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中国憲法評解(連載第13回)

2015-04-02 | 〆中国憲法評解

第三章 国家機構

第二節 中華人民共和国主席 

第七九条

1 中華人民共和国主席及び副主席は、全国人民代表大会がこれを選挙する。

2 選挙権及び被選挙権を有する年齢四五歳に達した中華人民共和国公民は、中華人民共和国主席及び副主席に選ばれることができる。

3 中華人民共和国主席及び副主席の毎期の任期は、全国人民代表大会の毎期の任期と同一とし、二期を超えて連続して就任することはできない。

 中国の政治体制は、社会主義的な会議体共和制を基本とするため、本来はソヴィエト幹部会(中国では全人代常務委員会)が集団的な元首となるはずのところ、現在の中国では一般的な共和制の例に従い、大統領的な単独執政官職として人民共和国主席(通称国家主席)が置かれている。
 国家主席は本質上儀礼的な職であり、憲法上国家元首とは明記されていない。ただ、支配政党である中国共産党の指導者(総書記)が国家主席を兼ねる慣例から、実質上は国家の最高指導者である。

第八〇条

中華人民共和国主席は、全国人民代表大会の決定又は全国人民代表大会常務委員会の決定に基づいて、法律を公布し、国務院の総理、副総理、国務委員、各部部長、各委員会主任、会計検査長及び秘書長を任免し、国家の勲章及び栄誉称号を授与し、特赦令を発布し、緊急事態への突入を宣布し、戦争状態を宣言し、並びに動員令を発布する。

第八一条

中華人民共和国主席は、中華人民共和国を代表し、国事活動を行い、外国使節を接受し、並びに全国人民代表大会常務委員会の決定に基づいて、海外駐在全権代表を派遣し、又は召還し、外国と締結した条約及び重要な協定を批准し、又は廃棄する。

 第八〇条及び八一条では、国家主席の権限が列挙されているが、いずれも諸国の国家元首が儀礼的に持つ権限であり、明記されないものの、国家主席が元首的地位にあることがわかる。

第八二条

1 中華人民共和国副主席は、主席の活動を補佐する。

2 中華人民共和国副主席は、主席の委託を受けて、主席の職権の一部を代行することができる。

 共和国副主席は諸国の副大統領に相当する副官職であり、主席以上に儀礼的な性格が強い。

第八三条

中華人民共和国主席及び副主席は、次期全国人民代表大会の選出する主席及び副主席が就任するまで、その職権を行使する。

第八四条

1 中華人民共和国主席が欠けた場合は、副主席が主席の職位を継ぐ。

2 中華人民共和国副主席が欠けた場合は、全国人民代表大会がこれを補充選挙する。

3 中華人民共和国主席及び副主席がともに欠けた場合は、全国人民代表大会がこれを補充選挙し、その補充選挙前においては、全国人民代表大会常務委員会委員長が臨時に主席の職位を代理する。

 本来の体制原理からいけば集団的元首の代表者たるはずの全人代常務委員長は、正副主席がともに欠けるという稀有の政治空白時において、はじめて主席職を代理するにすぎない。


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