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「軍部」復活元年か

2015-02-22 | 時評

政府が自衛隊発足以来の原則であった「文官統制」を廃止して、制服自衛官幹部が直接に防衛大臣を補佐する体制に転換する防衛省設置法改正法案を3月国会に上程する方針を固めたという。

文官統制は、自衛隊を指揮する内閣総理大臣や防衛大臣に文民を当てるだけでなく、その下のレベルでも防衛大臣への進言などの補佐権限は防衛省の文民官僚の任務とし、文民が武官を統制する仕組み(文民統制)の一部を成してきた。

旧憲法下の軍部は統帥権独立の原則に基づき、文民政府から独立した部門を構成したため、戦前にはクーデターで軍事政権を樹立するまでもなく、文民政府を操縦する形で軍部支配を実現することができた。このことが軍部独走の一因ともなったという反省から、戦後自衛隊では文民大臣が文官を介して武官を指揮するという二重の文民統制が構築されてきたのであった。

それを撤廃すれば、大臣が文民であっても、幕僚長ら制服自衛官の意向が文官を介さず直に大臣に反映されることで、文民統制は大きく揺らぐことになる。

その大臣にしても、退職自衛官は「文民」とみなせるとの形式解釈に基づき、自衛官出身者が防衛大臣に就任する前例はすでに存在しているので、自衛官出身の防衛大臣、さらには現時点では前例のない自衛官出身の内閣総理大臣の時に文官統制が存在しなければもはや文民統制はないも同然である。

ところが、制服自衛官たちは文官統制では「背広組が制服組より上位になる」―それがまさに文民統制の本旨なのだが―として敵視し、その撤廃を宿願としてきた。今回の改正法案もOB政治家らを通じた10年来の「運動」の成果である。すでに自衛隊は議会政治を通じて政治的な力を備えているのだ。

併せて自衛隊の部隊運用(作戦遂行)を制服組主体とする「一体的運用」も導入することで、制服組は文民統制を骨抜きにして大きな自立性を獲得し、事実上の「軍部」としての政治的な発言力も持つに至るだろう。並行して進められている広範囲にわたる集団的自衛権の具体化が実現すれば、「軍部」独走の再現も現実のものとなる。

自民党改憲案には国防軍の保持という明白な再軍備宣言が書き込まれていることからして、今般改正法が今年度中に可決成立すれば、後から振り返って2015年は「軍部」復活元年として記憶されることになるかもしれない。


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