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犯則と処遇(連載第45回)

2019-05-02 | 犯則と処遇

38 矯正保護委員会

 真実委員会の審決では、委員会が証拠から認定した事実関係だけが示され、特定された犯行者に対する処遇については言及されない。そこで、真実委員会の審決はいったん人身保護監に提出され、人身保護監は犯行者として特定された者から意見を聴取したうえ、事実認定に不服がなければ事案を矯正保護委員会に送致する(不服がある場合の対応手段については後述する)。

 矯正保護委員会は、真実委員会とは完全に別個の司法機関であって、いずれも矯正員や保護観察員、矯正科学の研究者等、矯正や保護観察に関する知見を有する三人の委員から構成される。その任務は、真実委員会が認定した事実をもとに、犯行者として特定された者に対する具体的な処遇を決することにある。  
 このように、矯正保護委員会は矯正保護の専門家のみで構成された司法機関であり、犯行者の犯行内容や犯歴、人格特性、心身の病歴などを科学的に審査した上で、最適の処遇を決定する。  
 
 矯正保護委員会の審議は非公開で行なわれるが、被審人は法律家または矯正保護に関する専門知識を有する有識者を付添人として補佐させ、自らまたは付添人を通じて意見を述べることができる。

 矯正保護委員会は審議に際して、真実委員会で採用された証拠を利用することができるが、処遇を決するのに必要な限度で、新たに鑑定を実施したり、新たな証人を喚問するなどして、新証拠を収集することができる。
 ただし、真実委員会が認定した事実関係に変更を加えることはできない。矯正保護委員会はあくまでも真実委員会の事実認定を前提とした処遇の決定に特化した機関だからである。  

 矯正保護委員会の決定は委員会と被審人との合意という形で示され、被審人の意に反して強制されることはない。ただし、意を尽くして協議しても合意に達しない場合、矯正保護委員会は職権で決定を下すことができるが、その決定に不服のある被審人は、不服審査を請求することができる(詳細は後述する)。

 ちなみに、矯正保護委員会は犯行者に対する処遇の決定のほかに、決定した個々の処遇の実施に関する当事者からの苦情審査も行なう。例えば、矯正員による違法または不当な処遇の訴えがあれば、その内容を審査し、問題点を見出したときは、改善命令を発することができる。その点で、矯正保護委員会は矯正保護に関するオンブズマン的な役割も果たすことになる。


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