パートら非正規労働者への厚生年金の加入拡大を柱とした年金制度改革関連法が5月29日の参院本会議で、与党や立憲民主党などの賛成多数により可決、成立した。
国民年金だけの人の受給額底上げと、保険料を払う制度の支え手増を図る。
加入義務が生じる企業の規模要件を2022年10月に従業員101人以上、2024年10月に51人以上に広げる。
75歳からの年金の受け取り開始を可能とするなど高齢者就労を促す施策も盛り込んだ。
厚生年金は、フルタイム勤務の人は企業規模に関係なく加入義務がある。
パートら短時間労働者は現在、従業員501入以上の企業で週20時間以上働くことなどが条件。
企業規模要件を2段階で引き下げる。
政府は当初、撤廃を目指したが、労使折半の保険料が負担となる中小零細企業に配慮し見送った。
改革は不十分だとの指摘は根強い。
企業側が保険料負担を免れるため意図的に厚生年金への加入を逃れるケースが相次いでいることを踏まえ、加入義務の履行を徹底させるため立ち入り検査の権限を強化した。
加入逃れが疑われる際は立ち入り、賃金台帳や出勤記録などの関係書類を提出させる。
高齢者の就労促進策は2022年4月に始まる。
原則65歳の公的年金の受給開始に関し、時期を選べる年齢を現行の60~70歳から60~75歳に広げる。
開始時期を65歳から1ヵ月遅らせるごとに月0・7%ずつ増額され、75歳から受け取ると、65歳開始の場合より毎月の年金額が84%増える。
働いて一定以上の収入がある高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金」は働く意欲を損なうとの指摘を踏まえて見直す。
60代前半の減額基準を現行の「月収28万円超」から65歳以上と同じ「月収47万円超」に引き上げ、対象者を少なくする。
新たに「在職定時改定」という仕組みも導入。
60代後半の人が厚生年金を受け取りながら働く場合、納めた保険料を翌年年金額に反映させる。