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がんばれギリシャ!

2011-09-25 | 時評

がんばれ、という言葉を日頃は好まないのだが、ここではあえて使ってみたい。

ドル安に追い打ちをかけるユーロ安の要因でもある欧州経済危機の元凶として叩かれるギリシャ。たしかに、ギリシャはデフォルトもあり得る財政破綻国家となってしまった。ギリシャと言えば、ヨーロッパ文明の土台を提供した古代文明の発祥地だが、現代ギリシャはすっかり色褪せ、失敗国家になってしまったかに見える。

しかし、山岳地帯を背後に控えた沿岸部と数多くの小島を含む島嶼部から成るギリシャに資本主義的大発展を期待してもどだい無理な話。資本主義の土台となる大工業地帯を持つことができないからだ。工場を建てようにも、あまたある世界遺産級の遺跡をぶっ壊して工場をぶっ建てることも不可能。

あとは伝統の観光のほか、海運や金融等の商業分野で身を立てることだが、海運はともかく、金融立国は不安定で、いわゆるリーマン・ショック後のアイスランドのように一つの金融危機で吹っ飛んでしまう。ITもあり得るが、ギリシャ向きかどうか。

一方、ギリシャは労働運動も盛んで、政府の緊縮財政に反対する抗議デモも活発かつ急進的である。加えて、昼寝が基本的人権という国柄。エコノミックアニマル諸国では非常識な「昼寝権」も、休息の自由という本来すべての労働者にとってまさに基本的な権利の一環と考えれば決して非常識でもないわけだが、資本主義的経済成長にとっては足かせとなるだろう。

こうして資本主義世界では落第生のギリシャだが、それはエコノミックアニマルになり切れなかったというだけのこと。資本主義が限界をさらけ出している現在、次なるポスト資本主義の時代には、のんびり・ゆったりだが政治的には先鋭でもあるギリシャが今度は模範生として脚光を浴びるということもあり得ない話ではない。

そういう意味で、がんばれギリシャ!なのである。


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