ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

続・持続可能的計画経済論(連載第41回)

2022-12-06 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(8)製薬事業機構等の設立準備
 薬剤は最広義の意味における食品に分類できるが、一般の食品とは目的・性質が大きく異なるため、通常の消費財に係る消費計画とも、また基幹的な産業分野の生産計画Aや農林水産分野の生産計画Bとも区別された製薬固有の生産計画Cに基づいて生産される(拙稿)。
 その点、薬剤は原則として世界のすべての個人の生命・健康を保持するべく普遍的に供給されるべき性質を持つことから、基軸的な薬剤については世界共通計画のもとに製造・供給されることが本則である(拙稿)。
 そのうえで、各領域圏ごとの生産計画は、製薬企業体を統合した製薬事業機構が自主的に立案し、施行することになる。経過期間においては、製薬事業機構の設立準備として、個別の製薬企業の統合化が目指される。
 とはいえ、既存の製薬企業すべてを統合化する必要はなく、医師の処方箋医薬品となる代表的な疾患の治療薬やワクチンなどの基本薬剤及び少数の難病治療薬としての特殊薬剤の製造を担う企業の統合をもって足りる。
 しかも、既存企業の全社的な統合である必要もなく、一部部署を分社化したうえでの統合であっても差し支えない。統合されない残部署、処方箋医薬品の製造に関わらない製薬企業はそのまま自由生産企業として存続する。
 ちなみに、製薬事業は薬剤の有効性及び安全性の事前・事後の審査を行う独立かつ中立の薬剤規制監督制度の存在と不可分であるから、製薬事業機構とは完全に別立てとなる規制監督機関の設立準備も並行して実施される。
 この機関は企業体ではなく、基本的に行政機関の性格を持つが、事前的な有効性・安全性審査機関と事後的な安全性審査機関とを分立するべきである。
 そのうち、後者の事後的な安全性審査機関は患者からの具体的な薬害の訴えを審理し、被害者の救済や関係者の処分も行う護民司法的な機能を備えた機関とするため、医学者・薬学者のみならず、薬事法に精通した法曹も参与する機関となる。


コメント    この記事についてブログを書く
« 続・持続可能的計画経済論(... | トップ | 近代科学の政治経済史(連載... »

コメントを投稿