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共産法の体系(連載第35回)

2020-05-14 | 〆共産法の体系[新訂版]

第7章 争訟法の体系

(1)共産主義的争訟法
 貨幣経済の究極的な権化としての資本主義社会では、貨幣をめぐる紛争・犯罪が絶え間なく発生するため、犯罪を含む広い意味での争訟を迅速かつ強制的に裁定するための強力な司法制度が不可欠となる。通常それは裁判所と呼ばれる権威主義的な権力機関を通じて行なわれ、裁判手続の細目を定めた各種の訴訟法が存在している。
 それに対して、貨幣経済が廃される共産主義社会においては、貨幣をめぐる紛争・犯罪は当然にも消滅する。とはいえ、およそ人間社会に争いごとは付きものであるとすれば、なお不可避的に発生する争訟を公的に処理する司法権力の必要性自体がなくなることはない。
 しかし、そこでは司法=裁判ではある必然性はもはやなく、従って訴訟を権威的に裁定する裁判所という制度も必要なくなる。共産主義的争訟を解決するための司法手続はより柔軟かつ非権威主義的なもので足り、かつそのような手続のほうが解決にとって効果的でもある。
 こうした共産主義的司法手続のおおまかなイメージとしては、現行裁判制度の下でも補充的に実施されている非訟手続や裁判外紛争解決手続(ADR)としての諸制度と類似したものを想起すればよいかもしれない。
 このように司法=裁判という定式によらない司法手続の根拠となる法律を総称して「争訟法」と呼ぶことができるが、もとよりそれは一本の法律ではなく、争訟の種類ごとに大別され、それぞれに個別の手続法が定められる。
 それらを列挙すれば、市民法争訟を扱う市民司法、経済法争訟を扱う経済司法、犯則行為の解明及び処遇を扱う犯則司法、人権救済及び対公権力不服事案を扱う護民司法、公務員の弾劾事案を扱う弾劾司法、違憲審査を含む法令の解釈を扱う法令司法の六分野に大別される。続く(2)以下の各節では、この六つの各司法分野について個別に見ていくことにする。


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