安倍首相の米国訪問は、オバマ大統領もそれなりの歓迎の姿勢を示してくれたようだ。
アジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加国が米国の牽制にもかかわらず、同盟国の英、独、仏、伊を始め、欧州、アジア、アフリカ、中東など57カ国と予想以上に参加した。
これを米国の覇権の低下という見方をする解説も多いが、どちらにしても米国が焦っている事は間違いないだろう。
安倍首相の米国一途の思い入れを、米国は今更国粋主義者などと非難してもおられない。 TPPをなんとか成立に目指したいオバマ大統領にとっては、安倍首相をないがしろに出来なくなったのだろう。
上下院議会での演説も、米国議会に強い影響力を持つイスラエルの力を借りたと言う噂話も、納得できる話で「ホロコースト記念館」をわざわざ安倍首相は訪れている。
安倍、オバマの会見では、日米が中国の東シナ海での権益拡大を牽制する内容になっているが、一方でオバマ大統領は、慎重に中国に気を使ったアナウンスメントも行っている。
どちらにしても、アジア地域での中国の影響力拡大を、日米両政府の軍事力で抑制できるであろうか?
ところで、日本人の対中国の好感度は非常に低い。これはメディアの執拗な中国叩きの影響もあるだろうが、筆者が時々紹介している中村 繁夫氏の今回のコラムで、日本人の誤った思い入れを正している。
日本人は南京大虐殺などで、中国人は日本に敵意を持っていると思っているであろうが、現実は全然違うと言うのだ。
最近の中国人がカネの亡者になってしまったのは困った現実だが、中国人はモーレツな合理主義者で、国の為などという考え方はほとんどなく、自分を一番大事にして生きていると言う。
そうだと思う。来日する観光客などを見ていると、全くおおらかだ。それが余りにも大ぴらなので、日本人の顰蹙を買う原因でもあるのだろうが、、、
しかし、共産党一党支配の不合理さの現実に中国人は批判的であり、旧日本軍の行為などは、遥か昔の事件であり、もっと中国の現実を知るべきであると訴えている。
確かに、日本の十倍以上の人口を抱えた国家であるだけに、成長も歪みも大きく作用する訳で、日本に比べ、国全体がレバレッジをかけたような力が働く訳で、隣国として真剣に付き合う必要がある国であることは間違いない。
日本もそうだが、中国も、両国の政治家のプロパガンダに、国民は乗せられないように注意しなければならない。
(東洋経済オンラインより貼り付け)
中国人の大半は歴史問題など気にしていない
日本人は「本当の中国」を知らなさすぎる
中村 繁夫 :アドバンストマテリアルジャパン代表取締役社長
2015年04月28日
テレビ東京の北京支局特派員として、中国全土を取材し当局に拘束されること計21回。最新刊『騒乱、混乱、波乱! ありえない中国』(集英社新書)を著した小林史憲氏(現同テレビ『ガイアの夜明け』プロデューサー)と、同じく最新刊『中国のエリートは実は日本好きだ』(東洋経済新報社)を著した日本のレアメタル王・中村繁夫氏との異色対談。
戦後70年の節目を迎え、これから議論が高まるであろう「歴史問題」について、現地をよく知る両者に語ってもらった。
●「子どもの成績」までカネで買う社会に
中村:私は1980年代から中国とのビジネスを始めて、もう30年以上中国とは付き合ってきていますが、2000年代以降、豊かになってからの中国は本当に変わってしまった。
(中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン代表取締役社長 中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。)
とりわけ中国の拝金主義はひどい。何でもおカネ、おカネの世の中に変わってしまいました。
ビジネスや出世のためにおカネを使うのは、ある程度理解できますが、いまや子どもの学校の成績までおカネで買おうとする。学校の先生に賄賂を贈るのは当たり前になっています。
中国では10歳にも満たない子どもの頃から、そういう汚い世界を見てしまっている。
だから、子どもは子どもで、委員長になりたければお土産など物を配りまくっていると言います。完全に社会がおかしくなりますよ。
