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アメリカ憲法瞥見(連載第3回)

2014-08-08 | 〆アメリカ憲法瞥見

第一条(立法府)

第五項

1 両議院は、各々その議員の選挙、選挙の結果および資格に関して判定を行うものとする。各々の院は、その議員の過半数をもって議事を行うに必要な定足数とする。定足数に満たない場合においても、 翌日に延会とし、各々の院の定める方法および制裁によって、欠席議員の出席を強制することができる。

2 両議院は、各々その議事規則を定め、秩序を乱した議員を懲罰し、三分の二の同意によって議員を除名することができる。

3 両議院は、各々その議事録を作成し、その院が秘密を要すると判断する部分を除いて、随時これを公表しなければならない。各院の議員の表決は、いかなる議題についても、出席議員の五分の一の請求があれば、これを議事録に記載しなければならない。

4 連邦議会の会期中、いずれの院も、他の院の同意がなければ、三日間を越えて休会し、またはその議場を両院の開会中の場所から他へ移すことはできない。

 本項から第七項までは、議事手続や議院の内部統制、議員の特権等に関する細目的な規定が続く。内容的には、日本国憲法の規定にも影響を及ぼしており、類似の条項が見える。
 本項は、議院の資格争訟裁判や懲罰権のような各議院の自立的な内部統制権、定足数、議事録作成・公開義務、休会などの諸規定の雑多な集まりである。二院制とはいえ、各院はこれらの手続きをそれぞれ別個に独立して遂行するが、三日を越える長期の休会と議場移転に関しては他院の同意を要することとして、二院の協調性を保持しようとしている。

第六項

1 元老院議員および代議院議員は、その職務に対し、法律の定めるところにより、合衆国の国庫から支出される報酬を受ける。両院の議員は、叛逆罪、重罪および社会の平穏を害す罪を犯した場合を除いて いかなる場合にも、会期中の議院に出席中または出退席の途上で、逮捕されない特権を有する。議員は、議院で行った演説または討論について、院外で責任を問われない。

2 元老院議員および代議院議員は、その任期中に新設または増俸された合衆国の文官職に任命されることはできない。合衆国のいかなる官職にある者も、その在職中に、いずれの議院の議員たることはできない。

 本項第一号は、連邦議会議員の歳費請求権、不逮捕特権、免責特権という三つの古典的特権に関する規定である。日本国憲法にも類似の規定が見られるが、不逮捕特権に関して、米憲法では叛逆罪などでの例外がかなり広く認められているうえ、議院に出席中または出退席の途上の不逮捕に限られ、議員の地位が不安定な点はより古典的である。 

第七項

1 歳入の徴収を伴うすべての法律案は、さきに代議院に提出しなければならない。但し、元老院は、他の法律案の場合と同じく、これに対し修正案を発議し、または修正を付して同意することができる。

2 代議院および元老院を通過したすべての法律案は、法律となるに先立ち、合衆国大統領に送付されなければならない。大統領は、承認する場合はこれに署名し、承認しない場合は、拒否理由を付してこれを発議した院に返付する。その院は、拒否理由すべてを議事録に記載し、法律案を再び審議する。再議の結果、その院が三分の二の多数でその法律案を可決したときは、法律案は大統領の拒否理由とともに他の院に送付される。他の院でも同様に再び審議し、三分の二の多数で可決したときは、法律案は法律となる。この場合にはすべて、両議院における投票は点呼表決によるものとし、法律案に対する賛成者および反対者の氏名は、各々の院の議事録に記載されるものとする。大統領が法律案の送付をうけて十日以内(日曜日を除く)に返付しないときは、その法律案は、大統領が署名した場合と同様に法律となる。但し、連邦議会が休会に入り、法律案を返付することができない場合は、この限りでない。

3 両議院の同意を要するすべての命令、決議または表決(休会にかかわる事項を除く。)は、これを合衆国大統領に送付するものとし、大統領の承認を得てその効力を生ずる。大統領が承認しないときは、法律案の場合について定める規則と制限に従い、元老院および代議院の三分の二の多数をもって、再び可決されなければならない。

 歳入の徴収を伴うすべての法律案について代議院の先議権を規定する本項第一号は、代議院優先主義の最も明瞭な現れである。とはいえ、法律案の修正権を握る元老院は、第三項の弾劾裁判権と合わせ、チェック機関として相当の重みを持っており、単なる名誉機関ではない。
 第二号及び第三号は法律案その他の重要議案に対する大統領の事前承認/拒否権に関する規定である。議会中心主義ゆえ、合衆国大統領は議案の提出権を持たない反面、事前承認/拒否権を通じて自己の政策を立法府に反映させることができる。しかし、大統領が拒否権を行使しても、議会は特別多数決で再可決することで立法府の意思を貫徹することができる。このようにして、立法府と行政府の相互牽制を効かせる仕組みであるが、それは時として両府間の衝突と政治閉塞を招くことにもなる。


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