12月末の水曜日。
ドイツの冬。クリスマス・イブまであと数日。
もう誰もが仕事よりも、歳納めの気分だろう。
僕も昨日は夜中の二時まで今年最後の仕事の話をしていた。
日本の東北や北陸地方の冬の空を思い出すような曇空、寒気の中、
家族五人でかれこれ20年余り暮らすことになった僕の小さな村の、
水曜のマルクトに足を運ぶ。
ここはドイツの何処にでもあるような、少し退屈な都市部郊外の村だ。
それでも、日本から戻って来ると数日は、よく知った国を歩く旅人、
その国に多くの知り合いがいる異邦人のような気持ちになる。
僕は何年も親しんだ風景を見つめ直し、ポケットのカメラを取り出す。
いつも行く有機無農薬の農家の屋台。
ヨーロッパの北国の冬野菜を買えば、そのまま、無造作に次々に
大袋に投げ込んでくれる。日本のスーパーの行儀よく、一つ一つ
包装されていたキレイな野菜達とは大違い。
僕も今日の夕餉の支度に買い求めた色々な冬野菜を無造作に
袋の中にしまい込む。
この大きな赤いパプリカ、これは昔はドイツの
冬には無かったな、、、。
今日はどこを向いても、クリスマスの飾りが目に飛び込んで来る。
外国で勉強する三人の子供達もこの数日で全員、顔を揃えるだろう。
昨日、デンマークから一足早く戻って来た次男、妻と僕だけでは
もう食べることもない肉料理を、今晩は作ってやろうかと思う。
他の知り合いの屋台も覗き歩き、互いに年末の挨拶を交わす。
「良いクリスマスを!良い年を!」
買い物の後、村のパン屋の隅でコーヒを飲みながら暖をとる。
「来年からの仕事はどうしようか、、、。」
「自分もそろそろ、これまでの仕事の納め時だろう、、、。」
もうすぐ新しい年、新しい人生の時機が始まる。