Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

停止する思考

2007-06-26 02:13:36 | 中東
暑い。。。あまりにも暑い。

日中の気温は50度に近くなり、熱せられた空気は、まるでヘア・ドライヤーからの熱風のようになって全身に吹付けてくる。湿度が低いのが唯一の救いだが、それでも10キロほどの重い防弾ベストとヘルメットを身に着けていると、ものの数分でシャツは汗でぐしゃぐしゃになってしまう。

「これでは兵士たちが戦争に対して深く考えることなど無理だろうな。。。」
昨日のパトロール中、ハムビー(軍用ジープ)の車内でぐったりしながら仮眠をとる兵士たちの姿を眺めながら、僕はふとそんなことを考えていた。

彼らはこの過酷な気候のなか毎日6時間から8時間パトロールにでかけるが、作戦次第では10時間以上を外で過ごすことも珍しくはない。

倉庫として使われていた平屋の建物に50人ほどの兵士たちがひしめきあって生活しているが、それぞれの小隊が別なスケジュールで行動するため夜昼なくいつもざわついており完全に消灯することもないので、睡眠時間も十分にはとれない状態だ。

ニュースも食堂に設置されたテレビの決められた番組から放映されるものしか見ることができないし、新聞も軍と関わりのある「スターズ・アンド・ストライプス」だけだ。インターネットで外の世界の情報を調べようと思っても、気が遠くなるほどに接続の遅いネットにしかアクセスがないうえに、個人の使用は30分までと限られているから、家族や友人に2,3のメールを書くだけで時間切れになってしまう。

こういう生活環境は、この戦争の意味について深く考えるという兵士たちの思考を止めてしまうんだろうなあ、とつくづく感じている。

ジャーナリストとして従軍している僕でさえ、こうして兵士たちと同じ生活を続けていると、時間があれば眠りたい、というような状態になってきて、こうやって考えながらブログを書き綴ることさえ一苦労になってくる。(まあ僕はもともと筆不精なんだけど。。。)

長時間労働で生活の大部分を奪われ、住処には寝るだけに帰るようなもの。毎日の生活に追われ、国の政治に対して目を向け、深く考える余裕などなくなってしまう。

あれ、これって日本の会社員たちの生活にも似てないか?たしかに彼らも「企業戦士」などとよばれたこともあったよなあ。

兵士にしても会社員にしても、彼らをこういう「思考できない」環境に縛っておくことは「支配する側」にとっては都合がいいのだろう。

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2 コメント

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とても興味深い情報でした (**kom)
2007-06-26 18:51:25
そうですよね。
現場では考える余裕などない。
そんなことは確かにわかりきったことだけれども、邦さんのブログをみていて、こういう想像というか現実的なこととして想像できていなかった、と思い思わずため息がでました。

頭ではわかっていて、想像もある程度できるけれど、彼らの日々の様子を知るということは大切なことだと思ったなあ。スポーツでもそうだけど、言うことをきかせたいなら考えるチカラを奪えばいい。ひとつの洗脳技術ですね。

 兵士というのは、洗脳された空間だけに生きれるのかもしれない。
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Unknown (硝子)
2007-06-26 20:39:50
連日のニュースで心配しておりましたが、まずはご無事でよかったです。過酷な状況のもとでの取材お疲れさまです。マイク氏のコメントも読ませていただきました。思考をとりあげられた兵士たちの状況を理解したうえで、再度バーコードの刺青をいれたマイク氏の
気持ちを考えると、本当に切なくなってしまいます。
今のところ戦場とは「対岸の火事」(というよりもっと遠くかも)としかとらえていない、私達が思考を
止めてしまったら、戦争への抑止力が働かなくなってしまいます。日本にいる「企業戦士」が、思考をとりあげられた揚句に戦場におもむく本当の「戦士」になってしまったら困りますね。過酷で危険な状況はまだまだ続くと思います。どうかご無事と取材の成功をお祈りしております。
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