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リベラリストとの対話―「自由な共産主義」をめぐって―(17)

2015-04-12 | 〆リベラリストとの対話

15:完全自由労働制について③

リベラリスト:共産主義的な完全自由労働制では、労働時間の大幅な短縮が実現し、各自の趣味や夢の実現に充てることのできる自由時間を獲得できるとまさに夢のようなことを書いておられますね。

コミュニスト:そのとおりです。どこまで時短できるかはわかりませんが、うまくいけば4時間労働(半日労働)も可能かと考えています。これぞ「自由な共産主義」の真骨頂です!

リベラリスト:半日働いて、半日遊べるのですね。たしかに素晴らしい!ですが、それではすべてが部分的なパート労働になりかねません。

コミュニスト:その点は、ご心配に及びません。前回まで議論しましたように、賃労働は存在しないのですから、資本主義的なパート労働とは異なり、低賃金に苦しむことはないのです。資本主義的労働では賃金切り下げの手段となる恐れが拭えないワークシェアリングが、そうした用語も不要なほど一般化するのです。

リベラリスト:ワークシェアリングは、資本主義の下でも特に過密労働が行われやすい分野では時短の手段として導入されるべきだと思いますが、それが一般化するとなると余剰人員が恒常化し、生産効率は低下するのではないでしょうか。

コミュニスト:資本主義が「余剰人員」を極度に恐れる理由は、働かない労働者に賃金を支払うのは不合理だからというのでしょう。しかし、それも賃労働制が廃されれば、心配要らないわけです。労働力というものは、常にぎりぎりの人員に切り詰めるよりも、少し余裕をもって配置するほうが労災や重大ミスの防止のためにも合理的でしょう。

リベラリスト:なるほど。とはいえ、労働者の士気や生産性が果たして半日労働のような半端労働で維持できるかどうか、私にはなお確信が持てないのですね。

コミュニスト:一日通しで働きづめるという労働習慣に慣れ切ったあなたがたアメリカ人や私ども日本人の時間感覚では、確信が持てないのも理解できます。ですが、同じ資本主義を共有していても、ゆったりした時間感覚で生きている地中海域諸国の人たちなら、理解してくれるような気がしますね。

リベラリスト:なるほど、それで「がんばれ、ギリシャ!」ですか・・・。実は私の母方祖先はギリシャ移民なのですが、たしかに地中海系のお昼寝付き資本主義はアメリカの貪欲資本主義や日本の勤勉資本主義とは文化的にも異なるようですね。

コミュニスト:文化の相違もあるかもしれませんが、それだけではなく、政策の相違でもあります。資本蓄積を国を挙げて追求する国と資本蓄積はほどほどにして人間的な生活を尊重する国の違いです。その意味では、地中海系資本主義は共産主義への架け橋と言えるかもしれません。

リベラリスト:「人間の顔をした資本主義」ということですか。人間の顔をしすぎて、国際経済危機を引き起こさなければいいですが。

※本記事は、架空の対談によって構成されています。

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