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アベノミクスへの反論を、勉強していない野党の党首。

2016年06月25日 11時28分32秒 | 日記
 6月23日のブログに書いていたが、参院選の党首討論で安倍首相が、とうとうとアベノミクスの成果を話し、野党の党首がその内容に正確に反論せず、別の問題数字を論じて、議論が噛み合っていなかったと書いた。

 安倍首相が述べているのは、中原 圭介氏が指摘しているように、主に、①有効求人倍率が24年ぶりの高水準であるということ、②民主党政権時に比べて税収が21兆円増えたという2点であった。

 中原 圭介氏は、安倍首相がちゃっかりアベノミクス効果だと自慢しているが、両方ともアベノミクスの成果ではなく、急速に進む高齢化による生産人口減が原因であり、 税収増も大半が「円安によるインフレ税」と「消費増税」という家計への二重課税によってもたらされたものであると論破しておられる。
 
 その結果として、個人の消費水準が低迷し、日本のGDPの60%を占める消費が伸びないのだから、経済成長を望むべくもない。

  中原 圭介氏もコラムの中で述べておられるように、安倍政権は当然アベノミクスの成果を述べようとする筈なのだから、せめて野党の党首は、中原 圭介氏のコラムにあるような反論を、勉強しておいて欲しいものだ。

(東洋経済オンラインより貼り付け)

円安に頼る経済政策を終わりにする時が来た
円高で実質賃金と個人消費は増加に転じる
中原 圭介 :経営コンサルタント、経済アナリスト
2016年06月25日

 今回の参議院選挙において、安倍首相がアベノミクスの成果として必ず訴えているのは、主に、①有効求人倍率が24年ぶりの高水準であるということ、②民主党政権時に比べて税収が21兆円増えたということ、の2点になります。

 これら2つの成果だけを強調されると、国民のなかにはアベノミクスを評価する人々がいるでしょうし、実際に各種の世論調査などでも、およそ半数近くがアベノミクスを評価すると答えています。しかし、これら2つの成果が、自らにとって都合のよい数字だけを並べていて、もっと大事な数字が隠されていると言ったら、みなさんは信じることができるでしょうか。

 まずは①の有効求人倍率については、2015年3月2日の『アベノミクスで失業率は低下していない』、2016年3月27日の『政治家の皆さん、もっと経済を勉強しなさい』と2年連続で述べさせていただいたように、アベノミクスによって有効求人倍率が上昇したわけでは決してありません。このようなデタラメな主張ができるのは、日本経済や日本社会の基本的な構造変化を無視しているからにほかならないのです。

◉有効求人倍率が上昇する本当の理由

日本の総人口は2008年の1億2808万人をピークに少しずつ減少していますが、2013年に21.7万人減(0.17%減)、2014年に21.5万人減(0.17%減)、2015年に27万人減(0.21%減)となり1億2711万人まで減少しています(いずれも10月1日現在)。

 これに対して、生産年齢人口(15~64歳)は2013年に117万人減(1.5%減)、2014年に116万人減(1.5%減)、2015年に77万人減(1.0%減)と総人口と比べても減少率が大きく、7708万人にまで減少しています。これは、2012年から2014年の3年間に団塊世代が65歳に達するようになり、その減少数が大幅に拡大していたためです。

 安倍政権誕生前の2010年~2012年の3年間で、生産年齢人口は132万人減少していたのに対して、誕生後の2013年~2015年の3年間では、実に310万人と2倍超も減少していたというのですから、人手不足になるのは当然のことであったと言えるでしょう。生産年齢人口の急激な減少を背景に、2012年以降は失業率が徐々に低下し、有効求人倍率が上昇するのは、初めからわかっていたというわけです。

 おまけに、多くの中小企業はこの構造的な人手不足のために、たとえ今の採用に結びつかなくても、将来の採用もにらんで無料のハローワークにおける求人を積み上げています。少子高齢化によって求人倍率の分母となる求職者数が減り続けているのに、人手不足から分子となる求人数が必要以上にかさ上げされているので、有効求人倍率は実態よりも高めに出る性格を持っているのです。

 確かに、有効求人倍率の上昇は喜ばしいことではありますが、「経済が好調だから、有効求人倍率は高水準が続いているのだ」という主張は、時代の変化に取り残された経済学のステレオタイプ的な浅はかな考えであり、アベノミクスの成果とはとてもいえないでしょう。

 次に②の税収の増加についても、GDPが2013年以降ほとんど増えていないことを考えると、決して素直に評価できるものではありません。それは、3月27日の『政治家の皆さん、もっと経済を勉強しなさい』でも論理的に証明しましたように、税収の増加は決して企業活動の活性化によってもたらされたわけでなく(2013年以降も日本企業全体の売上高は増えていない)、その大半が「円安によるインフレ税」と「消費増税」という家計への二重課税によってもたらされたものであるからです。

