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舛添の辞任で、「週刊文春」の告発記事は、電通の五輪誘致の巨額マネーに移る。

2016年06月17日 14時02分40秒 | 日記
 舛添要一東京都知事の辞任発表で、小悪人の行っていた多くの実体暴きも、うやむやのままで収束に向かうのであろう。

 しかし、この告発のきっかけになったのは、週刊文春の暴露記事からであった。

 週刊文春の目覚ましいほどの暴露記事は、ベッキーの不倫騒ぎなど多方面にわたっている。

 週刊新潮やその他の週刊誌も、週刊文春に負けじと、暴露記事のオンパレードで、テレビの昼のワイドショーなどは、週刊誌やスポーツ紙の記事を利用しての、てっとり早い後追い報道が続く。

 まあ、ゴシップ記事の好きな国民性は、世界共通であり、英国などもその最たるもので、英国のEU離脱問題も、ちゃっかりと賭け事の材料にする醒めた目を持つ国民性に、筆者などはやはり大人国とみてしまうよ。(笑)

 舛添問題が一段落したところで、週刊文春の最新号が、”「東京五輪」招致、電通元専務への巨額マネー”と題した告発スクープを記事にしている。

 電通は日本の広告業界の最大手であり、テレビ業界などはスポンサー収入の窓口という立場にあり、面と向かっては批判などできない。場合によっては番組内容にも隠然たるクレームをつける可能性もあり、日本のメディアのグレーゾーンの存在である。

 また、スポーツ関係での電通のマネージメントの力も巨大で、今回の文春の記事も、告発というより、日本オリンピック委員会の竹田恒和会長と、電通元専務の高橋治之氏との永い親密な関係を知ることができる。

 それも馬術競技から続き、理事長を務めた「ロイヤルホースライディングクラブ」の経営破たん問題などから続いており、あらゆるスポーツイベントに根を張る電通の力は強力で、博報堂など二番手以降の広告代理店では歯が立たない存在だとわかる。

 今やオリンピックも完全に商業化された存在になり、招致のためのカネが幅を利かせるのも当然の結果であろう。

 巨額の費用を必要とするオリンピックの招致が、テレビなどの放映権がうなぎ上りに上昇し、スポーツ関連のビジネスに巨額の利益を与えている。

 しかし、招致のために投じられた税金は、本当に国民の利益につながっているのか、それこそが,もっと重要な問題ではないか。

英国のEU離脱で予想される世界の株安で、GPIFの損失が心配になる。

2016年06月15日 10時37分50秒 | 日記
 英国のEU離脱支持がリードを拡大しているようだ。もちろん未定とする人の率も13%程度あるようなので、23日の国民投票の結果を見ないと何とも言えない。

 しかし投資家のリスク回避の動きが株式市場に反映しており、NY株式市場も東京株式市場も弱含みだ。

 万一、英国のEU離脱が本決まりになると、日経平均株価は1~2千円の下落は予想されると言われており、リスクのある資産への投資資金は、より安全な資産に鞍替えされることは十分考えられる。

 それにつけても不安になるのが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、昨年から、安倍政権の働きかけにより、安全な国債などの債権からリスクの多い内外の株式に、投資のウエイトを大幅に増やしてしまっていることだ。

 おそらく、現段階では大幅な損失をこうむっている筈であり、GPIFは国民の貴重な年金資金を運用しているのであるから、率直に実態を発表すべきであろう。どうも安倍政権の意向で参院選の後で、公表するということになっているようで、選挙で不利になる数字を隠すというのは、国民に目隠しをしていることになる。

 野党も、調査権限はあるわけであるから、GPIFの損失を明らかにすべきである。

(ロイターより貼り付け)

英国のEU離脱支持リード拡大、残留派に7ポイント差=TNS調査
2016年 06月 15日

[ロンドン 14日 ロイター] - TNSが14日公表した世論調査の結果、英国の欧州連合(EU)離脱支持が残留支持を7ポイント上回り、離脱派のリードは前週の2ポイントから拡大した。

TNSが2479人を対象にオンラインで実施した調査では、離脱を支持する人の割合が約47%と、残留支持の40%を上回った。13%が未定、もしくは投票しないと回答した。

