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犯則と処遇(連載第25回)

2019-01-18 | 犯則と処遇

20 累犯問題について

 財産犯、中でも窃盗は古くから、短期間で同一または同種の犯行を繰り返す累犯が多く、また放火犯や一部の性的事犯、薬物事犯にも、累犯がしばしば見られる。こうした累犯問題こそが、刑罰の目的を教育に求めんとする教育刑論を台頭させた要因でもあった。
 しかし、教育刑論も刑罰制度が本質的に持つ応報的な要素を完全に払拭できず、限界を露呈してきたことから、「矯正悲観論」を生み出し、再び応報刑主義への反動的揺り戻しを招く一因となった。

 たしかに、累犯者の中には矯正困難な者も含まれていることから、矯正悲観論の象徴となりやすいことはたしかだが、それは矯正科学の遅れのゆえであって、そうした遅れをもたらしているのもまた、刑罰制度なのである。その意味で、累犯問題は刑罰制度自身の影法師でもある。

 その点、「犯則→処遇」体系の下では、格別の累犯対策というものは必要としない。それは、更新付きターム制を採る「矯正処遇」の制度自体に累犯対策が組み込まれているからである。すなわち対象者の再犯の恐れがなお除去されていないと判断されれば矯正タームが更新され、実効性のある科学的な矯正プログラムが課せられるからである。

 特に、窃盗を執拗に繰り返す者に対しては、精神疾患の一つに位置づけられている窃盗症の治療が必要であるし、放火累犯者も病的な放火癖の治療が必要なケースが多いと考えられる。こうした病的累犯者に対しては、第三種矯正処遇Bを課して、治療的な集中的処遇を徹底する必要がある。
 なお、性的累犯者の場合も、行動療法などを含めた第三種矯正処遇の対象となるが、前にも述べたとおり、専門医の厳正な診断に基づく薬物による化学的去勢措置もやむを得ない場合があるだろう。 

 総じて、累犯に対しては、矯正処遇を終了した後の更生援護も重要な課題となる。そうした更生援護の充実・成功をもたらすには、社会の構造が大きく変わらなければならない。
 すなわち、更生を妨げ、人を再犯に走らせる究極的要因となる犯歴者への差別を克服し、かつライフコースによって制約されず、人生のやり直しがより容易となるような社会体制を構築することである。


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