小林:担任の先生に賄賂や贈り物をしないと、その親の子はいじめられるという話は聞きますね。
日本ではちょっと考えられませんけれども。その金額も大きい。
中村:実は、うちの孫娘が上海の現地の学校に入って、最初は「日本鬼子」などと言っていじめられていましたが、負けん気の強い子で、おカネではなく「贈り物攻撃」をして人気者になり、クラス委員長にまでなりました(笑)。
もちろん、勉強も一生懸命やって成績でもいちばんになったのですが、一方で、孫娘が言うには、日本の学校の勉強は「生ぬるい」と。中国は小学校低学年から厳しい競争が始まっていると言っていました。競争というのは勉強面だけではなく、人の上に立つ競争も含めてです。
小林:中村さんが著書で述べられているように、中国のエリートは本当に日本が大好きで、それは子どもたちの間でも同じなんですね。中村さんのお孫さんの贈り物攻撃も、日本のお土産だったから効果が大きかったのではないでしょうか。
中村:都市部のエリートや富裕層は、みな日本好きだというのはわかりますが、農村部で暮らす人々や貧しい人たちはどうなのでしょうか。共産党の「反日教育」に洗脳されてはいないのでしょうか。
●本当の中国を理解しようとしていない日本人
小林:「反日」ではありませんね。内陸の農村に行くと、日本も含めて外国のことをよく知らないという人たちは存在しています。
(小林史憲(こばやし ふみのり)テレビ東京『ガイアの夜明け』プロデューサー。1998年同社入社。2008年から2013年まで北京支局特派員。これまで中国すべての省・自治区・直轄市・特別行政区を訪れ取材を刊行。現場主義を貫き、当局の拘束回数はなんと21回にのぼった)
ただ、彼らは「反日」とか「日本嫌い」とかではなく、単純に教育や情報がなく、「知らない」という人たちです。
都市部の人たちは、多くが「日本好き」だと言ってよいでしょう。なぜ、そんなにも「日本好き」なのかというと、その理由は明白です。中国の人たちは合理主義者なので、「自分たちの今の幸せが何よりも大切」という価値観で生きている人がほとんどです。
だから、いくら「反日教育」をすり込まれても、「愛国心」を第一に考える人は少ない。大事なのは「国」ではなく「自分」です。「自分の幸せのために、質の高い日本製品に囲まれて生活したい」と普通の中国人は考えるわけです。
中村:おっしゃるとおりで、日本人は本当の中国を理解していないんです。私は日中の問題は、日本側にも多分に非があると思っています。
本当の中国を見ようとしないで、雰囲気だけでものを言っている。中国はそれなりに日本に対して、ラブコールを発していますよ。旧正月には大好きな日本にやってきて、抱えきれないほどのお土産を買って帰ってくれる。そして、中国に帰れば、日本は本当によかったよと、友人たちに話をしてくれる。
彼らのメッセージを受け流してしまっているのは日本のほうだと思います。「集団で来られて迷惑だ」「マナーがなっていない」など、あらを探して文句を言ってばかりです。それがネトウヨと言われるような若い世代に多いことも気がかりです。
小林:中国でもネットの世界では愛国主義に燃え、「反日」を声高に叫ぶ者もおりますが、総じて見れば、日本のほうが陰湿な気がします。中国を悪く言わなければ、「売国奴」などとののしられたりします。日本のほうが、愛国心が強いとも言えるかもしれませんが、異なった意見を言いにくい社会には、ちょっとした気持ちの悪さを感じますね。
中村:たしかに、日本は同質社会で異分子を認めない社会。一方、中国はいい意味で個人主義です。だから、日本のような「村八分」の文化や体質もないですね。
小林:中国の人はおおらかというか、先に述べたように合理主義者です。なので、過去の歴史を教えられ、反日教育をすり込まれてきても、それと現実の豊かな生活とは別なものと考えようとします。そのことを日本人は知らない、知ろうとしないというのは中村さんのご指摘のとおりだと思います。
たとえば、私は取材で南京には何度も訪れていますが、料理はうまいし、街並みも古都の趣があるので、南京という街を非常に気に入っています。ただ、その話を日本の友人や知人にすると、みな一様に「えっ」という表情をします。
彼らの頭にはまず「南京大虐殺」がイメージされるのですね。「日本人が南京へ足を踏み入れて大丈夫なのか」といった感じです。ただ、南京の人たちにとって、南京大虐殺は過去の歴史のひとつになっています。
