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アメリカ憲法瞥見(連載第6回)

2014-09-05 | 〆アメリカ憲法瞥見

第二条(行政府)

 立法府に関する第一条に続く第二条は、行政府に関する規定である。大統領制の米国では行政府は大統領が単独で指揮する。大統領の下に閣僚及び閣僚級行政官をメンバーとするcabinetは存在するが、これは英国や日本のような議院内閣制の内閣とは全く異なり、大統領を補佐する助言機関にすぎないもので、憲法上にも規定が存在しない。

第一項

1 行政権は、アメリカ合衆国大統領に属する。大統領の任期は四年とし、同一の任期で選任される副大統領とともに、つぎの方法で選出される。

2 各々の州は、その立法府が定める方法により、その州から連邦議会に選出することのできる元老院議員および代議院議員の総数と同数の選挙人を任命する。但し、元老院議員、代議院議員および合衆国から報酬または信任を受けて官職にあるいかなる者も、選挙人に選任されることはできない。

3 選挙人は、各々の州で集会して、無記名投票により二名に投票する。そのうち少なくとも一名は、選挙人と同じ州の住民であってはならない。選挙人は、得票者と各々の得票数を記した一覧表を作成し、これに署名し認証した上で、封印をほどこして元老院議長に宛てて、合衆国政府の所在地に送付する。 元老院議長は、元老院議員および代議院議員の出席の下に、すべての認証書を開封したのち、投票を計算する。 最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が大統領となる。選挙人総数の過半数に達した者が二名以上あり、かつ、得票数が同数の場合は、代議院は直ちに無記名投票により、 その中の一名を大統領に選出しなければならない。過半数に達した者がいないときは、得票者一覧表の中の上位得票者五名の中から、同一の方法で代議院が大統領を選出する。但し、この方法により大統領を選出する場合には、投票は州を単位として行い、各州の議員団は一票を投じるものとする。この目的のための定足数は、全州の三分の二の州から一名または二名以上の議員が出席することを要し、大統領は全州の過半数をもって選出されるものとする。いずれの場合にも、大統領を選出した後に、選挙人の投票の最多数を得た者が、副大統領となる。但し、その場合に同数の得票者が二名以上あるときは、上院は無記名投票でその中から副大統領を選出しなければならない。

4 連邦議会は、選挙人を選任する時および選挙人が投票を行う日を定めることができる。投票日は合衆国全土を通じて同一の日でなければならない。

5 出生により合衆国市民である者、または、この憲法の成立時に合衆国市民である者でなければ、大統領の職に就くことはできない。年齢満三五歳に達していない者、および合衆国内に住所を得て一四年を経過していない者は、大統領の職に就くことはできない。

6 大統領が罷免され、死亡し、辞職し、またはその職権および義務を遂行する能力を失ったときは、副大統領が、大統領の職務を行う。連邦議会は、大統領と副大統領がともに罷免され、死亡し、辞職し、または執務不能に陥った場合について、法律により、いかなる官吏に大統領の職務を行わせるかを定めることができる。この官吏は、執務不能の状態が解消される時または大統領が選出される時まで、大統領の職務を行う。

7 大統領は、その職務に対して定期に報酬を受ける。報酬額は、その任期中増額または減額されない。大統領は、その任期中、合衆国または州から他のいかなる報酬も受けてはならない。

8 大統領は、その職務遂行に先立ち、つぎのような宣誓または宣誓に代る確約をしなければならない。「私は、合衆国大統領の職務を忠実に執行し、全力を尽して合衆国憲法を維持し、保護し、擁護する ことを厳粛に誓います(確約します)。」

 本条項は正副大統領の選出法を中心に、大統領の地位について規定している。米国大統領は建国時から州ごとに任命された選挙人を通じた間接選挙制によることでは今日まで不変であるが、第三号に定める具体的な選挙方法については修正第一二条及び二〇条をもって全面改正されている。改正の中核は、大統領二名連記・副大統領次点制を正副大統領個別投票制に改めたことである(詳細は修正条項の稿で後述する)。


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