Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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戦争の甘い汁

2005-11-23 15:13:04 | 中東
昨日ドバイからの直行便でイラク南部バスラに降り立った。

2003年の米軍侵攻以来、これでイラクを訪れるのは4度目だが、バスラははじめてだ。

砂漠のなかにぽつりとある飛行場施設。イギリス軍の管轄するこの空港敷地内にある宿泊施設に滞在することになった。ここ1ヶ月ほどバスラ近辺の治安が急激に悪化し、人質事件が多発しているために、僕らのような外国人が市内に滞在できなくなったからだ。

この空港敷地内の宿泊施設はB&Bとよばれているが、これは一般に使われるベッド・アンド・ブレックファストの略ではなくて、バハー・アンド・バーダウィルというこの施設を経営する会社の頭文字からとったようだ。この会社は建築工事や警備を請け負う会社で、クウェートやドバイでも同様のビジネスを展開している。ハリバートンやベクテル社と同様、ここイラクでは戦争のおかげで巨額の利益をあげている会社のひとつだ。

こんな会社の経営する施設に泊まるのは本意ではないが、まだまだ人質になって首を切られる訳にはいかないので仕方がない。

この宿泊施設にきて、たまげたことがひとつあった。

今までの従軍経験から、だいたいどんなところに泊まるのかは予想できた。こういう施設ではだいたい輸送コンテナのような箱型のプレハブのなかに2部屋つくられているが、ここのコンテナ部屋は兵士用ではなく、警備関係や各種エンジニアなどの一般人のコントラクター用なので設備が整っている。兵士用であればトイレやシャワーは別棟だが、ここではそれぞれの部屋に設置されているし、おまけにインターネットの回線までひかれてあるので便利この上ない。

しかし。。。だ。この観光地でもなんでもない砂漠のなかの防壁に囲まれたこのコンテナ部屋が、一泊なんと150ドルもするのだ!!

ナイジェリアやドバイで泊まっていた街中の快適なホテルでさえ、そんな値段はとられない。(先週のドバイではホテル代急騰のために数日間やむなく150ドル払ったが、その後少し安い宿をみつけた)アメリカ国内だって、ホテル代で150ドル以上払うことなど滅多にない。いくら設備が整っているとしても、ここならまともに考えても一泊50ドル程度で十分採算はとれるはずだ。

こんな所に宿泊するのはみなコントラクター達で、会社の経費だから宿泊費なんぞ気にかけない。そういう僕も状況は同じなのだが、今回の石油プロジェクトでは数カ国をまわっているのでいろんなことで出費がかさむ。新聞社からも経費は極力抑えろと釘を刺されているし、財政状態はかなり厳しい状態なのだ。ドライバーや通訳などの値段はあまり値切れないので、せめて宿泊費はなるべく安く押さえたいを思っている。だからこんなところでの一泊150ドルはかなりの痛手だ。

まあ僕の事情はおいておくとして、とにかくこの値段を聞いたときにはさすがに胸がむかむかした。

この戦争でイラクの市民や米兵たちが毎日のように命を落としているというその影で、何億ドルという巨額の甘い汁をむさぼるこういう企業が多数存在しているのだ。

一泊150ドルなど、まだ些細なことにすぎないのだろう。それでもはやいところ仕事を終わらせて、こんな施設からはとっととおさらばしたいものだ、と思う。