国民投票は23日に実施される。
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ウイキペディアの年金積立金管理運用独立行政法人より、筆者の選択で一部貼り付け)

●運用資産

 平成27年度第3四半期末現在の運用資産は139兆8249億円である。運用資産はアメリカ合衆国の社会保障年金信託基金に次ぐ世界第2位を誇る。2011年末時点では年金基金の中で、2位のノルウェー政府年金基金(5,755億2700万米ドル)に2倍以上の差をつけて資産額は世界最大である(1兆3,948億7300万米ドル)。このことから、世界最大の機関投資家と呼ばれる。

 経済学者の高橋洋一は、賦課方式を基本とする公的年金の性質から、積立金は10兆円程度あれば十分年金運営の流動性を確保でき、それ以上増やして運用リスクを抱えても年金給付額の増加にはさほど寄与しないため、100兆円以上もの積立金を運用する現状の正当化は不可能であり「GPIFに存在理由はない」と指摘している。

●資産構成割合

 分散投資(複数の資産に投資すること)でリスクを抑えながら期待収益率を上げるとしている。
 現行の基本ポートフォリオは、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%である。 
 荻原博子は2009年8月時点で、2007年からの世界的金融危機によりそれまでの収益のほとんどが消し飛び累計収益が1兆円を割り込んでしまったとして批判している。

 ウォールストリートジャーナル紙によると、2015年7-9月期の運用損益は7兆8899億円の赤字となった。資産別では国内株式が4兆3154億円の赤字。外国株式も3兆6552億円の赤字。外国債券も2408億円の赤字だった。国内債券は3022億円の黒字であった。

(貼り付け終わり)

皮肉なことに、リーマンショック直前の状況とは、英のユーロ離脱による経済混乱を指すのかネ。

2016年06月13日 14時51分57秒 | 日記
 6月13日、月曜日の幕開けとともに、対ドル、対ユーロに対する円高が止まらない。
 午後2時の時点では、対ドルは105.96円、対ユーロは119.20円と大幅に円高に振れている。
 株式市場も、日経平均株価は16,088円 -513.10円と大暴落を演じている。

 6月23日に行われる英国の国民投票で、ユーロ離脱に賛成する票が、離脱反対票より上回っている見通しになっているという情報のせいだ。

 安倍首相が伊勢志摩サミットG7出席者に、今はリーマンショックの直前の状況だと述べたことが、中国などのアジア諸国の景気低迷ではなく、皮肉にも英国のユーロ離脱で現実の問題になっているのではないかと思われるくらいだ(笑)

 しかし、冗談ではなく英国がユーロ離脱をすることになると、いろいろと潜在している英国、欧州の問題点が浮き彫りになってくる。

 もともと難民受け入れによる財政圧迫を嫌っての面もあるが、ギリシャなどユーロ圏内の経済貧困国家の存在がユーロ内で、再び論議される問題もあり、ユーロという同一通貨での経済圏維持が安定して行えるのかとか、英国ではアイルランドの独立問題にも、再び波及する懸念もある。

 もちろん日本からユーロ圏に対する輸出にも、ユーロ安が続くと大きく影響する事は当然であり、株価の値下がりは輸出企業に対する売りが原因であろう。

 またドル安も進行しており、円の独歩高となっているのは、日銀の金融緩和を促す狙いもあるのだろうが、もうここまでくると、金融政策だけではコントロールはあまり効かないであろう。

 日本は財政再建を真剣に取り組まないといけないのだが、参院選挙を意識した消費税先延ばしだけでは、景気回復などおぼつかない。

 企業減税や高額所得者に対する所得税アップの見直しなど、幅広い消費者の購買意欲増を図る政策に重点を置くとか、保育園関係の対策費など、生活者の実質所得増につながる政策に早く着手すべきである。

 

米大統領選のトランプやサンダース現象は、数年先には日本でも起こる可能性がある。。

2016年06月12日 21時34分06秒 | 日記
「米大統領選で右も左も大混乱なわけ」と題した今回のビデオニュースの放送は、筆者には非常に参考になる鼎談であった。

