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共産法の体系(連載第5回)

2020-01-11 | 〆共産法の体系[新訂版]

第1章 共産主義と法

(4)法の活用②
 
法の活用ということに関連して、法の解釈という問題がある。立法された法は施行後、実際に適用されるようになるが、法の文言にはたいていの場合、解釈の余地が残されるため、適用の前提として、解釈の問題が生じる。誰が公式の法解釈権を持つかという問題である。
 こうした有権解釈の権限は、立法府と分離された司法府(裁判所)に与えることが今日の世界の趨勢となっている。司法府の独立性に関しては、国により程度差があり、司法府が法の適用・執行に当たる行政府に制度上または事実上従属してしまう例もあるが、表面上多くは「司法(権)の独立」が標榜されている。
 しかし、立法された法の解釈だけを切り離し、「独立」した司法府がなぜ専権的に判断できるのか、言い換えれば、なぜ立法府は法の解釈に関して無権利なのかは十分に説明できない。法の解釈は、法の形式的な適用とは異なり、第二の立法に等しい実質を持つことを考慮すると、この問題はいっそう解決が困難である。
 その点、共産法の体系においては、法の解釈も、法の適用と同様、立法機能を持つ民衆会議が一貫して持つ権限である。多くの場合、民衆会議の下部機関が法を適用する前提として法を解釈することになる。しかし、法を適用された市民が異議を申し立てた場合、法の解釈をめぐって争いが生じることがある。
 そうした場合、中立的な機関が法の解釈の当否に関して有権的な判断を示す必要を生じるが、共産法では独立の司法府というものは観念されない。上述したとおり、法の解釈も、立法に当たった民衆会議の権限に包摂されるからである。立法者である民衆会議が自ら立法した法の解釈権限をも持つという一貫性のあるプロセスである。
 ただし、法の解釈如何が争われるのは、何らかの法的紛争が生じている場合であるから、民衆会議の通常の立法プロセスとは別に、中立性と専門性とを備えた民衆会議の内部機関が公平に裁定する必要がある。
 そこで、法の解釈だけに専従する民衆会議の常任委員会として、法理委員会が常置される。法理委員会の判事委員は法解釈に専従する法律専門家であるが、いわゆる裁判官ではなく、民衆会議においても議決権のない特別代議員の地位を持つ代議員の一員となる。
 ただし、共産法体系における最高規範である民衆会議憲章の解釈をめぐる問題に関しては、法理委員会とは別に、憲章の改廃発議権を持つ常任委員会(憲章委員会)に解釈権を専属させることが望ましいが、その詳細に関しては、該当する章にて改めて扱うことにする。


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