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続・がんばれギリシャ!

2012-06-19 | 時評

ギリシャ議会の再選挙で「緊縮派」が勝利したことで、世界中の投資家・資本家をひとまず安堵させた。 

ただ、第一党となった「緊縮派」の保守政党は元来、先月の第一回選挙でも比較第一党にはつけていたのだから、純然たる逆転勝利ではない。従って、なぜ「緊縮派」が勝利したかよりも、なぜ「反緊縮派」は結局勝利できなかったかを考えるほうが妥当である。

一つは全く技術的なことだが、ギリシャの選挙制度では得票率トップの政党に50議席のプレミアムが与えられることから、これによって第一党が実際より多くの議席を得たこと。

より重要なことは、一国の総選挙としては前例がないほどの国際的な選挙大干渉が公然行われたこと。ギリシャがユーロ圏を離脱すればギリシャはもちろん、世界経済が崩壊する・・・云々の宣伝が繰り返され、「緊縮派」への国際資本主義総体での肩入れが行われた。こうしたことが前回選挙で躍進した急進左派の急進性をも失わせ、ユーロ離脱は争点とならなかったのだ。

その急進左派(急進左翼連合)は前回より議席を一定上積みしたものの、現状では旧来の共産党その他の左派政党に飽き足らない諸派の寄せ集めにすぎず、未来ビジョンに欠けることも、ギリシャ民衆をしてこの党を政権党につけることをためらわせた要因であろう。

もっとも、この党はエコロジーと社会主義を結びつけた「エコ社会主義」なる欧州左翼の新しい理念に基づく新しい政治潮流を象徴する党であり、こうした党派が野党第一党に座る例は欧州でも初めてである。ここにはギリシャの意外な先進性がみてとれる。

とはいえ、グローバル資本主義は債務危機に直接責任のないギリシャ民衆の暮らしを犠牲にして、また生き延びることになる。奸智に長けた資本主義オデュッセウスはひとまず表面上勝利したわけだが、しかしこれで落着ではない。まさにオデュッセウスよろしく、長い苦難の旅が待ち受けるであろう。

筆者がギリシャ債務危機渦中の昨年9月にものした拙稿「がんばれギリシャ!」の主旨はいまだ有効である。


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