畑ではなく、わが猫額庭には日除けにブドウ棚をつくっている。春にやさしい色合いの葉が広がり、夏に実をつける。葉が棚いっぱいに茂り、陽光が葉を透かして、ブドウ棚の下はやわらかな光が満ちている。青いブドウの房を見上げていると自然の移ろいと恵みを実感して豊かな気分にさせてくれる。「今年も実をつけてくれたよな」。
感慨深くブドウ棚を見上げるにはもう一つの理由がある。ブドウは手間がかかる。その苦労が報われたという思いがあるからだ。たえず世話をしていかなければならないのだが、今年は手を抜いた。手を抜いただけその仕返しがある。手を抜くとどうなるか、これまでの長い経験からよくわかる。
今年は重要な作業が後手になった。今月もそうだ。「摘果粒」という作業を先延ばしにしてきた。すでに果粒が大きくなり、房全体がびっしり詰まった状態になっている。果粒を大きくするには、果粒の間隔をとってあげなければならない。房の状態を見て詰まっている果粒を取り除いていく。やっとその作業を終えた。写真は「摘果粒」前のブドウの姿である。
ここまででも大変なのだが、これからも気を抜けない。1つ1つに袋をかけ、さらに防鳥ネットで棚全体を覆う。そうして実りをやっと口に入れることができる。ブドウの栽培は大変だ、手間がかかるといいながらも、続けているのはほかでもない。冒頭で述べた気分を味わいたいからだ。