Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

兵士の自殺

2007-09-03 23:45:16 | 中東
先週末、ちょうど僕が部隊についたその数時間前に、部隊から一人の自殺者がでた。

僕らが取材している小隊の兵士ではなかったが、2ヶ月前に来たときに同じ兵舎で寝泊りしていたので、彼とは顔見知りだったし、何度か話をする機会はあった。

小柄で痩せており、典型的なマッチョ兵士のタイプではなかったが、それでも人のいい奴だなと思ったのを覚えている。アメリカの家族から送られてきたお菓子などを、「食べるかい?」と気前よく分けてくれたこともあった。どんなことを話したのかあまり覚えていないのだが、彼がラスベガスの出身だったということは、坊主頭の痩せた顔とともに、はっきりと僕の記憶に留まっていた。

彼と同じ小隊の兵士の話では、彼は1ヶ月半ほど前に一度、ピストルを顎につきつけて自殺未遂を図っていたという。その後いったん小隊から離されカウンセリングをうけていたが、カウンセラーの判断でまた小隊にもどされた。その矢先の自殺だった。

仲間の兵士たちはみな、どうしてカウンセラーがまた彼を小隊にもどしたのか、首を傾げていた。

彼はいつも孤独なタイプで、部隊内に友人もほとんどいなかったという。
「あまり歩兵部隊には向いていなかったと思う。同じ陸軍の仕事でも、事務仕事を扱う部署などもあるし、そういう場所の方が彼にはよかったのでは。。。」
仲間の一人はそう語った。

彼がどうしてそこまで追い詰められてしまったのか、僕には知る由もない。しかし、陸軍の上司が個人の性格をもっとよく見極めて、適材適所の任務を与えていれば、彼も自殺などせずにすんだかもしれない。

戦争は、爆撃や銃撃といった戦いによってのみ犠牲者を出すわけではない。

ワシントンポスト紙によれば、イラクを含めた戦場で、彼のように自ら命を絶っていった米兵の数は昨年99人。陸軍が記録をつけ始めたここ26年間で史上最高の自殺率になったという。