日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

サンディエゴで暴走プリウスの怪

2010-03-12 21:06:04 | Weblog
米カリフォルニア州サンディエゴの高速道で3月8日に発生した「暴走」の状況をasahi.comは次のように伝えた(抜粋)。

米でプリウス「暴走」 販売店が回収後回し
2010 年3月10日12時8分

 トヨタや米メディアの報道などによると、2008年モデルのプリウスを運転していた男性(61)は8日午後、高速道でアクセルペダルを踏み込んだ際にペダルが戻らなくなった。ブレーキは利かず、エンジンを切ることもできずに時速90マイル(約145キロ)超で走り続けた。

 通報で駆けつけたパトカーがプリウスに並走し、警察官がパーキングブレーキをかけることなどを指示。時速50マイル(約80キロ)ほどまで減速したところでエンジンを切ることができ、パトカーがプリウスの前に出てようやく停止したという。

この記事を読んで私は不謹慎にもこんなことなら曲芸運転の達人ならやれそうだし、この時期に人目を引くにはもってこいだろうな、とふと思ったのである。もう少し状況を調べてみようとしたところ、なんと「10NEWS.com」のSan Diego Newsにこの暴走車のドライバーと緊急電話911番の通信指令者との20分を超える交信記録が公開されているのである。それに耳を傾けてみた。

いわゆる「unintended acceleration」の状態に陥ったものだからドライバーがまず緊急電話をかけた。電話を受けた女性の通信指令者が「どこにいるのか」と尋ねている。「ルート8、東行き」の返事が戻ってくる。通信指令者は冷静に車の種類、トラブルの状況などを聞いている。プリウスでアクセルペダルが元に戻らないし引き戻そうとしても動かないなどと答えている。名前を聞いてJimと戻ってきたが電話番号にはすぐに答えてこない。同乗者はいないし、アクセルペダルにフロアマットが引っかかっていないことも分かった。これだけのやりとりに、実は時間がかなりかかっている。返事がなかなか戻ってこないのである。ギアはニュートラルなのかどうか、またニュートラルに入れようとしたかと聞いてもなかなか応答がない。指令者の声ばかりがよく聞こえるが、ドライバーがほとんどまともに答えないのである。指令者の「Hello」「Sir」「Jim」と言葉をかえて呼びかけるが応答しない。車の窓が開いているのだろうか、騒音がかなり大きくて、私の耳には暴走車がほかの車を追い越すのではなくて追い越されるようにも聞こえてくる。

通信指令者がたえず呼びかけているがドライバーはほとんど答えない。自分から電話をかけてきたのにどうしたことなんだろう。パニックに陥っているのだろうか。でも自分から電話したではないか。公聴会証言で話題になった女性の車が暴走した時に、これが最後かと時速100マイルの車から携帯で夫を呼び出して、その後夫が現場に駆けつけるまでずーっと話し合っていたとの証言との落差が大きすぎる。ハイウエイに設置された非常用呼び出し電話ボックスの番号だろうか406と言った以外にはラストネームの問いかけにも答えなかった。やがてパトカーがこの男性の車に近づいたのだろうかサイレンの音が断続的に聞こえた頃、速度が90マイルを超えていると反応しただけ。要するにこの20分余りでドライバーの喋ったことは全部合わせても1分を超えないのではないか、と感じたぐらいである。最大でも3分を超えることはなかろう。

パトカーからスピーカーでイグニッションを切るようにと言っているのが聞こえてくる。後で分かったことであるが、警官がブレーキペダルをフロアまで踏み込み、同時に緊急ブレーキをかけるように指示したのである。ヘリコプターの音も入っているようである。やがて車が停まったのであろう、音がすーっと消えたかと思うとドライバーのハーハーという大きな息づかいとしゃくり上げている音が聞こえてきた。パトカーの警官だろう「You are all right?」と問いかけたのに「ヒュー」という声にならない声で答えていた。

この交信記録から専門家は一連の状況をこまかく再現できるのではないかと思うが、素人の私には疑問が積み重なるだけであった。とくにドライバーがいかに慌てふためいているというか、自分から911番に緊急電話をかけたくせに通信指令者の質問にほとんど答えず、車の窓を開けてかまわりの騒音を実況中継していただけとはどうも解せない。そう、私には演出の可能性もあるのではないかとの疑いが頭をもたげてきたのである。そうこうしているうちにSan Diego Newsの続報が「Runaway Prius Driver Faces Questions As Probe Begins」と次のように伝えてきた。

Sikes made the TV network rounds following his ordeal with his runaway Prius on Monday. In the meantime, the California Highway Patrol said they would leave the credibility of his story to federal investigators.

ここには交信記録では定かでなかったドライバーのラストネームが記されている。その上、最後の記事はSikes氏の財政状況なども詳しく報じている一方、氏がトヨタを訴えもしないし金銭的補償を求めないとの言葉も伝えている。語るに落ちたということだろうか。私には「暴走プリウス」がこの男性の身を張った演出のように思えだしたのである。さて、どのように結末がつくだろうか。