もちろん、戦争や歴史の話題になれば、彼らだって気分がいいはずはありませんが、普段から日本や日本人を恨んでいるような人は、極めて少ないでしょう。南京の人たちが日本人と話すときも、わざわざ戦争や歴史の話題を出してくることはほとんどないですしね。
●南京の人々の「苦難の歴史」をどこまで知っているか
中村:共産党の悪口は至るところで耳にしますけれども、日本を悪く言う人はほとんどいませんよね。ところが、日本人の多くは中国の人たちは、日本のやられたことをいつまでも恨んでいると思っている。中国のごく一部の人たちを除いては、歴史問題などまったく気にしていませんよ。
小林:南京を例に話せば、「日本にもひどいことをされたが、共産党にはもっとひどいことをされた」。「日本よりも共産党のほうが許せない」という人たちも少なからずいます。なにしろ、1958年から毛沢東が進めた大躍進政策では、犠牲になった国民の数は5000万人にも上るとも言われていますから。その多くが餓死です。戦争でもないのに、自国の指導者による経済政策の失敗によって、それだけの人が亡くなったわけですよね。
また、南京という街は、中華民国の時代に国民党政権の首都だったこともあって、「エリートの街」「知識人の街」として知られています。街路樹も綺麗に整備されているし、病院や大学も多い文化都市です。それゆえ、1966年に始まった文化大革命(文革)の際にも、多くの犠牲者を出すことになりました。
もちろん、だからといって日本がしたことが許されるわけではありません。南京大虐殺の犠牲者の数については諸説ありますが、南京に派兵した事実は間違いないですから。
私が言いたいのは、日本人にとっては、「南京」イコール「大虐殺」ですが、南京の人にとっては、それ以降にもさまざまな苦難の歴史があるということです。彼らはそれらすべてを乗り越えて、現在、目の前の豊かな生活を享受しようとしています。非常に現実主義であり、合理主義です。
しかし、日本にはこうした情報が伝わっていないためか、南京に進出する日本企業はほとんどないし、日本料理店も少ない。しかし、実際には現地の人たちは、中国のほかの街と同じように日本食を好きな人が多く、日本料理店をつくってほしいと思っているんです。
中村:日本人は、よく情報を集めないで、自分で自粛してしまうところがありますね。レアアース関係の人たちと中国各地を視察する際にも、「南京だけは行かなくともよいのでは」「あの街に工場をつくるなんて難しいよ」と言う人はけっこういますよ。
それでも私が強引に連れていって、夜に現地で宴会になると、皆、大歓迎してくれます。ところが宴もたけなわのところで、日本人のほうから「昔、ここで大虐殺をしてしまって」などと話をし始める。「なんで今、そんな話をするのか」とガッカリしてしまうことが何度もありました。
●実際に過去を問題にしている中国人は少ない
小林:私は南京に何度も行っていますが、一度も嫌な思いをしたことはないですよ。知り合いの日本人が「南京でタクシーに乗ったら運転手が虐殺の話を持ち出して非難された」と話していましたが、それは、「南京だから」ということではありません。
逆に全国どこでも、ありえる話ですね。私もほかの都市で同じような経験をしたことがありますが、まれにそういう人もいるというだけです。それに、タクシーの運転手は地方からの出稼ぎの人が多いですから、純粋に“南京人”というわけでもありません。いずれにしても、日本人が思っているような感じで、過去を問題にしている中国人は本当に少ないですね。
中村:歴史問題は、北京の共産党政権が政治的に利用しているだけなんですね。それを、日本のメディアやインテリたちがストレートに受け取りすぎるんです。
国内の不満のはけ口として、海外に敵をつくるというやり方は、カネもかけずに国民の意識を政権に向かせることができる、いわば常套手段なんです。ですから、日本は受け流せばよいものを、「なにくそ」と正面から受け止めてしまっている。これでは相手の思うつぼですよ。先ほど話に出ましたが、中国人のほとんどは、日本よりも共産党のほうが嫌いですし、過去にひどいことたくさんされたと思っています。
