Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

聖地を巡る争い

2010-10-02 02:50:13 | アジア
60年という長い間、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒とのあいだでその法的所有権を争われていたウッタル・プラデーッシュ、アヨディアの聖地。

両者から待ち望まれていたこの所有権に対する判決が、昨日高等裁判所によって下された。

1992年、歴史上もともとヒンドゥー寺院があったと主張するヒンドゥー至上主義者たちが、当地にあったイスラムのバブリ・モスクを破壊したのを発端に、インド各地で抗争が勃発。数千人の死者をだした。そんな経緯もあったため、今回も判決後の抗争再燃が懸念されており、アヨディアをはじめ、デリーやムンバイなどインド全域が警戒体勢に入っていた。

さて、肝心の判決は、聖地の3分の2をヒンドゥーが、残りをムスリムが管轄すべし、というもの。

両サイドの弁護団や至上主義者たちは、この判決は「中途半端」だと不満を表し、最高裁への控訴の意向を示しているが、大方の国民は「まあ妥当な判断」と考えているようだ。

しかし判決がでるまでにはすでに長い年月が経っているし、実際のところ多くの国民、特に若者たちにとってはそれほど大きな関心ごとでもない、というのが本音ではないだろうか。

「騒いでいるのは政治家たちとメディアばかりだ」

現地で知り合ったカメラマンの一人がこんなことを言っていたが、なかなか的をついていた見方だと思う。

やはり国民の多くは大して気にかけてはいなかったか、それともこの「中途半端」な判決が功を奏したか、はたまたインド国民たちの社会的成熟度が高まったてきたのか、いずれにせよ判決後に憂慮されていた暴動もいまのところおこる様子もなく、僕は少々肩すかしを食らった感じでこの聖地を後にしたのだった。

(写真:判決のニュースをみるヒンドゥー教のサドゥーたち)
(もっと写真をみる:http://www.kunitakahashi.com/blog/2010/10/01/disputed-holy-site/ )
(このトピックの記事とスライドショーがニューヨークタイムスに掲載されました。http://www.nytimes.com/2010/10/01/world/asia/01india.html?_r=1 )

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