ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

共産教育論(連載第46回)

2019-04-09 | 〆共産教育論

Ⅷ 課外教育体系 

(4)成年者向け私的学習組織  
 半日労働(4時間労働)が基本となる共産主義社会では、終日労働から解放された成年者の生涯教育の機会が実質的に保障されるが、Ⅵで見たように、そこでは多目的大学校と専門職学院が大きな役割を果たすことになる。
 このうち、すべてが公立の多目的大学校とは異なり、専門職学院には私立も認可されるが、専門職学院の認可基準は厳しく、カリキュラムや教員の配置に関する厳格な基準をクリアしなければならないため、私立の専門職学院といえども公的性格が強く、ここで言う私的学習組織には該当しない。 
 なお、学科試験は課さないものの、段階的な面接を通じた選抜的なアドミッションが行なわれる専門職学院の「受験」対策的な予備校が設立される可能性は否定されないが、それらは民間有志が運営する私塾的な組織にとどまる。
 一方、多目的大学校と専門職学院ではカバーし切れない種々の専門技能の習得に特化した学校としての専門技能学校にも認可基準はあるが、その基準は比較的緩やかで、設立・運営者の自由裁量の余地が広いため、これら専門技能学校は成年者向け私的学習組織の中心的なものとなるであろう。  
 それ以外の成年者向け私的学習組織としては、学術研究センターが研究活動の社会還元を目的として一般市民向けに設ける無料市民講座がある。この場合、センター自体が公立であっても、任意の市民講座は私塾のような私的学習組織の性格を持つ。  
 その他、民間人が各種文武の特技などを伝授するために私塾を設けることも自由であるが、これは未成年者向けの習い事を目的とする私的学習組織の成年者版のようなものとなるだろう。  
 ちなみに、政治思想の学習を目的とする政治塾のようなものもある種の私的学習組織として設立は自由であるが、社会に働きかける具体的な政治活動を伴う場合は、学習組織を超えた政治結社とみなされることになる。
 なお、共産主義社会に特有の代議制度である民衆会議の代議員免許試験対策の予備校のようなものが設立される可能性もあるが、緩やかな免許試験にすぎず、選抜試験ではないため、社会的ニーズは限定的であろう。


コメント    この記事についてブログを書く
« 共産論(連載第25回) | トップ | 共産教育論(連載第47回) »

コメントを投稿