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ギリシャ危機‐反資本連帯の芽

2015-07-06 | 時評

ギリシャの国民投票で反緊縮が多数を占め、緊縮継続拒否の国民的意思が明瞭に示された。反緊縮を掲げる左派政権(ツィプラス首相)が一月に成立した以上、かなりの程度予測された結果であった。民主主義を共通価値として標榜するEUがこの結果を公然無視することはできないだろう。

とはいえ、すでに分析されているように、緊縮でも反緊縮でもギリシャ経済の苦境に変わりなく、進むも退くも地獄道である。ギリシャをめぐっては、2011年の債務危機表面化以来、本欄で「がんばれギリシャ!」の記事を三度掲載してきたが、ここまでくると、ギリシャ一国のがんばりだけでは不足である。

ギリシャ危機が象徴しているのは、ギリシャ一国の問題ではなく、資本主義の矛盾そのものである。緊縮は一般労働者大衆の生活を犠牲にする資本主義の生き残り策であり、日本でも社会保障費削減という形ですでに断行されている。他方、反緊縮は国家財政の破綻につながり、結果としてやはり一般労働者大衆の生活は圧迫される。

ギリシャ危機はこのような矛盾の大元を懐疑する最良の契機である。ギリシャを核に、反資本主義の旗を。ただし、国家的同盟ではなく、民際的連帯の形で。

資本主義者の中には、かつてギリシャ内戦が東西冷戦の導火線となった過去を想起する者もいるようだが、ギリシャ危機を「新冷戦」の開始に利用しようとする同盟策動は許すべきでない。そのためにも、民際的連帯が必要なのである。それは精神的な連帯にとどまらず、マイクロクレジットのような庶民金融事業を通じた物質的な支援も含むものでありたい。

[追記]
国民投票結果にもかかわらず、ツィプラス首相はEUが求めた緊縮策を受諾した。権力維持を最優先する政党政治家の本質が早くも露呈した。これにより当座を弥縫的に救えたとしても、市場原理・緊縮財政に邁進するEUに抵抗する大きな潮流を作るチャンスを失したことになる。こうした悪しき現実適応主義は欧州左派の総崩れを招くだろう。


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