 かってのアメリカもそうであったが、今の日本も産業界の経済成長が望めなくなってきている。 筆者が第一線で仕事をしていた頃、25年から35年以上も前の頃と、現在の産業構造はすっかり変わってしまっているのだ。

 あの頃は多くの従業員を雇う製造業などが、産業の主体であった。今でもかろうじて自動車産業などにはその片鱗が残っているが、鉄鋼業などの重工業関係の仕事量は盛んであったし、軽工業分野といえるかもしれないが、家電産業なども当時は花形で、製造現場だけでなく、販売部門や物流部門などに、多くの従業員を必要とした。

 これらの産業が採用していた従業員は、ほとんど正社員であり、所得もそこそこにある中流意識を持った人々が、社会の主流を占めていた。

 ところが現代の産業の主流は何であろう。 AppleやGoogleを頂点とするIT企業と、ウオールストリートの金融業が最先端事業になっている。

 この産業は、収益力はあるが、雇用される従業員数を計算すれば、圧倒的に少ない従業員で成り立っている。確かにこの企業分野で働くことができた人々は、それなりの高級をもらっているが、かっての中流に属していた多くの人々は、没落するか非正規の仕事で細々と生きる結果に陥ってしまっている。

 ファッション製品などの小売りチェーン店や、外食産業のチェーン店の数は、今は非常に増えているが、その雇用実態はいまだに、非正規社員が圧倒的に多い。数十年前の従業員と比較すると、明らかに所得の大幅な減少が発生している。 また不安定な非正規社員のために、結婚するにも将来に対する不安が多い。

 トランプやサンダースの支持者が増える要因は、こういった産業構造の大きな変化が原因になり、富が極一握りの企業や従業員に集まり、恩恵に浴せない圧倒的な数の低所得者や貧困者を生み出している。

 日本においても、まったく同じ変化が発生している。 不満や不安を抱えた若い人たちに、大きな政治変化を引き起こす土壌が育ってきているといえる。

 トランプやサンダース現象を、アメリカの問題と思っていると、日本もここ数年先では、大きな変化の波にのまれる予感がするのだ。


(ビデオニュース コムより貼り付け)

マル激トーク・オン・ディマンド 第792回
2016年6月11日
米大統領選で右も左も大混乱なわけ
会田弘継氏(青山学院大学教授・ジャーナリスト)


 アメリカ大統領選はヒラリー・クリントンが民主党の候補者に指名されることが確実となり、11月の本戦で共和党候補のドナルド・トランプと大統領の座をかけて争うことが事実上決まった。

 それにしてもアメリカの政治は前代未聞の異常事態に陥っている。共和党では政治経験など皆無の不動産王トランプ氏が、暴言を繰り返しながら、名だたる党のエスタブリッシュメント候補を完膚なきまでに打ち破ってしまった。 もう一方の民主党も、知名度も経歴も非の打ち所の無いと思われた大本命クリントン女史が、民主社会主義者を自任し、昨日まで民主党員でもなかった老政治家バーニー・サンダース氏に、ぎりぎりのところまで追い込まれた。 これまでアメリカの政治を担ってきた二大政党が同時に、崩壊の縁に立たされているといっても過言ではない。

 アメリカに何が起きているのか。

 アメリカの思想史を長年ウォッチしてきたジャーナリストで青山学院大学教授の会田弘継氏は、トランプやサンダース躍進の背景にアメリカ社会に鬱積した不満や不安の存在を指摘する。 グローバル化が進む中でアメリカの豊かさの代名詞だった「分厚い中間層」が崩壊し、その多くは、低所得層へと没落した。 彼らの多くは既存の政治勢力に強い絶望感を抱いている。 中でもプアホワイトと呼ばれる白人の低所得層は怒りの矛先を移民や少数民族に仕向けるトランプの支持に回り、多額の学費ローンを抱え、満足な仕事に就くことができない若者はウォールストリートや富裕層批判を強めるサンダースの下に参集した。 そうした政治的変動が、今回の大統領選挙の予備選で既成政党に対する反発と反体制派候補への支持という形で顕著になったのだという。

