米国のシティバンクの日本支店が、個人取引業務から撤退すると言う情報が流れて一週間ほどになる。
およそ15年前くらいになるだろうか、筆者の娘がアメリカに留学した時の送金の窓口に便利だと、シティバンク銀座支店に口座を開いた時の事を思いだす。 あの頃は、バブルの影響もあり日本も活力があったなあと、改めて感慨深くなってしまった。
当時でも、娘からは留学生仲間には韓国人が多いと聞いていた。 今でも中国、韓国からの米国留学生数は日本を圧倒している。
そして現在、シティバンクは法人業務は継続するものの、個人取引業務では収益が上がらず、日本でのビジネスから撤退すると言う。
シティバンクそのものが、大きな損失を計上したりして、リストラを行わざるを得なかった事情もあろう。
しかし、海外の支店で撤退を決めた国々が発表されると、何故日本がその中に入るのだろうと不思議に思う位だ。 撤退する国々はコスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、パナマ、グアム、チェコ、エジプト、ハンガリー、ギリシャやスペインといった国々だ。
そしてアジアでは次の国々は個人業務を継続すると言う。 韓国、中国、香港、台湾、インド、インドネシア、タイ、シンガポールなど12市場は継続するとのことだ。
もちろん日本国内では法人業務を続けるとはいえ、個人業務を継続する上記のアジア諸国を見てみると、日本が急速に高齢化が進み、人口減少が著しい国であることが一目瞭然だ。
富裕層だけではなく、一般市民の所得が減少しつつあると、調査結果が出ているのであろう。
人口増加だけが唯一の原因ではないとしても、社会に活力を感じなくなってしまっているという事実は、こういう事からも認識すべきであるし、社会に活力を盛り返す政策を推進するのが政治家の役目でもある。
今回の消費税の引き上げにしても、膨れ上がった財政再建のためには必要であるとしても、やはり消費者の生活がしぼむような結果になるのであれば、これは失敗策と言わねばならない。
(日本経済新聞より貼り付け)
シティバンクも見放す? 日本空洞化論再燃も
米州総局編集委員・西村博之 公開日時2014/10/23 10:08
ニューヨーク市内の中心にあるグランド・セントラル駅そばに少し前、シティバンクの新店舗ができた。通勤途中に取引するビジネスマンで、いつも混んでいる。
シティに聞くと市内ではここ数年、ぽつぽつと支店を増やしてきた。利用客が多く、今でも新規の出店が理にかなう。収益を重視した「面から点」への戦略といえる。
シティグループが日本をはじめ、世界11カ国・地域で個人向け業務をやめると発表して1週間あまり。株価は発表当日に跳ね、月初と比べてもダウ工業株30種平均株価やJPモルガン・チェースなど他行をしのぐ。 市場はまずは前向きに評価した。
日本での受け止めはどうか。「余裕を失ったシティが撤退を余儀なくされた」との見方が定番のよう。 だが撤退を決めた国の顔ぶれをみると別の思いも頭をもたげる。
コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、パナマ、グアム、チェコ、エジプト、ハンガリー。いずれも世界経済の中では辺境の国々。シティは今年、ギリシャやスペインでも個人事業を売った。まだ世界3位の経済規模を誇る日本が、これらの国々とくくられたのは、ある種の衝撃ではある。
米国を含め個人業務を続けるのは24カ国・地域。経済や人口の伸びしろが大きい市場が目立つ。
アジアでは隣国の韓国で支店網を集約しつつ、業務自体は残す判断をした。ほかに中国、香港、台湾、インド、インドネシア、タイ、シンガポールなど12市場。中南米ではメキシコ、ブラジルに加え、アルゼンチンやベネズエラも含めた。欧州では英国やポーランドのほか米国と対立を強めるロシアまで入った。
コルバット最高経営責任者(CEO)は「企業を簡素にし、限りある経営資源を株主還元が最大となる先に向けたい」と説明した。店舗や人員、システムが必要な銀行業務は装置産業だ。個人業務は特にそうで、利益が出にくい。一方、国民が豊かになる国では個人金融の先行きは有望だ。ひとまず踏ん張って業務を続ける価値はあるはずだが、日本などはその基準から漏れたようだ。
所詮、一銀行の経営判断ではある。それでも国際展開が最も進んだ銀行の出方は、世界の金融界が国の将来性をどう見ているかの尺度になる。日本が見放された、との視点は筋違いだろうか。
バブル崩壊後の1990年代、日本では「金融空洞化」が言いはやされた。米欧の金融機関が相次いで縮小・撤退し、外国銘柄の上場も減り、金融取引も他のアジア市場に流れたためだ。
今回、空洞化論が聞かれないのはなぜか。シティを含めた米金融のつまずきが発端だからか。アベノミクスのおかげでジャパン・パッシング(日本素通り)がつかの間、一服したからか。
米金融の不振に目を奪われすぎては誤る。シティですら多くの指標でみて利益率などは高い。株主の要求が高いため不採算の日本から撤退したわけで、事業を保てないほど弱ったのではない。
むろん日本では邦銀の基盤が盤石だからこそシティが苦戦したという面はある。その邦銀は、シティも力を入れるアジア地域などで事業を広げつつあり、暗い話ばかりではない。シティが日本で法人業務を続けるのも、企業の活発な海外進出などにビジネス機会を見いだしている証しだ。
ただ、こうした動きがウォール街にくすぶる日本の将来への疑念を和らげるには、まだまだ時間がかかりそうだ。
