ドル円は120円台に定着してしまった。海外旅行をすると、80円台の時に比べるとびっくりする程、円の値打ちが落ちた事を実感するだろう。
それが輸入原材料や商品の価格の高騰を招いているのだ。特に食品などの輸入価格の値上がりに、消費者離れをきざす事を恐れ、加工食品メーカーや小売販売業者は末端価格の値上がりを抑えるために、販売コストの削減に必死だ。
それでも輸入原料の値上がりで、これから続々と値上がりする加工食品が目白押しだ。
麻生財務大臣が、円安により企業は大儲けをしていると演説をしているが、株式を扱う金融業はそうであろう。
しかし円安メリットは、日本から輸出する製品を出荷している大手企業だけであって、大手メーカーに部品を供給している中小下請け企業は、輸入の原材料費の高騰で、塗炭の苦しみを受けているのだ。
しかも、輸出産業は日本の産業構造が変化している中では、もはや全産業の構成の中では、ごく一部に過ぎないのだ。
麻生大臣は、もっと日本の産業構造の変化を知った上で発言すべきである。
どう見ても現段階の急速な円安を、単純にひたすら喜ぶような発言をする麻生財務大臣の姿を見ていると、本当に日本の将来に不安にを覚える。
(ロイターより貼り付け)
コラム:「師走の円安」に水を差す3つのリスク
熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
2014年 12月 8日 20:47 JST
[東京 8日] - 米雇用統計を受けて、ドル円は一気に121円台に移行し、いよいよ120円台の時代がやってきた。今後は、2007年6月につけた124円がひとつの目途になるという見方が多い。2015年中には130円に接近するという予想もある。
ただし、今の急速な円安の先行きを考えるとき、7年前とは内外情勢が大きく変わっており、昔の経験則はあまり信頼できない。むしろ、目先のイベントに反応して、為替が大きく変動するボラティリティに注意することが重要である。そこで、当面の為替を変化させやすいイベント・リスクを考えてみることにした。
<12月15日に要注意>
まず目先は、財務大臣による円安けん制発言である。選挙が近づくと、円安で中小企業がコストプッシュに苦しむ、という理解に基づき、急速な円安にブレーキをかけようという思惑が高まりやすい。要人発言は円高リスクになる。こうした思惑は、2015年になって、4月の統一地方選挙が近づいたときにも働くとみられる。
次は、今月14日投開票の衆議院選挙の結果である。自民党などの与党が躍進すれば、円安に振れるだろう。逆に野党が伸びて、アベノミクスへの批判票が増えたと思われると、円高リスクになる。
そして、日本の景気である。特に選挙翌日の15日は要注意だ。同日発表される日銀短観の結果などをみて、7―9月の国内総生産(GDP)に続き、景気後退局面が長引く観測が強まれば、円高リスクが高まる。
ただし、筆者は、内閣府の景気動向指数に基づき、景気後退期は2014年2―8月で終わり、9月以降は景気拡大局面に転じたとみている。各種景気指標が改善を示すと、為替は円安に振れやすくなる。
<ドル円を動かす米欧要因>
12月初めに発表された米国の雇用統計は、前月比約32万人の雇用増となり、大きく円安を進めた。これで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測は2015年前半に早まるとみられる。ゼロ金利解除は、来年6月あるいは7月が目途になる。米長期金利は2.3%前後とまだ極めて低い水準にあるが、そこから上昇していくだろう。
そうなると次なる注目は、インフレ率がさらに上がっていくかという点になる。2014年11月の失業率は5.8%と、リーマンショック前の水準まで低下している。現時点では、インフレ懸念は高まっていないが、今後は徐々に現実味を帯びてくる可能性がある。
過去の経験則では、失業率が0.5%下がると、消費者物価(除く食品・エネルギー)の伸び率は0.09%ほど高まる関係がみられる。現在のハードデータは、2004年6月にFRBが利上げを開始したときに似てきている。
その場合、ゼロ金利解除の先にある利上げが実体経済を抑制させるとみられれば、株価は下落しドル安に向かう。逆に実体経済の改善に比べて、FRBの利上げ姿勢が慎重だとみられれば、株価はより上昇しドル高は続く。
