本欄で「がんばれギリシャ!」を書くのは、これで三度目になる。一度目は2011年9月、当時欧州債務危機の元凶としてギリシャが叩かれていた時期、二度目は翌年12年6月、総選挙(再選挙)で緊縮派が勝利しつつも、反緊縮派の急進左翼連合が野党第一党に浮上した時である。
そして、その急進左翼連合が今般総選挙で勝利し、とうとう政権に就くことになった。同党は前回総選挙で躍進したとはいえ、国際的な選挙大干渉と反緊縮策への有権者の躊躇から、野党第一党にとどまっていた。しかし、その後に展開された緊縮政策の苦しみを経験したギリシャ有権者は、今回は迷わず急進左翼を政権に就けたのだ。
金融市場にとっては痛い敗北であるが、打撃の影響範囲については議論があり、今後の動向を見なければならない。いずれにしても、緊縮を絶対化し、反対する者は市場の敵とみなす「緊縮全体主義」に対する地中海からの大きな反攻であることは間違いない。
とはいえ、急翼左翼連合は、社会党や共産党のような伝統的左派政党とは異なり、明確な理念を持たない左派の寄り合い所帯、「何となく左派連合」の域を出ていないうえ―大政党化すれば、その傾向は倍化する―、政権にありついたとなれば、ポストをめぐる諍いも起こり得る。しかも保守系反緊縮派政党との連立という「保革たすきがけ」を選択したため、政権運営は楽ではないだろう。
新政権が緊縮全体主義に傾く欧州主要国に包囲されながら、脱緊縮を実行し、かつ財政再建・生活再建を果たし、無事に任期を全うできるかどうかは不透明である。それでも、この地中海の反乱は、脱資本主義へ向けた小さな変化の灯火である。それすら消えてしまったら、真っ暗闇である。