 元々アメリカでは伝統的に共和党は保守陣営をまとめ上げ、民主党がリベラル層を束ねることで、長年にわたり二大政党制を維持してきた。しかし、アメリカではもはや保守派が社会を保守できず、リベラル派は再分配を通じた公平の実現が困難になっている。そしてそれは、決してアメリカに限ったことではない。

 アメリカの大統領選挙の異常事態は、保守とリベラルという従来の政治的な棲み分けが、世界的に困難になっていることの反映と見ることができる。安定的な経済成長が期待できることを前提に、分厚い中間層に支えられた政治環境の下で、保守とリベラルの間でチェック・アンド・バランスを繰り返してきた民主主義体制そのものが、成り立たなくなっているのだ。

 アメリカの大統領選で表面化した政治的な混乱は何を意味しているのか。保守とリベラルという伝統的な仕分けが成り立たなくなった世界で、何が新たな対立軸となり得るのか。大統領選におけるトランプ、サンダース躍進から見えてくる世界の新たな政治的潮流の正体を、ゲストの会田弘継氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

(貼り付け終わり)



会田弘継あいだ ひろつぐ

青山学院大学教授・ジャーナリスト


1951年埼玉県生まれ。76年東京外国語大学英米科卒業。同年共同通信社に入社。ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを経て2015年より客員論説委員。同年より青山学院大学地球社会共生学部教授。著書に『追跡・アメリカの思想家たち』、『戦争をはじめるのは誰か』、訳書に『政治の起源』など。

権力を持っている政府の危険な行動を、視聴者に知らせるのが、ジャーナリストたるメディアの仕事。

2016年06月09日 09時58分15秒 | 日記
 ギャラクシー賞は毎年、特定非営利活動法人「放送批評懇談会」が優秀な番組などを選んで、表彰している。

 今年のギャラクシー賞にテレビ朝日の『報道ステーション』の「特集 ノーベル賞経済学者が見た日本」(2016年3月17日放送)「特集 独ワイマール憲法の“教訓”」(2016年3月18日放送)がテレビ部門大賞を受賞した。報道番組で受賞したのは今回が初めてだという。

 筆者はこれらの番組を再放送で見てみたいと思ったが、テレビ朝日はオンデマンドでは視れないようだ。

 リテラに、「安倍とヒットラーの類似性をドイツ取材で証明」との、この番組の紹介記事が再度出されたので下に紹介しておきます。

 麻生副首相も、独のワイマール憲法を取り上げ、静かに改憲することができるような発言があったが、自民党の政策検討部門内で、ナチスのやり方を研究しているような匂いがしていたが、『報道ステ』古舘伊知郎時代の前ディレクターが、その類似性を調査報道で明確にしてくれた。

 本当のジャーナリストは、このような権力の行動に危険性を感じとり、視聴者に問題意識を持たせるというのが、本来のあり方だと思うのだが。


(リテラより貼り付け)
 
『報道ステ』古舘伊知郎”最後の一刺し”がギャラクシー賞を受賞!
安倍とヒットラーの類似性をドイツ取材で証明
2016.06.03.


この1年間で放送された優れた番組に贈られるギャラクシー賞の贈賞式が、昨日6月2日、都内で行われた。注目は、テレビ朝日『報道ステーション』の「特集 ノーベル賞経済学者が見た日本」(2016年3月17日放送)「特集 独ワイマール憲法の“教訓”」(2016年3月18日放送)がテレビ部門大賞を受賞したことだろう。

 ギャラクシー賞は毎年、特定非営利活動法人「放送批評懇談会」がNHK、民法放送各局から独立して審査・顕彰するが、ニュース番組が大賞を受賞するのは初めてのこと。そして、大賞を受賞した『報ステ』の特集「独ワイマール憲法の“教訓”」は、現在、安倍首相が改憲での創設に強い意欲を見せている「緊急事態条項」と、ヒトラーが独裁に利用した「国家緊急権」が酷似していることを鋭く指摘したもの。それも、古舘伊知郎キャスターが直接ドイツからレポートして、権力が暴走する歴史を丹念に検証するという力作であった。

