アワノメイガがトウモロコシをわき目も振らず食べている
トウモロコシ畑。午前中のこと。ヒゲが茶色になり房が膨らんできた食べごろのものを物色し、これだなと狙いをつけた。夕方に見回るとまさにそのものが皮をむかれて実が食われていた。カラスの仕業だ。一瞬の隙にカラスに食われた。油断がならない。腹が立つのだがカラスの頭の良さにも感心する。食べごろのものを選ぶことができるのだから、敵ながらあっぱれなヤツなのである。実はカラスの被害はまだ当分大丈夫だろうと高をくくっていたのだが、まさに油断大敵。あわてて全体を寒冷紗で覆った。
さらに敵がいる。トウモロコシでカラス以上に注意しなければならないのが、大敵アワノメイガだ。この害虫は茎や実を食い荒らす。トウモロコシばかりは無農薬で育てるのはむずかしい。駆除しないと食べられる状態ではなくなる。このため雄穂が出てきたとき一回だけ殺虫剤を散布している。さらに駆除するには雌穂が出てきたときにもう一度散布すればいいのだが、わたしは“コワイ”ので農薬の散布は一回だけにしている。
徹底駆除していないから、中にはアワノメイガの被害に遭うものも出てくる。茎の一部が変色していれば、そこにアワノメイガが中にいるなとすぐわかる。ためしにそこを小さく縦に切ってみるとアワノメイガがいるはずである。もちろん茎ばかりではない。房にも侵入して食い荒らす。これがいちばん困る。被害は目で見てすぐわかる。こうなると手遅れだ。すべて食べられないうちに優先して収穫している。
その被害に遭ったトウモロコシ。皮をむくとアワノメイガが「せっかく食べているのに邪魔するな」なんて感じで、せっせと口を動かしている。食い荒らしている。その狼藉ぶりは見事というほかない。全体が食い荒らされていたらあきらめて捨てる。まだ食べられるところがあれば、見た目は悪いのだがこれはもったいないから食べる。
トウモロコシはきれいに粒がそろっているに越したことはない。そのほうが見た目にもいいし、食べるにも気分がいい。しかし、“生産”する立場からすれば、あまりにきれいだと、つい殺虫剤を思い出してしまう。「やられたな、この野郎」と、あちこち食い荒らされたトウモロコシを食べながら、ふと思う。こんな小さな生き物が食べているのだから、これは安全の証明なのだなと。ほどほどの被害なら、昨日の敵は今日の友か、と苦笑いしながら食べている。