小林:中国の一般の人たちは共産党のことを信用していません。「日本憎し」などという前に、自分たちの政府に愛想をつかしてしまっているんです。だから、金持ちはどんどん海外に脱出している。それが、どうも日本にはうまく伝わらないというか、日本人は理解できないんですね。
思うに、日本の人たちは、どうしても自分たちと同じ「物差し」で外国を見てしまうきらいがあります。しかしながら、日本のように国民に一体感があって、平均的に教育水準も高いという国は、世界の中では極めて特殊で、実は中国などは日本とは真逆と言ってもいい国です。大陸で国土は広いし、民族も人口も多い。国民はバラバラで、公共よりも自分優先、格差もとんでもなく大きい。
ところが、同じ東アジアの国だし見た目も似ているということで、日本人はどこか自分たちと同じ感覚で中国を見てしまう。政府要人の発言は、中国国民全体の声だと思ってしまうし、一市民のインタビューを、中国国民全体の意見だと思ってしまう。しかし、そんなことは決してありません。日本人と同じ物差しで見ているかぎり、日本人は永遠に中国を理解できないと思います。
●日本はもっと「中国人の未来志向」を利用すべきだ
中村:少なくとも、中国の国民は日本よりも現実主義的で、「過去よりは未来」という志向が明確です。共産党政府がなんと言おうとも、日本に行きたい、日本製品が欲しいと思っています。
日本人は自虐思想というか、反省しすぎなんですね。相手が何とも思っていないことを、自分から言い出してしまう。黙っていれば何の問題もないのに、余計なひと言をいつも言ってしまうんです。反省の意を見せれば相手は好意を感じてくれると思うのが、世界を知らない日本人の悪いところです。
小林:日本のほうが、歴史問題をずっと引きずっている印象がありますね。過去はどんどん過去になり、世界は大きく動いているのに、自ら過去の問題を持ち出して墓穴を掘っている感じがします。日本はもっと中国人の未来志向というか、日本大好きという感情を利用すればいいと思います。もっと戦略的に、賢くなったほうがいいでしょう。
中村:日本人の多くが、自分たちは世界の先進国だという意識があると思いますが、グローバル化という部分では、日本は世界に遅れをとっています。むしろ、ずっと後発の中国にうまくやられている部分が大きいくらいです。グローバルな視点でものを考えるという面では、中国のほうがかなり先を行っていますよ。中国人は国家を信用していないから、昔からグローバル志向なんです。どんどん外国に出て行くし、現地に住み着いてコミュニティを作り上げてしまう。
アフリカなどがいい例ですが、中国は日本の先を行こうとあの手この手を打ち出してきています。今は家電製品や自動車など圧倒的に日本製品のほうがいいですが、このままだと10年、15年後にはどうなるかわかりませんよ。「性能9割、価格半分」の中国製品が市場を席巻してしまうかもしれません。
日本人はそれが面白くないから、「無理に背伸びをして」とか「中国の三流技術が世界で売れるわけがない」とか言っていますが、そんなことを言っている暇があるなら、自分たちも本気でグローバル戦略に取り組むべきです。日本人が本気でやれば、中国はまだまだ敵ではありません。いまからでも遅くない。そのことを強く意識すべきだと思いますね。
(貼り付け終わり)
アジアインフラ投資銀行(AIIB)の参加国が米国の牽制にもかかわらず、同盟国の英、独、仏、伊を始め、欧州、アジア、アフリカ、中東など57カ国と予想以上に参加した。
これを米国の覇権の低下という見方をする解説も多いが、どちらにしても米国が焦っている事は間違いないだろう。
安倍首相の米国一途の思い入れを、米国は今更国粋主義者などと非難してもおられない。 TPPをなんとか成立に目指したいオバマ大統領にとっては、安倍首相をないがしろに出来なくなったのだろう。
上下院議会での演説も、米国議会に強い影響力を持つイスラエルの力を借りたと言う噂話も、納得できる話で「ホロコースト記念館」をわざわざ安倍首相は訪れている。
安倍、オバマの会見では、日米が中国の東シナ海での権益拡大を牽制する内容になっているが、一方でオバマ大統領は、慎重に中国に気を使ったアナウンスメントも行っている。
どちらにしても、アジア地域での中国の影響力拡大を、日米両政府の軍事力で抑制できるであろうか?
