い。私の受けた感じでは追い抜く車はさらに2、30キロほど速いのである。いかにカリフォルニアの高速道路といえども、時速100マイルを超えて走っている車はほとんどいないのではなかろうか。私の経験でいえば、アメリカ人は日本人以上に速度制限をよく守っている。となるとSikes氏のプリウスは90マイルよりもかなり遅い速度で走っていることになる。これだと話がおかしくなるなと思いながら、私の感じたままを書き記したのである。

ところがなんとSikes氏自身がこんなことをいっているとの記事を見つけたのである。

He says people were passing him "left and right" while going 90+ MPH, and he was afraid he'd get rear-ended if he turned the car off and suddenly stopped.

暴走のあと、何故991番の指示に従って車を停めようとしなかったのかと聞かれて、Sikes氏は上のように答えているのである。時速90マイル以上で走っている自分の車を、左に右にほかの車が追い抜いていくというのである。私の聞いた騒音は暴走プリウスが追い抜かれるときの音だったのである。私の感が当たっていた。しかしこれでは常識的にはおかしいとこの記事のライターも次のように続けている。

First of all, I've been on some SoCal interstates and while people drive pretty crazy, it's nothing compared to the NASCAR track that is I-85 in Atlanta and even those people don't pass someone "left and right" who is going over 90 miles per hour.

まったくごもっともである。トヨタの技術者はSikes氏がI-80を走らせたようにプリウスを走られたというから、当然この矛盾に気付いたことであろう。911番の担当者も同じように感じていたのではなかろうか。

野次馬根性が高じてつい「暴走プリウス」に多くの時間を割いてしまった。これで打ち止めとする。こんなことをしていたらいくら時間があっても足りない。最後に、「corvette sikes」のGoogle検索で、約6万件のほとんどが英語の記事のトップに私のブログが出てくるのには驚いた。もっとも日本語と分かって敬遠されただろうが、熱心さが認められた結果と思うことにしよう。