◉実質賃金はリーマン期並みに下落している

 「輸入品の価格水準を示す輸入デフレーター」と「消費者物価の上昇率」は見事に一致していますし、その結果として、円安により企業収益が増えた一方で、輸入インフレにより家計の可処分所得が減ってしまったというのは、2013年~2015年の実質賃金の下落率が4.6ポイントという事実を見ても明らかなことではないでしょうか(私の推計では、実質賃金の下落率4.6ポイントのうち、2.6ポイント以上が輸入インフレによるもの、2.0ポイント以下が消費増税によるものです)。

 そのうえ、2012年度の税収については、2008年のリーマン・ショックと2011年の東日本大震災による二重の税収減に見舞われていたという現実も見逃してはいけません。当時は欠損金の繰り越しにより、トヨタやメガバンクですら法人税を納めていなかったのですから、その他の大企業や中小企業も押しなべて法人税額が少なかったのは言うまでもないでしょう(もっともメガバンクはリーマン・ショック前も欠損金繰り越しで法人税を支払っていませんでしたが)。

 安倍首相は先日のG7では各国首脳に対して、「世界経済はリーマン・ショック並みの危機に備える必要がある」と訴え、G7終了直後には消費増税を見送るという決断をしました。海外メディアの多くは「消費増税を延期するために、リーマン並みの危機を煽った」と批判的な見方を示しましたが、日本経済の実態を冷静に見ていると、安倍首相の認識はある意味では正しいのかもしれないと思われます。日本国民の生活水準の落ち込みを考えれば、確かに家計部門はリーマン・ショック時と同じような状況にあるからです。

 繰り返しになりますが、2013年~2015年の実質賃金の下落率は累計して4.6ポイントにまでなっており、この下落率はリーマン・ショック期に匹敵しています。また、2015年の途中までは下落率が5.0ポイントを超えていて、明らかにリーマン・ショック期を凌駕していた時期もあったのです。

◉個人消費は戦後最悪の減少率を記録

 国民の購買力がリーマン・ショック期と同様に落ち込んでいるというのに、GDPの6割を占める個人消費が増えるわけがありません。1990年代に日本のバブルが崩壊して以降、個人消費がマイナスになったのは、金融システム危機で金融収縮が起きた1998年、リーマン・ショック期の2008年~2009年、そして実質賃金が大幅に下落した2014年~2015年の計5年間です(意外かもしれませんが、消費増税を行った1997年には個人消費は増えていたのです)。

 ここで注目しなければならないのは、個人消費が2年連続でマイナスになったのは、2008年~2009年と2014年~2015年の2回しかないということ、さらには個人消費が2008年に0.9%減、2009年に0.7%減だったのに対して、2014年は0.9%減、2015年は1.3%減と、戦後最悪の減少率を更新してしまったということです。このような現状を見れば、大手メディアの世論調査で押しなべて「8割が景気回復を実感していない」という結果が出るのは、当然のことであると言えるでしょう。

6月21日に行われた日本記者クラブでの党首討論では、安倍首相は前回の衆院選と同じく有効求人倍率を前面に出して実績を誇っていましたが、これにしっかりと反論できない野党の党首たちも、経済をもっと勉強しなければならないと思います。せめて誰かに「首相はG7でリーマン並みの危機にあるとおっしゃいましたが、確かに実質賃金と個人消費で見ると、リーマン級の危機にありますよね」という切り返しくらいはしてもらいたいところでした。

 ただし、ドル円が今のように100円~105円程度で推移している状況が続けば、2016年の実質賃金は間違いなく上がることになります。1.0ポイントくらいの上昇は見込むことができますし、それに伴い個人消費も幾分戻ってくることが期待できます。そろそろこのあたりで、通貨安に頼る経済運営は国民生活にとって恩恵が少ないことを、国民もいいかげん学習する必要があるのではないでしょうか。

◉適正なドル円相場は95円~105円

 私がアベノミクス以降に一貫して主張してきたことは、日本の経済構造の変化に合わせて、行き過ぎた円高や行き過ぎた円安の水準は変わるはずであるということです。たしかに、2000年代初めであれば、私も適正なドル円相場は120円くらいだと考えていましたが、いまや日本経済の構造変化に伴って、行き過ぎた円安は弱者にシワ寄せが偏る性格を持ってしまっています。

 そのように考えると、国民全体にとっても、企業全体にとっても、国家財政にとっても、三方一両損ではないですが、ドル円相場は95円~105円くらいが適正ではないかと思っています。そして、そういったことを考慮に入れながら、経済政策や金融政策は決めていかなければならないと強く思っているわけです。

(貼り付け終わり)