(貼り付け終わり)
およそ15年前くらいになるだろうか、筆者の娘がアメリカに留学した時の送金の窓口に便利だと、シティバンク銀座支店に口座を開いた時の事を思いだす。 あの頃は、バブルの影響もあり日本も活力があったなあと、改めて感慨深くなってしまった。
当時でも、娘からは留学生仲間には韓国人が多いと聞いていた。 今でも中国、韓国からの米国留学生数は日本を圧倒している。
そして現在、シティバンクは法人業務は継続するものの、個人取引業務では収益が上がらず、日本でのビジネスから撤退すると言う。
シティバンクそのものが、大きな損失を計上したりして、リストラを行わざるを得なかった事情もあろう。
しかし、海外の支店で撤退を決めた国々が発表されると、何故日本がその中に入るのだろうと不思議に思う位だ。 撤退する国々はコスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、パナマ、グアム、チェコ、エジプト、ハンガリー、ギリシャやスペインといった国々だ。
そしてアジアでは次の国々は個人業務を継続すると言う。 韓国、中国、香港、台湾、インド、インドネシア、タイ、シンガポールなど12市場は継続するとのことだ。
もちろん日本国内では法人業務を続けるとはいえ、個人業務を継続する上記のアジア諸国を見てみると、日本が急速に高齢化が進み、人口減少が著しい国であることが一目瞭然だ。
富裕層だけではなく、一般市民の所得が減少しつつあると、調査結果が出ているのであろう。
人口増加だけが唯一の原因ではないとしても、社会に活力を感じなくなってしまっているという事実は、こういう事からも認識すべきであるし、社会に活力を盛り返す政策を推進するのが政治家の役目でもある。
今回の消費税の引き上げにしても、膨れ上がった財政再建のためには必要であるとしても、やはり消費者の生活がしぼむような結果になるのであれば、これは失敗策と言わねばならない。
(日本経済新聞より貼り付け)
シティバンクも見放す? 日本空洞化論再燃も
米州総局編集委員・西村博之 公開日時2014/10/23 10:08
ニューヨーク市内の中心にあるグランド・セントラル駅そばに少し前、シティバンクの新店舗ができた。通勤途中に取引するビジネスマンで、いつも混んでいる。
シティに聞くと市内ではここ数年、ぽつぽつと支店を増やしてきた。利用客が多く、今でも新規の出店が理にかなう。収益を重視した「面から点」への戦略といえる。
シティグループが日本をはじめ、世界11カ国・地域で個人向け業務をやめると発表して1週間あまり。株価は発表当日に跳ね、月初と比べてもダウ工業株30種平均株価やJPモルガン・チェースなど他行をしのぐ。 市場はまずは前向きに評価した。
日本での受け止めはどうか。「余裕を失ったシティが撤退を余儀なくされた」との見方が定番のよう。 だが撤退を決めた国の顔ぶれをみると別の思いも頭をもたげる。
コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、パナマ、グアム、チェコ、エジプト、ハンガリー。いずれも世界経済の中では辺境の国々。シティは今年、ギリシャやスペインでも個人事業を売った。まだ世界3位の経済規模を誇る日本が、これらの国々とくくられたのは、ある種の衝撃ではある。
米国を含め個人業務を続けるのは24カ国・地域。経済や人口の伸びしろが大きい市場が目立つ。
アジアでは隣国の韓国で支店網を集約しつつ、業務自体は残す判断をした。ほかに中国、香港、台湾、インド、インドネシア、タイ、シンガポールなど12市場。中南米ではメキシコ、ブラジルに加え、アルゼンチンやベネズエラも含めた。欧州では英国やポーランドのほか米国と対立を強めるロシアまで入った。
コルバット最高経営責任者(CEO)は「企業を簡素にし、限りある経営資源を株主還元が最大となる先に向けたい」と説明した。店舗や人員、システムが必要な銀行業務は装置産業だ。個人業務は特にそうで、利益が出にくい。一方、国民が豊かになる国では個人金融の先行きは有望だ。ひとまず踏ん張って業務を続ける価値はあるはずだが、日本などはその基準から漏れたようだ。
所詮、一銀行の経営判断ではある。それでも国際展開が最も進んだ銀行の出方は、世界の金融界が国の将来性をどう見ているかの尺度になる。日本が見放された、との視点は筋違いだろうか。
バブル崩壊後の1990年代、日本では「金融空洞化」が言いはやされた。米欧の金融機関が相次いで縮小・撤退し、外国銘柄の上場も減り、金融取引も他のアジア市場に流れたためだ。
今回、空洞化論が聞かれないのはなぜか。シティを含めた米金融のつまずきが発端だからか。アベノミクスのおかげでジャパン・パッシング(日本素通り)がつかの間、一服したからか。
米金融の不振に目を奪われすぎては誤る。シティですら多くの指標でみて利益率などは高い。株主の要求が高いため不採算の日本から撤退したわけで、事業を保てないほど弱ったのではない。
むろん日本では邦銀の基盤が盤石だからこそシティが苦戦したという面はある。その邦銀は、シティも力を入れるアジア地域などで事業を広げつつあり、暗い話ばかりではない。シティが日本で法人業務を続けるのも、企業の活発な海外進出などにビジネス機会を見いだしている証しだ。
ただ、こうした動きがウォール街にくすぶる日本の将来への疑念を和らげるには、まだまだ時間がかかりそうだ。
(貼り付け終わり)