 ご存知の通り、『報ステ』はこれまで、安倍政権からの有形無形の圧力にさらされてきた。古舘氏は今年の3月末をもって番組を降板。最後の出演で古舘氏は“圧力がかかって辞めるわけではない”としつつも、「ただ、このごろは、報道番組で、あけっぴろげに、昔よりもいろんな発言ができなくなりつつあるような空気は、私も感じています」と、放送メディアが安倍政権を忖度し、現場も自由な報道ができていない現状を率直に語った。

 その意味で、今回、古舘氏の“最後の一刺し”であった「特集 独ワイマール憲法の“教訓”」が、ギャラクシー賞の大賞に輝いた意味は大きい。さらに贈賞式では、同じく今年の3月でNHK『クローズアップ現代』を降板した国谷裕子氏に特別賞が授与され、古舘氏と二人三脚で『報ステ』を支えてきた元プロデューサー・松原文枝氏がスピーチをするなど、現在の放送メディアの苦境を現場の人間が臆さずに跳ね返そう、という強い意志を感じるものだった。

 放送メディアには、政権の圧力に屈さず、決して忖度することのない番組作りをしてもらいたいと切に願う。目前にある日本社会の危機を真摯に検証し、愚直に報道することこそが、視聴者がメディアに求めているものに他ならないからだ。

 以下に、今回ギャラクシー賞の大賞に輝いた『報ステ』の特集を、当時本サイトが紹介した記事を再録するので、ぜひこの機会にいま一度、じっくりとその内容をお読みいただきたい。
(編集部)

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 昨夜3月18日に放送された『報道ステーション』(テレビ朝日)が、いま大きな話題を集めている。というのも、昨夜の特集は安倍首相が改憲の入口として新設を目論んでいる「緊急事態条項」。しかも、ヒトラーが独裁のために悪用した「国家緊急権」と重ね合わせるという、安倍首相が激怒すること間違いなしの内容で、古舘伊知郎キャスター自らがドイツへ渡りレポートする力の入れようだったからだ。

 まず、古舘キャスターはドイツからのレポートの最初に、こう話した。

「ヒトラーというのは、軍やクーデターで独裁を確立したわけじゃありません。合法的に(独裁を)実現しているんです。じつは、世界一民主的なワイマール憲法のひとつの条文が、独裁につながってしまった。そしてヒトラーは、ついには、ワイマール憲法自体を停止させました」

「ヒトラー独裁への経緯というのを振り返っていくと、まあ、日本がそんなふうになるとは到底思わない。ただ、いま日本は憲法改正の動きがある。立ち止まって考えなきゃいけないポイントがあるんです」

 独裁の道に走らせたワイマール憲法の条文、それこそが「国家緊急権」だ。「大統領は公共の安全と秩序回復のため必要な措置を取ることができる」という条文をヒトラーは悪用、集会やデモの開催を禁止し、出版物を取り締まり、共産主義者を逮捕し、野党の自由を奪い、あらゆる基本的人権を停止させた。ここまでは教科書にも書いてあることだが、本題はここから。この「国家緊急権」が「緊急事態条項」とそっくりではないか、と言及するのだ。

 国家緊急権と緊急事態条項がそっくりだというのは、本サイトでも昨年から繰り返し指摘してきた。安倍政権は大規模な自然災害時に迅速に対応するために緊急事態条項が必要なのだと強調するが、これは建前に過ぎない。事実、自民党による憲法改正草案の該当箇所には、こうある。

《(緊急事態の宣言)
第九十八条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。》

「災害時のために」と言うわりに、自然災害が出てくるのは最後の3番目である。しかも草案では、緊急事態宣言は国会の承認が必要だが事後でもいいことになっており、これは事実上、事後承認でやりたい放題できる、ということだ。

 くわえて草案には、ダメ押しで、《この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限尊重されなければならない。》とある。つまり、法の下の平等、身体の拘束と苦役からの自由、思想と良心の自由、表現の自由といった人類普遍の権利でさえ「最大限尊重」(厳守ではない)程度の扱いになるのである。

 夏の参院選で与党が3分の2以上の議席を獲得し、緊急事態条項の新設となれば、いよいよ本当に安倍首相はヒトラーのように独裁にひた走るのではないか──。実際、昨夜の『報ステ』では、ワイマール憲法の権威であるドイツ・イエナ大学のミハエル・ドライアー教授にこの緊急事態条項を見せたところ、ドライアー教授はこう述べていた。

