南海トラフ巨大地震で津波被害が想定される13県72市の約半数が、避難に自動車が必要だと考えていることが3月7日、共同通信の調査で分かった。
高齢者や障害者を家族が乗せることなどを想定する。
ただ避難計画でルールを示しているのは72市の2割弱。
東日本大震災では渋滞で逃げ遅れた例もあり、国は車活用に関する地域の合意形成を呼び掛けてきたが、浸透していないのが実情だ。
調査は1~2月にかけ、南海トラフ地震対策の特別措置法で津波避難の「特別強化地域」に指定された139市町村に含まれる全ての市に実施。
「津波警報発令時、浸水地域内の全員が逃げるのに自動車を用いる避難も必要だと考えるか」という質問に対し「必要」と回答したのは高知県南国市など7市、「どちらかといえば必要」が31市。
ほとんどが「高齢者や障害者の避難」を理由に挙げた。
これに対し、宮崎県日向市など29市は「どちらかといえば不要」、静岡県伊豆市など5市は「不要」と回答。
理由を複数回答で尋ねたところ、32市が「渋滞の懸念」を挙げた。
「津波避難タワーなどで対処可能」としたのは15市だった。
内閣府などによると、東日本大震災では6割近くの人が自動車で避難。
渋滞に巻き込まれた例もあったが、素早く避難できて助かった人もいた。
国は車での避難は原則禁止としてきた考え方を軌道修正。
やむを得ない場合の車の活用方法について、各地で合意形成を図るよう求めた。
避難計画で自動車避難を容認する対象者や地域などのルールを明示しているのは14市。
「歩行が困難な高齢者、障害者は例外的に車両を利用」(鹿児島堡t布志市)といった例が多い。
容認しないと明記したのは5市。
13市は、容認するとしつつ具体的なルールを定めておらず、39市は自動車避難への明確な言及がないと回答した。
明記しない理由として「徒歩での避難を推奨しているため」としつつも「実際には車で逃げる人が多い」と懸念する市が多い。
東大大学院の関谷准教授は「容認するにせよ、しないにせよ、ルールを地域でしっかり気論し、住民に徹底してもらう必要がある」指摘した。