ところで、日本人の対中国の好感度は非常に低い。これはメディアの執拗な中国叩きの影響もあるだろうが、筆者が時々紹介している中村 繁夫氏の今回のコラムで、日本人の誤った思い入れを正している。
日本人は南京大虐殺などで、中国人は日本に敵意を持っていると思っているであろうが、現実は全然違うと言うのだ。
最近の中国人がカネの亡者になってしまったのは困った現実だが、中国人はモーレツな合理主義者で、国の為などという考え方はほとんどなく、自分を一番大事にして生きていると言う。
そうだと思う。来日する観光客などを見ていると、全くおおらかだ。それが余りにも大ぴらなので、日本人の顰蹙を買う原因でもあるのだろうが、、、
しかし、共産党一党支配の不合理さの現実に中国人は批判的であり、旧日本軍の行為などは、遥か昔の事件であり、もっと中国の現実を知るべきであると訴えている。
確かに、日本の十倍以上の人口を抱えた国家であるだけに、成長も歪みも大きく作用する訳で、日本に比べ、国全体がレバレッジをかけたような力が働く訳で、隣国として真剣に付き合う必要がある国であることは間違いない。
日本もそうだが、中国も、両国の政治家のプロパガンダに、国民は乗せられないように注意しなければならない。
(東洋経済オンラインより貼り付け)
中国人の大半は歴史問題など気にしていない
日本人は「本当の中国」を知らなさすぎる
中村 繁夫 :アドバンストマテリアルジャパン代表取締役社長
2015年04月28日
テレビ東京の北京支局特派員として、中国全土を取材し当局に拘束されること計21回。最新刊『騒乱、混乱、波乱! ありえない中国』(集英社新書)を著した小林史憲氏(現同テレビ『ガイアの夜明け』プロデューサー)と、同じく最新刊『中国のエリートは実は日本好きだ』(東洋経済新報社)を著した日本のレアメタル王・中村繁夫氏との異色対談。
戦後70年の節目を迎え、これから議論が高まるであろう「歴史問題」について、現地をよく知る両者に語ってもらった。
●「子どもの成績」までカネで買う社会に
中村:私は1980年代から中国とのビジネスを始めて、もう30年以上中国とは付き合ってきていますが、2000年代以降、豊かになってからの中国は本当に変わってしまった。
(中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン代表取締役社長 中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。)
とりわけ中国の拝金主義はひどい。何でもおカネ、おカネの世の中に変わってしまいました。
ビジネスや出世のためにおカネを使うのは、ある程度理解できますが、いまや子どもの学校の成績までおカネで買おうとする。学校の先生に賄賂を贈るのは当たり前になっています。
中国では10歳にも満たない子どもの頃から、そういう汚い世界を見てしまっている。
だから、子どもは子どもで、委員長になりたければお土産など物を配りまくっていると言います。完全に社会がおかしくなりますよ。
小林:担任の先生に賄賂や贈り物をしないと、その親の子はいじめられるという話は聞きますね。
日本ではちょっと考えられませんけれども。その金額も大きい。
中村:実は、うちの孫娘が上海の現地の学校に入って、最初は「日本鬼子」などと言っていじめられていましたが、負けん気の強い子で、おカネではなく「贈り物攻撃」をして人気者になり、クラス委員長にまでなりました(笑)。
もちろん、勉強も一生懸命やって成績でもいちばんになったのですが、一方で、孫娘が言うには、日本の学校の勉強は「生ぬるい」と。中国は小学校低学年から厳しい競争が始まっていると言っていました。競争というのは勉強面だけではなく、人の上に立つ競争も含めてです。
