ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

共産教育論(連載第14回)

2018-11-12 | 〆共産教育論

Ⅲ 基礎教育課程

(3)原則的通信教育
 共産教育における義務的な基礎教育課程は、既存の教育システムとは相当に異なるが、中でも最も大きな特色は原則的に通信制を採るということである。すなわち、通信制では提供できない一部科目を除いて、基本的には遠隔通信教材を用いて実施される。
 そのため、既存の教育システムにおける学校という形態を採らない。もっとも、13か年一貫制のシステム全体を機能的な意味で一つの「学校」とみなすことはできるが、校舎という物的な施設を伴う学校制度ではない。
 具体的に言えば、生徒は専用インターネットを通じて予め配信された通信教材を用いて、自宅または指定自習室を利用して、自分のペースで学んでいく。教材のあり方については後に述べるが、各科目ごとに既成の知識を満載した教科書ではなく、一定の基礎知識を前提に自ら内発的に問いと立てて探求する作業を繰り返していく方式である。
 もっとも、基礎教育課程の初等段階(既存義務教育制度のおおむね小学校1、2年相当)では、まだ自ら問いを立てることが困難であるため、言語や数を中心とした基礎的な知識の習得も実施されるが、それも自ら問いを立てるための前提知識の習得という意義を持つ。
 そのため、通信教育で提供される科目では、教師が一方的に開設する講義スタイルの受身的「授業」は一切排除される。ただし、基礎教育の初等段階では、アニメーションを活用した解説型の映像教材が多用されるが、13か年のステップを進むにつれ、解説型映像教材の割合は低下し、完全自習型の教材が中心を占めるようになっていく。
 通信教育に必要なインターネット回線及び端末は専用のものが無償かつ安全にすべての子どもに提供される。この専用インターネット回線は、基礎教育の教材開発を専門とする機構が直営する専用プロバイダーを通じて提供され、予めセットされた厳重なフィルター機能により教材及び教科関連の優良サイト以外へのアクセスは遮断される。
 また、前回見たように、基礎教育課程は障碍者統合教育を基本とするため、障碍を持つ生徒向けには、その障碍の特性に合わせた障碍者支援機能が備わった専用端末や専用教材が提供されることになる。
 こうした遠隔通信教育を有効に実施するため、基礎教育の提供主体となる地域圏の各地区―教育区―ごとに基礎教育センター(以下、「センター」と略す)が設置され、そこに教員を配し、指定自習室や図書室、通学で提供される一部科目用の教室や室内運動場も附置する。この施設は外見上は既存の校舎に類似するが、学校というよりは教育サポート施設である。
 生徒は、自身の趣向や家庭事情に応じて、自宅学習か指定自習室での学習かを随時選択できる。教員への質問や相談は随時電子メールや遠隔チャットで受け付けるほか、事前予約すれば、センターで教員と面談し、個別に質問や相談をすることもできる。
 なお、通信制では提供できない科目として、健康体育や生活技術といった実技科目のほか、職場見学やインターン方式を採る職業導入教育、反差別教育の一環としての障碍者コースとの交流教室などがあるが、これらについては各該当項目で改めて触れる。


コメント    この記事についてブログを書く
« 犯則と処遇(連載第3回) | トップ | 共産教育論(連載第15回) »

コメントを投稿