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南アフリカ憲法照覧[補訂版](連載第24回)

2021-09-19 | 南アフリカ憲法照覧

(第四章)国の立法過程

法案全般

第73条

1 いかなる法案も国民議会に発議される。

2 閣僚もしくは副大臣または国民議会議員もしくはその委員会のみが、国民議会に法案を発議することができる。ただし、次の法案については、国家財政問題を担当する閣僚のみが議会に発議することができる。

(a)財政法案

(b)第214条で想定される立法[訳出者注:国家歳入の地方への配分に関する立法]を規定する法案

[第2項は2001年法律第61号第一条a項により改正]

3 第76条で言及された法案については、本条第2項a号またはb号で言及された法案を除いて、全州評議会に発議される。

[第3項は2001年法律第61号第1条b項により改正]

4 全州評議会代議員またはその委員会のみが、評議会に法案を発議することができる。

5 国民議会で可決された法案は、全州評議会によって審議されなければならないときは、評議会に付託される。全州評議会で可決された法案は、国民議会に付託されなければならない。

 本条から第四章最終の第82条までは、立法過程に関する細目的な規定が並ぶ。本条はその総則に当たり、法案の発議を中心とした原則が示されている。予算案を中心とする財政法案と歳入配分法案については財政担当閣僚にのみ発議権が与えられていること、全州評議会は州の代表院であることから、発議権は全州評議会代議員またはその委員会の専権とされていることが特筆される。

憲法修正法案

第74条

1 第1条及び本項は、次の要件によって可決された法案によって修正される。

(a)国民議会における75パーセント以上の議員の賛成、かつ

(b)全州評議会における6州以上の賛成

2 第二章は、次の要件によって可決された法案によって修正される。

(a)国民議会における3分の2以上の議員の賛成、かつ

(b)全州評議会における6州以上の賛成

3 その他の憲法条項は、次の要件によって可決された法案によって修正される。

(a)国民議会における3分の2以上の議員の賛成、かつ

(b)修正内容が以下の場合、全州評議会における6州以上の賛成

 (ⅰ) 評議会に影響を及ぼす問題に関わる場合。

 (ⅱ) 州境、州の権限、機能もしくは制度を変更する場合、または

 (ⅲ) ある州の問題を特別に扱う条項を修正する場合。

4 憲法修正法案は、憲法修正及び修正と結びつく問題以外の条項を含まない。

5 第73条第2項の定めるところにより憲法修正法案が発議される少なくとも30日前に、法案を発議しようとする人または委員会は―

(a)国民議会の規則及び命令に従い、パブリックコメントを得るため、修正提案の明細を官報で公表しなければならない。

(b)国民議会の規則及び命令に従い、その見解を得るため、州議会に提案明細を提出しなければならない。

(c)提案された修正が全州評議会で可決される必要のない修正である場合、全州評議会の規則及び命令に従い、公開討議に供するため、評議会に提案明細を提出しなければならない。

6 憲法修正法案が発議されたときは、その法案を発議している人または委員会は、公衆及び州議会から受け取ったいかなる意見書も、次の者に提出しなければならない。

(a)国民議会に上程するため、その議長

(b)第1項、第2項または第3項b号で言及された修正に関しては、全州評議会に上程するため、その議長

7 憲法修正法案は、次の時点から30日以内は国民議会の投票に付されない。

(a)法案が発議された時に国民議会が開会中であるなら、その発議の時。または

(b)法案が発議された時に国民議会が休会中であるなら、議会に上程された時。

8 第3項b号で言及された法案または当該法案の一部が特定の州もしくは複数の州にのみ関わる場合は、全州評議会は関係する州もしくは複数の州の議会によって承認されない限り、当該法案を可決しない。

9 国民議会、及び該当する場合は全州評議会によって可決された憲法修正法案は、同意を得るため大統領に回付されなければならない。

 本条は、憲法修正法案の可決条件や発議手続きを中心とした規定である。南ア憲法は議会の法律によって修正(改正)が可能な反面、修正内容ごとに要件を細かく設定することで、安易な修正に歯止めをかけている。共和国の政体を定めた第1条と憲法改正要件に関する本条第1項の改正要件が最も厳格で、基本的人権に関する第二章の改正要件がそれに次ぐ。
 また憲法修正法案の発議に際しては、事前にその提案明細を公表し、公衆や州からも意見を聴取することが義務付けられるなど、憲法改正に関する透明性と社会的な論議の機会が保障されていることも特徴である。


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