もうひとつ、海外の要因は欧州中央銀行(ECB)の金融緩和である。欧州のデフレ傾向は続き、ECBは2015年初めに追加緩和に踏み切ると予想される。現在の物価上昇は、原油安が押し下げ圧力に働いている。ユーロ圏の消費者物価はコア指数の伸び率でみても低調である(2014年11月は前年比0.7%)。ユーロ安になると、ドル高・円安が進むことになる。2015年初めのECBの緩和は、一段と円安を進める要因である。
<すう勢は円安継続>
今後のドル円は、120円前後から125円程度へと推移すると予想される。ここ数年の為替は、例年11月から翌年2月にかけて円安が進むという季節性がみられる。
ただ今回は、ちょうど2014年11月から2015年2月にかけて、上記のようなイベント・リスクが集中していて、一本調子のドル高・円安になるとは考えにくい。為替のボラティリティは高まり、場面によっては円高予想も高まるだろう。
そこで、中期的なトレンドとして考えなくてはいけないのは、短期的な円安トレンドが、中長期的なドル安・円高トレンドへと変化する可能性である。上記の諸要因の中では、まずFRBがインフレ懸念のけん制を優先して、利上げを進める姿勢に変わった場合、すう勢的なドル安に転じるリスクがある。過剰流動性の相場環境が巻き戻すことになる。
もうひとつの可能性を言えば、安倍政権が衆議院選挙後に、政策の中心を経済成長路線から別のテーマに移し、成長戦略への求心力が急速に落ちてしまう場合である。そのときは、アベノミクスへの期待感の反動が大きく表れることになろう。
筆者は、こうした中期的なドル安・円高圧力が徐々に高まってくれば、円安局面は終わるとみている。ただ逆に言えば、目先こそ円高方向に水を差される可能性はあるものの、当面のすう勢は円安局面だということである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
(貼り付け終わり)
それが輸入原材料や商品の価格の高騰を招いているのだ。特に食品などの輸入価格の値上がりに、消費者離れをきざす事を恐れ、加工食品メーカーや小売販売業者は末端価格の値上がりを抑えるために、販売コストの削減に必死だ。
それでも輸入原料の値上がりで、これから続々と値上がりする加工食品が目白押しだ。
麻生財務大臣が、円安により企業は大儲けをしていると演説をしているが、株式を扱う金融業はそうであろう。
しかし円安メリットは、日本から輸出する製品を出荷している大手企業だけであって、大手メーカーに部品を供給している中小下請け企業は、輸入の原材料費の高騰で、塗炭の苦しみを受けているのだ。
しかも、輸出産業は日本の産業構造が変化している中では、もはや全産業の構成の中では、ごく一部に過ぎないのだ。
麻生大臣は、もっと日本の産業構造の変化を知った上で発言すべきである。
どう見ても現段階の急速な円安を、単純にひたすら喜ぶような発言をする麻生財務大臣の姿を見ていると、本当に日本の将来に不安にを覚える。
(ロイターより貼り付け)
コラム:「師走の円安」に水を差す3つのリスク
熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
2014年 12月 8日 20:47 JST
[東京 8日] - 米雇用統計を受けて、ドル円は一気に121円台に移行し、いよいよ120円台の時代がやってきた。今後は、2007年6月につけた124円がひとつの目途になるという見方が多い。2015年中には130円に接近するという予想もある。
ただし、今の急速な円安の先行きを考えるとき、7年前とは内外情勢が大きく変わっており、昔の経験則はあまり信頼できない。むしろ、目先のイベントに反応して、為替が大きく変動するボラティリティに注意することが重要である。そこで、当面の為替を変化させやすいイベント・リスクを考えてみることにした。
<12月15日に要注意>
まず目先は、財務大臣による円安けん制発言である。選挙が近づくと、円安で中小企業がコストプッシュに苦しむ、という理解に基づき、急速な円安にブレーキをかけようという思惑が高まりやすい。要人発言は円高リスクになる。こうした思惑は、2015年になって、4月の統一地方選挙が近づいたときにも働くとみられる。
