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持続可能的計画経済論(連載第3回)

2018-04-30 | 〆持続可能的計画経済論

第1章 計画経済とは何か

(2)計画経済と交換経済
 市場経済とは市場という交換の場を中心に回っていく経済体制であるので、市場経済はすなわち交換経済である。特に現代の交換経済では、貨幣という媒介商品を手段として交換取引が連鎖的に成立していくから、市場経済は貨幣経済と実質上同義とみなしてもよい。
 ただ、理論上は経済運営が市場メカニズムによるか経済計画によるかという問題と、交換取引の媒介手段が貨幣によるかどうかという問題は別次元の問題であり、計画経済と貨幣経済を両立させることは可能とみなされている。そのため、実際、かつてのソ連式計画経済も貨幣経済下で行われていた。
 しかし、観念のレベルを離れて経済運営の実践問題として見たとき、貨幣交換を中心として回っていく貨幣経済と計画経済は調和しない。貨幣経済は貨幣交換の連鎖で成り立っているが、それは需要と供給の成り行きに依存しており、多分にして投機的な要素を持つ。マルクスの言葉によれば、それは「市場価格の晴雨計的変動によって知覚される商品生産者たちの無規律な恣意」によって動いていくものであるから、事前の計画によっては制御不能なものである。
 そうした貨幣経済を計画経済に適応化させようとすれば、それは公的機関、特に政府による価格統制という技術によらざるを得ない。理論上は、経済情勢と需要・供給の事前予測に基づいて公的機関が適正な価格を設定することは可能とされるが、実際のところ投機的な貨幣交換を完全に制御することは不可能であり、旧ソ連を含め、価格統制政策に成功した例がないのは必然と言える。
 してみると、計画経済は本来的に貨幣経済の外にあるとみなしたほうがよさそうである。これを貨幣の側から考えてみると、本来アナーキーな本質を持つ貨幣経済は真の意味での経済計画とは相容れないということになる。
 この理をより根本に遡って考えると、計画経済とはそもそも非交換経済であると言い切ってもよいだろう。貨幣交換か物々交換かを問わず、およそ交換をしない。それが純粋の計画経済である。少しでも交換経済の要素が残るなら、それは真の計画経済とは言えない。
 市場とはすなわち交換の場であるから非交換経済は非市場経済でもあるが、そうであってはじめて計画が必要的となる。なぜなら、非交換=非市場経済では、経済運営の規範的指針となる計画なかりせば物やサービスが生産・分配されていかないからである。
 まとめれば、純然たる計画経済はまずもって非交換経済であって、それゆえにまた非貨幣経済でもあるということになろう。そう見れば、貨幣経済下で行われていたソ連式計画経済がなぜ交換経済的要素を排除し切れず、計画経済としては規律を欠いた中途半端なものに終始したかも理解されるのである。


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