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アメリカ憲法瞥見(連載第9回)

2014-10-02 | 〆アメリカ憲法瞥見

第四条(連邦条項)

 第四条は、連邦と州及び州と州との間の関係性を定める規定が集められている。一見して無味乾燥な瑣末規定のようであるが、元は独立した「国」であった州が結合してできた連邦国家アメリカでは、このような関係性規定は連邦制を維持していくうえで必須のものである。

第一項

各々の州は、他のすべての州の一般法律、記録および司法手続に対して、十分な信頼と信用を与えなければならない。連邦議会は、一般的な法律により、これらの法律、記録および司法手続を証明する方法ならびにその効果につき、規定することができる。

 本条項は、州同士の相互尊重を定めた規定である。州間での無用の紛争を避けて、連邦の融和を図る趣旨である。元来は法律も異なる独立国が結合したアメリカならではの規定と言えよう。

第二項

1 各々の州の市民は、他州において、その州の市民が享有するすべての特権および免除を等しく享有する権利を有する。

2 いずれかの州において反逆罪、重罪その他の犯罪につき告発された者が、裁判を逃れて他州で発見された場合には、その逃亡した州の行政府の要求があれば、当該犯罪につき裁判権を有する州に移送するために、この者を引き渡さなければならない。

3 一州において、その州の法律によって役務または労務に服する義務のある者は、他州に逃亡しても、その州の法律または規則によってかかる役務または労務から解放されるものではなく、当該役務または労務を提供されるべき当事者からの請求があれば、引き渡されなければならない。

 本条項は、各州における市民の取扱いの平等性・統一性を定めた規定である。第二号は国家間の逃亡犯罪人引渡条約に相当するもので、ここにも本来は独立国の結合である合衆国の成り立ちが見て取れる。第三号は逃亡奴隷引渡条項であるが、この規定は後に奴隷制を禁じた修正第十三条により失効している。

第三項

1 連邦議会は、新しい州がこの連邦へ加入することを認めることができる。但し、連邦議会および関係する州の立法府の同意なしに、既存の州の領域内に新州を形成し、または二つ以上の州もしくはその一部を合併して一つの州を形成することはできない。

2 連邦議会は、合衆国に属する領有地その他の財産を処分し、これに関する必要ないっさいの準則および規則を定める権限を有する。この憲法中のいかなる規定も、合衆国または特定の州の請求権を損なうように解釈されてはならない。

 第一号は、新州創設に関する規定である。その際、既存州を分割したり、合併したりするには、連邦議会と関係州議会双方の同意を条件としている。これは、連邦主導での州の分割・合併を禁ずる趣旨である。実際のところ、新州の加入は、1959年のアラスカ、ハワイ両海外州の加入が最後である。第二号は、合衆国直轄地を含む連邦財産の処分に関する規定である。連邦と州は財産も分別管理される。

第四項

合衆国は、この連邦内のすべての州に対し共和政体を保障し、侵略に対し各州を防衛する。合衆国は、州の立法府または(立法府が集会できないときは)行政府の要請があれば、州内の暴動に対して各州を防護する。

 本条項は各州の政体を共和制で統一すると同時に、合衆国に各州防衛および州の要請に基づく暴動鎮圧の任務を課している。ここで、暴動鎮圧に際しても、州の同意なく連邦が独自に治安部隊を投入することが禁じられているのも、州の自治を尊重する趣旨である。


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