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共産法の体系(連載第34回)

2020-05-10 | 〆共産法の体系[新訂版]

第6章 犯則法の体系

(6)少年処遇の諸制度
 刑罰制度を持たない共産主義的犯則法は、結果として成人に対する処遇と少年に対する処遇の区別を相対化させるため、いわゆる少年法に相当する特別法を別途用意する必要がない。
 とはいえ、成人と少年を完全に同等に処遇するという極端な政策は採らず、発達途上にある少年の特性を考慮し、少年に対する処遇に関しては相応の特例が設けられる。
 少年処遇における基本的な理念は、未成年ゆえに人格的な成長可能性を残す可塑性(柔軟性)の尊重である。このことは、刑罰制度を前提とした少年法においても理念としては否定されていないが、刑罰制度の例外として措定される少年法では、重大事犯ほど犯人たる少年への厳罰欲求が高まり、可塑性の理念は脇に押しやられがちとなる。
 これに対して、共産主義的な少年処遇にあっては、可塑性の尊重は例外なく貫徹される指導理念となる。そのためにも、「少年」の概念は法律上の成人年齢で形式的に区切られるのでなく、生物学的・医学的な発達段階に応じて決定される。
 従って、例えば法律上は成人年齢に達していても、発達障碍や知的障碍などから発達段階上は未成年とみなすべき者は、「少年」として認定・処遇されることになる。
 反対に、法律上は未成年であっても、発達段階上は成人に準じた段階にあると判断される者―法律上の成人年齢に近接する未成年者ほどそのように認定されやすいであろう―は、「成人」として認定・処遇されるのである。
 このように少年の概念を柔軟化したうえで、少年認定された犯則行為者に与えられる処遇は「教育観察」と「矯導学校編入」の二種である。
 「教育観察」は反社会性向の低い少年向けの少年版保護観察と言うべき処遇であるが、成人の保護観察よりも教育に重点が置かれる。
 「矯導学校編入」は、「教育観察」では更生が困難な反社会性向が高い少年向けの拘束的処遇の一種であるが、成人の矯正施設とは異なり、矯正と学業とを両立させるものである。
 なお、犯則には該当しない特定の問題行動(非行)をして補導された少年や単品の万引きのような軽微初犯の少年に対しては、少年処遇のルートから外し、直接に然るべき少年福祉機関に送致して福祉的な保護対応がなされる。


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