次は、今月14日投開票の衆議院選挙の結果である。自民党などの与党が躍進すれば、円安に振れるだろう。逆に野党が伸びて、アベノミクスへの批判票が増えたと思われると、円高リスクになる。
そして、日本の景気である。特に選挙翌日の15日は要注意だ。同日発表される日銀短観の結果などをみて、7―9月の国内総生産(GDP)に続き、景気後退局面が長引く観測が強まれば、円高リスクが高まる。
ただし、筆者は、内閣府の景気動向指数に基づき、景気後退期は2014年2―8月で終わり、9月以降は景気拡大局面に転じたとみている。各種景気指標が改善を示すと、為替は円安に振れやすくなる。
<ドル円を動かす米欧要因>
12月初めに発表された米国の雇用統計は、前月比約32万人の雇用増となり、大きく円安を進めた。これで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測は2015年前半に早まるとみられる。ゼロ金利解除は、来年6月あるいは7月が目途になる。米長期金利は2.3%前後とまだ極めて低い水準にあるが、そこから上昇していくだろう。
そうなると次なる注目は、インフレ率がさらに上がっていくかという点になる。2014年11月の失業率は5.8%と、リーマンショック前の水準まで低下している。現時点では、インフレ懸念は高まっていないが、今後は徐々に現実味を帯びてくる可能性がある。
過去の経験則では、失業率が0.5%下がると、消費者物価(除く食品・エネルギー)の伸び率は0.09%ほど高まる関係がみられる。現在のハードデータは、2004年6月にFRBが利上げを開始したときに似てきている。
その場合、ゼロ金利解除の先にある利上げが実体経済を抑制させるとみられれば、株価は下落しドル安に向かう。逆に実体経済の改善に比べて、FRBの利上げ姿勢が慎重だとみられれば、株価はより上昇しドル高は続く。
もうひとつ、海外の要因は欧州中央銀行(ECB)の金融緩和である。欧州のデフレ傾向は続き、ECBは2015年初めに追加緩和に踏み切ると予想される。現在の物価上昇は、原油安が押し下げ圧力に働いている。ユーロ圏の消費者物価はコア指数の伸び率でみても低調である(2014年11月は前年比0.7%)。ユーロ安になると、ドル高・円安が進むことになる。2015年初めのECBの緩和は、一段と円安を進める要因である。
<すう勢は円安継続>
今後のドル円は、120円前後から125円程度へと推移すると予想される。ここ数年の為替は、例年11月から翌年2月にかけて円安が進むという季節性がみられる。
ただ今回は、ちょうど2014年11月から2015年2月にかけて、上記のようなイベント・リスクが集中していて、一本調子のドル高・円安になるとは考えにくい。為替のボラティリティは高まり、場面によっては円高予想も高まるだろう。
そこで、中期的なトレンドとして考えなくてはいけないのは、短期的な円安トレンドが、中長期的なドル安・円高トレンドへと変化する可能性である。上記の諸要因の中では、まずFRBがインフレ懸念のけん制を優先して、利上げを進める姿勢に変わった場合、すう勢的なドル安に転じるリスクがある。過剰流動性の相場環境が巻き戻すことになる。
もうひとつの可能性を言えば、安倍政権が衆議院選挙後に、政策の中心を経済成長路線から別のテーマに移し、成長戦略への求心力が急速に落ちてしまう場合である。そのときは、アベノミクスへの期待感の反動が大きく表れることになろう。
筆者は、こうした中期的なドル安・円高圧力が徐々に高まってくれば、円安局面は終わるとみている。ただ逆に言えば、目先こそ円高方向に水を差される可能性はあるものの、当面のすう勢は円安局面だということである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
*熊野英生氏は、第一生命経済研究所の首席エコノミスト。1990年日本銀行入行。調査統計局、情報サービス局を経て、2000年7月退職。同年8月に第一生命経済研究所に入社。2011年4月より現職。
(貼り付け終わり)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます