草若葉

シニアの俳句日記
 ~日々の俳句あり俳句談義あり、そして
折々の句会も

今日の俳句/ドイツ・オーストリア旅行 (其の三)・ロマンティック街道 /九分九厘

2008-10-22 | Weblog
10月8日、ヴュルツブルグを起点として南へロマンティック街道を走り、終点のヒュッセまで長時間走るのですが、この間古い城壁都市であるローテンブルグ(二泊)、ディンケルスビュール、ネルトリンゲンに立ち寄り、途中脇道にそれて田園の中にひっそりとあるヴィース教会にも寄りました。世界遺産を順次見ていったことになります。

ヴュルツブルグでは、18世紀に領主大司教が建てた豪華絢爛な世界遺産レジデンツを見学。ベルサイユ宮殿に劣らないものでした。絢爛な金細工装飾の鏡の間の話ですが、玉座の真後ろには仕掛けがあって、大司教の用足しのときに後ろから便器が出てくるようになっています。会議の最中に皆の前で堂々と用をする由。これを見れる人は大変に大司教の信任厚いということになり、希望者が絶えなかったとか。部屋の後ろ側は細い廊下になっていて使用人が世話をするバックヤードになっています。当時の偉い人の化粧は男でも七重の化粧をしていて、当然風呂に入ると後が大変なわけで、風呂嫌いとなるそうです。玉座の近くの柱には裏からつながった細い穴がいくつか穿いていて、ここから香の煙を常時出していたそうです、体臭を消すことも目的の一つですが、蚤を寄せ付けないようにするのが最大の目的とガイドは説明しておりました。なんと不便な宮殿だったのでしょう!

城壁都市ではローテンブルグがもっとも有名で、ドイツでも一に二を争う観光地です。これらの都市は11~12世紀にたてられたものが多く、街の真ん中に教会と市庁舎が建っています。カトリックとプロテスタントの抗争の歴史が繰り返されてきましたが、二つ教会が建っている都市は、二つの教派が並存しているところだそうです。

 回廊の城壁暗し蔦紅葉
 人形のからくり時計秋三時
 秋の灯やローテンブルグは石の街
 金融危機のありて早やクリスマス



 

写真上はローテンブルグを取り巻く城壁。高さ10mたらずの回廊式のもので、全周して5kmくらい距離です。下の写真は、早々にクリマス用品を売っている店があり写真を撮ったのですが、ガラスにローテンブルグの町の建物が写っています。気に入った写真の一枚です。

世界遺産ヴィース教会はその内部の絢爛さに圧倒されました。教会では珍しいロココ調の装飾がなされていて、18世紀に建てられた今も現役の巡礼教会です。

 巡礼の額ずく草原深き秋
 馬肥ゆる行脚で集う男女かな
 黄葉やイエスの傷の癒されし
 涙する奇跡の彫像曼珠沙華



草原に忽然と現われるヴィース教会



内部はロココ様式のヨーロッパ随一の装飾と言われています。祭壇の中央に「鞭打たれるキリスト」が祭られています。老いた農夫婦があがめていた像が或る日、奇跡の涙を流したということで、巡礼者が次第に増えて、ついにこのような立派な教会になりました。
 
                              以上
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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
写真も句も! (ゆらぎ)
2008-10-23 17:12:32
クリスマス用品の店の写真は、建物もはっきりと写りこんで、味わいがあります。カメラのほうも好調ですね。

馬肥ゆる行脚で集う男女かな
ースペイン・サンチャゴの巡礼もお遍路さんも、ドイツもみな歩いてゆきます。当たり前かもしれませんが、祈りにかける人の心の強さを思います。

涙する奇跡の彫像曼珠沙華
ー曼珠沙華との取り合わせが、ユニークです。

回廊の城壁暗し蔦紅葉
 古き時代の闘争の歴史を思い出させるようで、城壁と蔦紅葉の取り合わせが効いています。
 






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好きな句 (やまもも)
2008-10-23 17:35:25
金融危機のありて早やクリスマス
巡礼の額ずく草原深き秋
黄葉やイエスの傷の癒されし

今回は、ドイツという国へ、ぐんぐん深くはいりこまれたように感じました。プロテスタントであれカトリックであれ、信仰というものが人々の生活に深く組み込まれていて、街を国を形づくっていくように思いました。ローテンブルグのショーウィンドウの写真、素敵ですね。ガラスに映っている建物に、早くもクリスマスがきたようで、素っ気ない壁が彩り豊かに飾られています。

全世界で金融危機が取りざたされていますが、そのまっただなかの異国の旅、「クリスマス」という言葉に癒されるように思いました。
「巡礼」「イエス」の二句には、それぞれの句意にふさわしい季語が、ぴったりはまっていて、心ひかれました。ドイツといえば、黒い森と嵐のイメージをずっと持っていましたが、そうではない、たくさんの状景を見せていただき有難うございました。(主人にも読ませました。)

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すきな句 (龍峰)
2008-10-23 21:10:26
人形のからくり時計秋三時
秋の灯やローテンブルグは石の街

ローテンブルグは一度参りましたが、童話に出てくる中世の街と言う印象でした。時計塔も立派だったと思います。作者のどの句もローテンブルグの石畳や小綺麗な建物を前に感動が歌われているのがよく分かります。

巡礼の額ずく草原深き秋
洋の東西を問わず巡礼に人々は惹かれて行きます。周りは秋一色、その中を行く巡礼者の姿が目に浮かびます。
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ローテンブルグ (フェニックス)
2008-10-24 09:03:51
九厘様