小林:中村さんが著書で述べられているように、中国のエリートは本当に日本が大好きで、それは子どもたちの間でも同じなんですね。中村さんのお孫さんの贈り物攻撃も、日本のお土産だったから効果が大きかったのではないでしょうか。
中村:都市部のエリートや富裕層は、みな日本好きだというのはわかりますが、農村部で暮らす人々や貧しい人たちはどうなのでしょうか。共産党の「反日教育」に洗脳されてはいないのでしょうか。
●本当の中国を理解しようとしていない日本人
小林:「反日」ではありませんね。内陸の農村に行くと、日本も含めて外国のことをよく知らないという人たちは存在しています。
(小林史憲(こばやし ふみのり)テレビ東京『ガイアの夜明け』プロデューサー。1998年同社入社。2008年から2013年まで北京支局特派員。これまで中国すべての省・自治区・直轄市・特別行政区を訪れ取材を刊行。現場主義を貫き、当局の拘束回数はなんと21回にのぼった)
ただ、彼らは「反日」とか「日本嫌い」とかではなく、単純に教育や情報がなく、「知らない」という人たちです。
都市部の人たちは、多くが「日本好き」だと言ってよいでしょう。なぜ、そんなにも「日本好き」なのかというと、その理由は明白です。中国の人たちは合理主義者なので、「自分たちの今の幸せが何よりも大切」という価値観で生きている人がほとんどです。
だから、いくら「反日教育」をすり込まれても、「愛国心」を第一に考える人は少ない。大事なのは「国」ではなく「自分」です。「自分の幸せのために、質の高い日本製品に囲まれて生活したい」と普通の中国人は考えるわけです。
中村:おっしゃるとおりで、日本人は本当の中国を理解していないんです。私は日中の問題は、日本側にも多分に非があると思っています。
本当の中国を見ようとしないで、雰囲気だけでものを言っている。中国はそれなりに日本に対して、ラブコールを発していますよ。旧正月には大好きな日本にやってきて、抱えきれないほどのお土産を買って帰ってくれる。そして、中国に帰れば、日本は本当によかったよと、友人たちに話をしてくれる。
彼らのメッセージを受け流してしまっているのは日本のほうだと思います。「集団で来られて迷惑だ」「マナーがなっていない」など、あらを探して文句を言ってばかりです。それがネトウヨと言われるような若い世代に多いことも気がかりです。
小林:中国でもネットの世界では愛国主義に燃え、「反日」を声高に叫ぶ者もおりますが、総じて見れば、日本のほうが陰湿な気がします。中国を悪く言わなければ、「売国奴」などとののしられたりします。日本のほうが、愛国心が強いとも言えるかもしれませんが、異なった意見を言いにくい社会には、ちょっとした気持ちの悪さを感じますね。
中村:たしかに、日本は同質社会で異分子を認めない社会。一方、中国はいい意味で個人主義です。だから、日本のような「村八分」の文化や体質もないですね。
小林:中国の人はおおらかというか、先に述べたように合理主義者です。なので、過去の歴史を教えられ、反日教育をすり込まれてきても、それと現実の豊かな生活とは別なものと考えようとします。そのことを日本人は知らない、知ろうとしないというのは中村さんのご指摘のとおりだと思います。
たとえば、私は取材で南京には何度も訪れていますが、料理はうまいし、街並みも古都の趣があるので、南京という街を非常に気に入っています。ただ、その話を日本の友人や知人にすると、みな一様に「えっ」という表情をします。
彼らの頭にはまず「南京大虐殺」がイメージされるのですね。「日本人が南京へ足を踏み入れて大丈夫なのか」といった感じです。ただ、南京の人たちにとって、南京大虐殺は過去の歴史のひとつになっています。
