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近未来日本2050年(連載第3回)

2015-05-16 | 〆近未来日本2050年

一 政治社会構造(続き)

「議会制ファシズム」の政治制度
 ここで、「議会制ファシズム」の政治制度について概観しておこう。「議会制ファシズム」はまさに議会制の形式的枠内で成立するファシズムであるがゆえに、中央及び地方の議会制度自体は維持される。
 しかし、中央の国会に関しては、一院制に移行しているだろう。この点、現時点でも「決められる政治」の実現のため、一院制移行を唱える改憲論者もあるように、究極の「決められる政治」であるファシズムは現行のような対等型二院制には適しない。
 そこで、二院制を廃し、定数600程度の一院制国会に一元化する改憲が実現しているだろう。あるいは二院制維持論に一定譲歩して、衆議院の優越原則を徹底した形で(例えば法律案についても衆議院先議制を拡大し、衆参両院不一致の場合、一定期間経過後の衆院の単純再可決で法案成立とするなど)、参議院を存置するといった妥協的制度が導入されていることもあり得る。
 いずれにせよ、国会を基盤とする議院内閣制は存続しているが、内閣総理大臣の指導性を強調する「官邸主導」の権威主義的な内閣制であり、内閣官房の機能はいっそう強化されているだろう。
 一方、天皇制も存続しているが、2050年時点の天皇は憲法上も明確に国家元首と位置づけられており、皇室家政機関である宮内庁の長官職は官僚でなく、国務大臣を当てる戦前の旧制が部分的に復活している。
 この点、本来ファシズムは共和制を本則とするが(論理必然ではない)、議会制ファシズム下の天皇は明治憲法下のような神権天皇ではなく、世俗君主的存在である。その意味で天皇の位置づけは名誉職大統領的なものとなるが、それによりかえってファシズムが成立しやすい共和的土台が整うことにもなるだろう。
 地方制度に関しては、都道府県制が廃され、一都道州制に移行しているだろう。すなわち、全国の広域自治体は東京都並びに北海道及び複数の州に再編されている。権限が特別に強い東京都を除くと、道州は中央から一定の権限を委譲されるものの、限定的であり、かえって中央集権制は強化されているだろう。
 広域自治体の数が都道府県時代より削減される分、ファシスト与党が一都道州政治を掌握しやすくなり、知事の大半が標榜上の無所属を含め、ファシスト与党系の陣容となっている。
 市町村レベルでは、過疎により消滅する自治体も相次ぎ、合併はいっそう進んでいる。大都市制度が拡大され、自治体の権限は法的に強化されているものの、大都市市長もファシスト与党系が席巻し、ファッショ体制の下支えをしているだろう。


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