今回も詳しい旅のご報告を楽しませていただきました。ロマンテイック・シュトラーセ沿いに世界遺産を訪ねられたようで、羨ましい旅だと思いました。ご報告の中のローテンブルグのお写真と俳句に、昔の旅を思い出させていただきました。

 ”人形のからくり時計秋三時”
 ”秋の灯やローテンブルグは石の街”

私が訪れたのは夏で、城壁の中の緑の木々と赤い屋根が印象的な町でしたが、黄葉と赤い屋根の秋の風景は一層旅情を深める風景だったと思います。石畳の広場でからくり時計を楽しんだことも懐かしい思い出です。帰ってから手にした東山魁夷の随筆「馬車よゆっくり走れ」にこの町が出て来て、旅の思い出を深めたことも思い出されます。

最後の二枚のお写真、ヴィース教会の外観と内部の落差にちょっと驚きました。内部は豪華でかつ繊細なロココ的装飾なのですね。ノイシュバン・シュタイン城の内部の装飾にもどこか似ているようにも思いましたが、こちらはバロック様式でしたか?記憶が定かでありません。ともかく、豪華で明るい装飾だったことだけは覚えていますが...。

宗教と芸術の結びつきを考えると、とても大きな問題になるようです。

次回のご報告も楽しみにしています。有難うございました。


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お礼 (九分九厘)
2008-10-24 16:47:08
ゆらぎ様 
 仕事を終えたら四国八十八か所を歩いてみようとも、その昔思っていたものの、今頃になってとてもとても無理だと悟っています。信心のなきせいでしょう。ローデンブルグの城壁は三分の一位の長さを歩いてみました。街の景色が変わって見えていくのに感心致しました。
曼珠沙華はあくまで現地では幻想の花でした。ドイツの古城の傍にこの花を咲かせてみると、人気が出てくるのではないかと勝手な想像をしました。コメントありがとうございます。
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お礼 (九分九厘)
2008-10-24 16:57:44
やまもも様
 コメントありがとうございます。中世のドイツの都市は人間たちが現世で生活を営む「小宇宙」、城壁を一歩出るとそこは自然界のすべてを含む大宇宙と理解されていて、ドイツ人には自然崇拝のアニミズムが今も色濃く残されているといいます。ある面、日本人と似通った所があるようです。宗教改革もドイツに起こったように主教についての敬虔な気持ちは強いように思われました。

ちょうど、ドイツに行った直後に金融危機が始まり、さして詳しい情報もなかったのですが、帰国して以来更なる余震に恐れをなしております。
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お礼 (九分九厘)
2008-10-24 19:49:06
龍峰 様
 こうして旅行記を書いていますと、皆さん既にあちらこちらに行っておられるのが分かります。日本の観光地は時間がたつと雰囲気ががらりと変わりますが、このローテンブルグは変わりようがないですね。古い都市空間を守る努力はドイツ人の方が一枚も二枚も上のようです。コメントありがとうございます。
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お礼 (九分九厘)
2008-10-24 20:05:11
フェニックス様
 ローテンブルグの時計人形を覚えておられますか? 街の市長が、敵の攻撃から街を守るために将軍に防衛をたのんだところ、ビールの大ジョッキを一気に飲んだら頼みを聞いてやると言われた話を、人形で演じたものです。
ガイドは3・5リットルとか言っておりましたから、ほぼ一升瓶二本の勘定です。大柄のドイツ人なら不可能ではなさそうです。

ヴィース教会の中の絢爛さには驚きました。あれではキリストも嬉し涙に毎日むせぶことでしょう。
いつも楽しいコメントを有難うございます。
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好きな句ほか、コメント (かつらたろう(桑本栄太郎))
2008-10-24 23:58:50
☆巡礼の額ずく草原深き秋
☆馬肥ゆる行脚で集う男女かな
☆黄葉やイエスの傷の癒されし
☆涙する奇跡の彫像漫珠沙華
「人はパンのみに生くるに非ず」の趣旨により、イエス・キリストを信ずる小生としまして、今回はこの4句を選ばせて頂きました。概してカトリックではステンドグラス、マリア像など荘厳な雰囲気の教会が多く、プロテスタントでは木の十字架のみのシンプルなものだけです。どちらが良い悪い、好き嫌いの問題ではありませんが、私であればこのような荘厳な教会に入ったら、涙が溢れ立ちすくんでしまう事でしよう。現代のように交通の便が良くなったとは言え、巡礼の旅が今、日本でも盛んなように信仰としての精神性を自己に求め、神様の深い愛情を知る為ですね。長い歴史と、日本国内と同様、季語が生きている所が素晴らしいと思いました。
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お礼 (九分九厘)
2008-10-25 09:59:26
たろう様
 クリスチャンのたろう様に御批評頂き、威儀を正してコメントを読ませていただきました。有難うございます。ルターの宗教改革以来両派の抗争は続いたドイツですが、北の方はプロテスタント、南の方はカトリックが多いと言われています。ハイデルベルグ訪問の後、ネッカー河の谷間の真珠と言われるシュロスヒルスホルンという所に泊まったのですが、本当に小さな町ですが、ここに両派の教会が二つ少し離れた建っていて、ちょうど夕方6時に同時に鐘を鳴らし始めました。二つの教会の鐘の音が美しく調和されていて、鳴り終わるまでじっと聞き惚れていました。あの鐘の音でその日の無事に終わったことに感謝するのですね。
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