もちろん、戦争や歴史の話題になれば、彼らだって気分がいいはずはありませんが、普段から日本や日本人を恨んでいるような人は、極めて少ないでしょう。南京の人たちが日本人と話すときも、わざわざ戦争や歴史の話題を出してくることはほとんどないですしね。
●南京の人々の「苦難の歴史」をどこまで知っているか
中村:共産党の悪口は至るところで耳にしますけれども、日本を悪く言う人はほとんどいませんよね。ところが、日本人の多くは中国の人たちは、日本のやられたことをいつまでも恨んでいると思っている。中国のごく一部の人たちを除いては、歴史問題などまったく気にしていませんよ。
小林:南京を例に話せば、「日本にもひどいことをされたが、共産党にはもっとひどいことをされた」。「日本よりも共産党のほうが許せない」という人たちも少なからずいます。なにしろ、1958年から毛沢東が進めた大躍進政策では、犠牲になった国民の数は5000万人にも上るとも言われていますから。その多くが餓死です。戦争でもないのに、自国の指導者による経済政策の失敗によって、それだけの人が亡くなったわけですよね。
また、南京という街は、中華民国の時代に国民党政権の首都だったこともあって、「エリートの街」「知識人の街」として知られています。街路樹も綺麗に整備されているし、病院や大学も多い文化都市です。それゆえ、1966年に始まった文化大革命(文革)の際にも、多くの犠牲者を出すことになりました。
もちろん、だからといって日本がしたことが許されるわけではありません。南京大虐殺の犠牲者の数については諸説ありますが、南京に派兵した事実は間違いないですから。
私が言いたいのは、日本人にとっては、「南京」イコール「大虐殺」ですが、南京の人にとっては、それ以降にもさまざまな苦難の歴史があるということです。彼らはそれらすべてを乗り越えて、現在、目の前の豊かな生活を享受しようとしています。非常に現実主義であり、合理主義です。
しかし、日本にはこうした情報が伝わっていないためか、南京に進出する日本企業はほとんどないし、日本料理店も少ない。しかし、実際には現地の人たちは、中国のほかの街と同じように日本食を好きな人が多く、日本料理店をつくってほしいと思っているんです。
中村:日本人は、よく情報を集めないで、自分で自粛してしまうところがありますね。レアアース関係の人たちと中国各地を視察する際にも、「南京だけは行かなくともよいのでは」「あの街に工場をつくるなんて難しいよ」と言う人はけっこういますよ。
それでも私が強引に連れていって、夜に現地で宴会になると、皆、大歓迎してくれます。ところが宴もたけなわのところで、日本人のほうから「昔、ここで大虐殺をしてしまって」などと話をし始める。「なんで今、そんな話をするのか」とガッカリしてしまうことが何度もありました。
●実際に過去を問題にしている中国人は少ない
小林:私は南京に何度も行っていますが、一度も嫌な思いをしたことはないですよ。知り合いの日本人が「南京でタクシーに乗ったら運転手が虐殺の話を持ち出して非難された」と話していましたが、それは、「南京だから」ということではありません。
逆に全国どこでも、ありえる話ですね。私もほかの都市で同じような経験をしたことがありますが、まれにそういう人もいるというだけです。それに、タクシーの運転手は地方からの出稼ぎの人が多いですから、純粋に“南京人”というわけでもありません。いずれにしても、日本人が思っているような感じで、過去を問題にしている中国人は本当に少ないですね。
中村:歴史問題は、北京の共産党政権が政治的に利用しているだけなんですね。それを、日本のメディアやインテリたちがストレートに受け取りすぎるんです。
