サクラソウ科のカッコソウ。絶滅危惧種に会えました
沢のせせらぎときらめく新緑、赤紫色に咲くカッコソウ、山頂にはアカヤシオ、そして頂上からは360度のパノラマ。桐生市の北に位置する鳴神山はこんな山だった。ガイドブックにある通りたしかに980㍍の低山ながら素晴らしい。
4月26日の尾瀬・笠ケ岳の翌27日は上州・鳴神山を歩いた。鳴神山? 初めて聞く山だった。あわてて山岳ガイドを見ると「新・花の百名山」、山頂からの展望とアカヤシオ、絶滅危惧種のカッコソウ、そしてナルカミスミレ。なんかよさそうな山で、これを読んでしまうと少なからず期待感が膨らむ。ちょうど時期もぴったりだ。はたしてどうなるか。
コースはいろいろある。きょうも出発時間が遅くなったので、短いコースを歩く。10時40分に東側の「コツナギ橋」登山口から登り、頂上を経てやはり東側の「大滝登山口」に下山。そこから車道を歩いてコツナギ橋に戻るというコースだ。ラウンドコースである。歩行時間は3時間30分の予定だ。コツナギ橋からコツナギ沢沿いに歩き、頂上からは尾根を下る。
きょうは快晴。それだけに鍋足からのコースは沢沿いを登るのでせせらぎと新緑が気持ちいい。まもなく稜線に出ようかという手前にカッコソウの保護地があった。ロープで囲ってある。杉の林の斜面だ。こんなところに絶滅危惧種のカッコソウが咲いているとは思えないような場所だ。見渡しても花は咲いていない。
「咲いていないようだ。早かったかな」
あきらめたその時、仲間が叫んだ。
「斜面の上のほうに赤いのが見える」
私は目が悪いのでよくわからないのだが、速足でその場所へいくと、咲いていた。
「これがカッコソウの花か」
ネットで見たとおり鮮やかな赤紫色だ。このカッコソウはすぐにサクラソウの仲間だとわかる。絶滅危惧種のこの花が、杉の林の中で咲いているのがどうもミスマッチな感じがしてならなかった。絶滅危惧種といえばもっと環境がきびいしいところに生きているものとばかり思っていたせいか、なんの変哲もない杉の林の中で咲いているのをみると、保護活動している方には申し訳ないのだが、どうもありがたみがない。しかし、花の時期は毎年変わり、会いたくても会えないものだから、一発でこうして会えたのは幸運だった。
さすがに「新・花の百名山」だ。この鳴神山にはカッコソウとともに貴重な花がもう一つある。ナルカミスミレだ。花の色や形、それに葉の形を事前に頭に入れてきたが、とうとうどれがナルカミスミレかわからなかった。出会っているのに見逃してしまったのだろうか。
頂上近くは、これも期待したとおりアカヤシオの群生地だ。ふっくらとしたピンク色で、ここの花は大きく感じられる。このピンクの花と澄みきった青空がよく似合った。山頂付近のアカヤシオの最盛期は1週間前だったようだが、まだまだ十分に鑑賞に堪える。
なんといってもこの日の圧巻は頂上からの展望だ。目を奪われた。低山なのにこの眺望の素晴らしさといったらない。ぐるりと見渡すかぎり展望が広がる。真っ先に目がいくのは北に雪を冠った山々。きりりとしてとても美しい。男体山と日光連山だった。いやあ、これはよかった。そして皇海山と袈裟丸山も。
目を東に転じると、遠くにわが故郷の筑波山が双耳峰の姿を見せているではないか。これでさらに気をよくくした。
きょうのこの鳴神山。すべての期待に応えてくれた。幸運としか言いようがないのだが、自分が知らなくてすばらしい山々がいっぱいあるのをあらためて教えてくれた。
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