Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

忘れられた人々 - パキスタン洪水避難民たち

2010-12-15 22:08:36 | アジア
先週、撮影の仕事でパキスタンのカラチに数日間滞在して来た。ムンバイと似たこの港町を訪れたのは5ヶ月ぶりだ。

仕事の合間に町の郊外にある避難民キャンプへいってみた。今年8月にパキスタンを襲った大洪水で家を失った人たちのための避難所だ。

洪水からすでに4ヶ月以上経つのに、まだキャンプに人が住んでいると聞いたときはさすがに驚いたが、そこには250以上の家族たちがテントや学校の校舎で身を寄せ合って暮らしていた。

故郷の田畑はまだ腰まで浸かる程の水中下にあり、とても帰れる状態ではないと言う。土地なくしては農夫の彼らが生きていく術はない。カラチで細々と日雇い仕事をしながら、故郷の田畑から水が引くのを待っているのだ。

キャンプには、以前は水や食料、毛布などの救援物資がNGOや救援組織によって届けられていたが、一月程前からそれがとまってしまった。水の配給車もここ3日ほど来ていないという。

「俺たちはもう忘れられたようだ。。。」バシールという名の男がこう漏らした。

ほとんど所持品など持たない彼らだが、訪問者をもてなす心は忘れていないようで、テントを訪れるたびにチャイ(ミルクティー)を飲め、と勧められる。チャイは好物だが、そんなにがばがばと飲めるものでもない。さすがに4軒目以降は遠慮せざるを得なくなった。

こういう避難民キャンプを訪れるときにはいつも感じるのが、人々の「期待心」だ。僕のような外国人が訪れることによって、彼らは何かいいことがあるに違いない、と過剰な期待をもつことが多い。

NGOの職員や医者などのように、直接的に彼らを援助するわけではないジャーナリストとしては、記事や写真を発表する以外には何も約束することなどできないし、さらに写真が発表されたからといって、より多くの援助物資が届くという保証があるわけでもない。

だから、被写体となる人たちからのそんな「期待心」を感じる度に僕は少々とまどうことになるし、人々にきちんとそこのところを説明する必要のある場合もでてくる。

このキャンプの住人たちとも、何の約束もできませんよと話しはしてきたが、やはり心情としては、発表した写真が「忘れられた」彼らの生活改善に繋がることになれば、と願わずにはいられない。

(もっと写真をみる:http://www.kunitakahashi.com/blog/2010/12/15/forgotten-people-idps-of-pakistan-floods/ )

最新の画像もっと見る

コメントを投稿