国内の不満のはけ口として、海外に敵をつくるというやり方は、カネもかけずに国民の意識を政権に向かせることができる、いわば常套手段なんです。ですから、日本は受け流せばよいものを、「なにくそ」と正面から受け止めてしまっている。これでは相手の思うつぼですよ。先ほど話に出ましたが、中国人のほとんどは、日本よりも共産党のほうが嫌いですし、過去にひどいことたくさんされたと思っています。
小林:中国の一般の人たちは共産党のことを信用していません。「日本憎し」などという前に、自分たちの政府に愛想をつかしてしまっているんです。だから、金持ちはどんどん海外に脱出している。それが、どうも日本にはうまく伝わらないというか、日本人は理解できないんですね。
思うに、日本の人たちは、どうしても自分たちと同じ「物差し」で外国を見てしまうきらいがあります。しかしながら、日本のように国民に一体感があって、平均的に教育水準も高いという国は、世界の中では極めて特殊で、実は中国などは日本とは真逆と言ってもいい国です。大陸で国土は広いし、民族も人口も多い。国民はバラバラで、公共よりも自分優先、格差もとんでもなく大きい。
ところが、同じ東アジアの国だし見た目も似ているということで、日本人はどこか自分たちと同じ感覚で中国を見てしまう。政府要人の発言は、中国国民全体の声だと思ってしまうし、一市民のインタビューを、中国国民全体の意見だと思ってしまう。しかし、そんなことは決してありません。日本人と同じ物差しで見ているかぎり、日本人は永遠に中国を理解できないと思います。
●日本はもっと「中国人の未来志向」を利用すべきだ
中村:少なくとも、中国の国民は日本よりも現実主義的で、「過去よりは未来」という志向が明確です。共産党政府がなんと言おうとも、日本に行きたい、日本製品が欲しいと思っています。
日本人は自虐思想というか、反省しすぎなんですね。相手が何とも思っていないことを、自分から言い出してしまう。黙っていれば何の問題もないのに、余計なひと言をいつも言ってしまうんです。反省の意を見せれば相手は好意を感じてくれると思うのが、世界を知らない日本人の悪いところです。
小林:日本のほうが、歴史問題をずっと引きずっている印象がありますね。過去はどんどん過去になり、世界は大きく動いているのに、自ら過去の問題を持ち出して墓穴を掘っている感じがします。日本はもっと中国人の未来志向というか、日本大好きという感情を利用すればいいと思います。もっと戦略的に、賢くなったほうがいいでしょう。
中村:日本人の多くが、自分たちは世界の先進国だという意識があると思いますが、グローバル化という部分では、日本は世界に遅れをとっています。むしろ、ずっと後発の中国にうまくやられている部分が大きいくらいです。グローバルな視点でものを考えるという面では、中国のほうがかなり先を行っていますよ。中国人は国家を信用していないから、昔からグローバル志向なんです。どんどん外国に出て行くし、現地に住み着いてコミュニティを作り上げてしまう。
アフリカなどがいい例ですが、中国は日本の先を行こうとあの手この手を打ち出してきています。今は家電製品や自動車など圧倒的に日本製品のほうがいいですが、このままだと10年、15年後にはどうなるかわかりませんよ。「性能9割、価格半分」の中国製品が市場を席巻してしまうかもしれません。
日本人はそれが面白くないから、「無理に背伸びをして」とか「中国の三流技術が世界で売れるわけがない」とか言っていますが、そんなことを言っている暇があるなら、自分たちも本気でグローバル戦略に取り組むべきです。日本人が本気でやれば、中国はまだまだ敵ではありません。いまからでも遅くない。そのことを強く意識すべきだと思いますね。
(貼り付け終わり)
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