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アメリカ憲法瞥見(連載第12回)

2014-10-18 | 〆アメリカ憲法瞥見

修正第一三条

1 奴隷制および本人の意に反する苦役は、適正な手続を経て有罪とされた当事者に対する刑罰の場合を除き、合衆国内またはその管轄に服するいかなる地においても、存在してはならない。

2 連邦議会は、適切な立法により、この修正条項を実施する権限を有する。

 本条はリンカーン大統領による奴隷解放宣言を受けて1865年に制定された修正条項であり、まさに奴隷制の禁止を定めている。日本国憲法にも影響し、類似の規定が見える。
 なお、本条と以下で瞥見する諸条項はいずれも公民権に関わる規定群であり、最初の10か条の権利条項の追加条項とも言えるので、順不同となるが、ここでまとめて瞥見する。

修正第一四条

1 合衆国内で生まれまたは合衆国に帰化し、かつ、合衆国の管轄に服する者は、合衆国の市民であり、かつ、その居住する州の市民である。いかなる州も、合衆国市民の特権または免除を制約する法律を制定し、または実施してはならない。いかなる州も、法の適正な過程によらずに、何人からもその生命、自由または財産を奪ってはならない。いかなる州も、その管轄内にある者に対し法の平等な保護を否定してはならない。

2 代議院議員は、各々の州の人口に比例して各州の間に配分される。各々の州の人口は、納税義務のないインディアンを除き、すべての者を算入する。但し、合衆国大統領および副大統領の選挙人の選出に際して、または、連邦代議院議員、各州の行政府および司法府の官吏もしくは州の立法府の議員の選挙に際して、年齢二一歳に達し、かつ、合衆国市民である州の男子住民が、反乱またはその他の犯罪に参加したこと以外の理由で、投票の権利を奪われ、またはかかる権利をなんらかの形で制約されている場合には、その州の代議院議員の基礎数は、かかる男子市民の数がその州の年齢二一歳以上の男子市民の総数に占める割合に比例して、減じられるものとする。

3 連邦議会の議員、合衆国の公務員、州議会の議員、または州の行政府もしくは司法府の官職にある者として、合衆国憲法を支持する旨の宣誓をしながら、その後合衆国に対する暴動または反乱に加わり、または合衆国の敵に援助もしくは便宜を与えた者は、連邦議会の元老院および代議院の議員、大統領および副大統領の選挙人、文官、武官を問わず合衆国または各州の官職に就くことはできない。但し、連邦議会は、各々の院の三分の二の投票によって、かかる資格障害を除去することができる。

4 法律により授権された合衆国の公の債務の効力は、暴動または反乱の鎮圧のための軍務に対する恩給および賜金の支払いのために負担された債務を含めて、これを争うことはできない。但し、合衆国およびいかなる州も、合衆国に対する暴動もしくは反乱を援助するために負担された債務もしくは義務につき、または奴隷の喪失もしくは解放を理由とする請求につき、これを引き受けまたは支払いを行ってはならない。かかる債務、義務または請求は、すべて違法かつ無効とされなければならない。

5 連邦議会は、適切な立法により、この修正条項の規定を実施する権限を有する。

 本条は様々な内容を寄せ集めたアメリカ的な憲法規定であるが、全体を通じてやはり前条と同様に、奴隷解放を受けた修正条項である。特に、第一項は平等な市民権の保障とともに、改めて平等な適正手続保障を規定している。
 第二項は、納税義務のないインディアンを除くすべての州民を下院議員の比例配分の基礎となる人口に算入するよう、自由人以外の奴隷を五分の三の端数として算定していた憲法第一条第二項第三号を修正したものである。第四号でも、奴隷喪失や解放に伴う金銭的な債務の引き受け、支払いを合衆国及び州に禁じている。
 なお、第三号は内戦や対外戦争に際して合衆国に敵対した公務員の公務就任権の剥奪とその解除について定めている。

修正第一五条

1 合衆国またはいかなる州も、人種、肌の色、または前に隷属状態にあったことを理由として、 合衆国市民の投票権を奪い、または制限してはならない。

2 連邦議会は、適切な立法により、この修正条項を実施する権限を有する。

 本条までの三か条が奴隷制廃止に伴う修正条項であるが、人種を主な理由とした選挙権差別を禁ずる本条は、公民権法の憲法的基盤である。しかし、当時は南部を中心に人頭税の支払いなどを新たな条件とした公民権差別は続き、人種差別的な選挙人登録制度を禁ずる連邦での本格的な公民権法の制定は、本条制定(1870年)からおよそ一世紀後の1964年のことであった。

修正第一九条

1 合衆国またはいかなる州も、性を理由として合衆国市民の投票権を奪い、または制限してはならない。

2 連邦議会は、適切な立法により、この修正条項を実施する権限を有する。

 人種に続き、性を理由とする選挙権差別を禁ずる本条は、女性参政権の憲法的根拠である。1920年の制定であった。

修正第二四条

1 合衆国またはいかなる州も、大統領もしくは副大統領の予備選挙その他の選挙、大統領もしくは副大統領の選挙人の選挙、または連邦議会の元老院議員もしくは代議院議員の選挙において合衆国市民が投票する権利を、人頭税その他の税を支払っていないことを理由にして奪い、またはこれを制限してはならない。

2 連邦議会は、適切な立法により、この修正条項を実施する権限を有する。

 本条は納税による選挙権差別を禁ずるものであり、人頭税の支払いができない黒人貧困層や納税義務を負わないインディアン部族が選挙から排除されないように配慮したものである。これをもって、ようやく米国における普通選挙制が確立された。1964年公民権法制定の同年に成立した修正条項である。

修正第二六条

1 合衆国またはいかなる州も、年齢を理由として、年齢一八歳以上の合衆国市民の投票権を奪い、または制限してはならない。

2 連邦議会は、適切な立法により、この修正条項を実施する権限を有する。

 選挙年齢を18歳に引き下げた修正である。米国では成人年齢は州ごとに異なるが、本条はそうした成人年齢とは切り離して、選挙年齢を全米で統一して18歳に定めたものである。選挙年齢に下限を設定すること自体は合理性を持つが、年齢による制限を合理的な限度まで緩和したものと言える。1971年に制定された公民権関連では最新の修正条項である。


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