政府は10月29日までに、認知症対策の国家プロジェクト「認知症・脳神経疾患研究開発イニシアチブ」の一環で、脳の神経回路再生などの研究開発を本年度中に始める方針を決めた。
当初は来年度開始の予定だったが「緊急的に対応すべき」だと判断し、前倒しする。
関係者によると、2023年度補正予算で100億円以上の規模の財源確保を目指している。
早期着手を検討する分野には例えば、国立精神・神経医療研究センターが計画する神経回路の再生、修復の研究がある。
神経細胞の軸索(神経線維)を覆い、情報を伝えるのを助ける働きがあるミエリンという物質に着目している。
認知症の人の脳にはミエリンが破壊され、情報伝達がうまくできなくなった神経回路がみられる。
ミエリンを修復することで、傷ついた神経回路の再生を促すことができれば、情報を伝える力が高まり、病状が進んだ患者への新しい治療法の開発につながることが期待される。
このほか、認知症の診断法や新しい治療の普及強化に向けた研究の分野への支援も検討されている。
エーザイなどの認知症新薬「レカネマブ」が9月に承認されたが、対象者や有効性は限定的で、より効果的な治療法の開発が期待されている。
10月中旬の「認知症と向き合う『幸齢社会』実現会議」で岸田首相が早期着手の方針を表明した。
イニシアチブは野心的な研究を推進する内閣府の「ムーンショツト型研究開発制度」の枠を利用する。