「この内容はワイマール憲法48条(国家緊急権)を思い起こさせます。内閣の一人の人間に利用される危険性があり、とても問題です。
 一見、読むと無害に見えますし、他国と同じような緊急事態の規則にも見えますが、特に(議会や憲法裁判所などの)チェックが不十分に思えます。(中略)なぜ一人の人間、首相に権限を集中しなければならないのか。首相が(立法や首長への指示など)直接介入することができ、さらに首相自身が一定の財政支出まで出来る。民主主義の基本は「法の支配」で「人の支配」ではありません。人の支配は性善説が前提となっているが、良い人ばかりではない」

 良い人ばかりが首相になるわけではない。現状の安倍政権の強権的な態度を考えると、じつに含みのある話である。さらに番組ではスタジオゲストとして、昨年の安保法制の国会審議の際、与党の推薦で参考人として国会に招致され「安保法制は違憲」という見解を示した長谷部恭男・早稲田大学法学学術院教授が登場。長谷部教授は、「内閣総理大臣がそう(緊急事態だと)思えば(緊急事態宣言を行える)という、主観的な要件になっている。(発動要件が客観的ではなく)非常に甘い」「場合によっては怪しいと思われれば令状なしで逮捕される、そんなことになるということも理屈としてはあり得る」と緊急事態条項の危険性を述べ、また、“緊急事態条項が必要ならば憲法に入れるのではなく法律を設けたらいい話なのではないか”という見解も示した。

 このように、多角的に緊急事態条項を掘り下げた『報ステ』。しかし、古舘キャスターは番組中、「ヒトラーのような人間が日本に出てくるとは到底想定できないんですが」と何度も念を押し、さらには一度たりとも「安倍」という二文字を発しなかった。

 だが、この特集のテーマは緊急事態条項と国家緊急権の類似性のみに留まらず、緊急事態条項の新設を目論む安倍首相の危険性をも暗に伝えるものだった。

 たとえば、ドイツからのリポートVTRでは、ヒトラーが経済政策と民族の団結を全面に打ち出したこと、ヒトラーが「強いドイツを取り戻す」という言葉で民衆から支持を得ていったこと、そしてヒトラーは巧妙に言葉を言い換え、独裁を「決断できる政治」に、戦争の準備を「平和と安全の確保」と表現していたことを、古舘キャスター自らが紹介した。お察しの通り、これはすべて安倍首相に置き換えられるものだ。

 というよりも、ヒトラーの手法を安倍首相が多分に意識し、真似ているといったほうがいいだろう。現に自民党は、自民党東京都支部連合の事務局広報部長(当時)がヒトラーの選挙戦略を学ぼうという『HITLER ヒトラー選挙戦略』(小粥義雄/永田書房)なるナチス礼賛本を出版。高市早苗総務相が「著者の指摘通り勝利への道は『強い意志』だ。国家と故郷への愛と夢を胸に、青年よ、挑戦しようよ!」という推薦文を寄せていた(ちなみに同書は批判が殺到し、わずか2カ月で絶版回収されている)。

 まさに、日本がいま置かれた危機的状況のなかで警鐘を鳴らす、渾身の特集。既報の通り、政権からの圧力によって降板に追い込まれた古舘キャスターだが、この放送はそんな古舘氏と番組スタッフたちによる、じつに真っ当な方法による“政権への反撃”だったのだろう。

 古舘キャスターは特集の最後を、こんな言葉で締めくくった。

「とにかく立ち止まってじっくり議論をする、考えてみるということが、この条項に関しては必要ではないか、その思いで特集を組みました」

 こうした重要な情報を視聴者に伝えるのが、本来の報道の役割であるはず。だが、ヒトラーよろしく日本の独裁政権はこれを“偏向報道”と呼び、不都合な事実を伝えるキャスターたちをことごとく握り潰すことに成功した。まさしくいま恐ろしい国になりつつあるが、最後に気概を見せた『報ステ』は、古舘キャスター最終日の31日の放送まで見逃せないものとなりそうだ。大いに期待したい。
(水井多賀子)

(貼り付け終わり)