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災害に強い計画経済

2016-04-22 | 時評

震災のつど繰り返される深刻な問題が、被災地の物資不足である。その理由として、行政的な非効率などの技術的な理由も挙げられるが、より本質的には市場経済そのものの弱点による。つまり、市場経済は災害に弱いということである。

市場経済は元来、事前の全体計画なしに個別資本がそれぞれの商業的な生産計画に従って競合的に商品を生産・流通させるシステムである。そのため平常時の大規模流通は見事であるが、その裏では過剰生産による大量の売れ残り・廃棄を余儀なくされる。

ところが、災害時には被災者が各自で貯蔵した物資を消費できず、店舗に殺到したり、避難所に駆け込んだりするため、たちまち物資不足に陥る。他地域から救援物資を緊急輸送しようにも、道路網が寸断されればそれも困難となる。

このような過剰経済から不足経済への激変現象は、とりわけ人間の胃袋という気まぐれな臓器に左右される食糧品の分野では、まさに天国から地獄へのような暗転現象を引き起こすことになる。

もっとも、災害が一段落すれば物流はいつとは知れず徐々に回復されていくとはいえ、そのような事前の無計画と事後の自然調節は、まさしく資本主義市場経済の放埓な一面を示している。

その点、計画経済であれば、事前の生産計画中に災害時の備蓄に回す余剰生産が含まれるため、地域ごとに少なくとも1か月分、あるいはそれ以上の長期的な備蓄を貯蔵し、災害時にはそれを直ちに供出・配給することも可能である。

ただ、災害時には、集積された物資の分配方法をめぐって困難を生じ、そのために結果として物資不足が生じることも少なくないが、これも平常時は貨幣交換で回っている市場経済にとって非常時の無償供給は不慣れであることによる混乱である。

この点は、計画経済でも流通においては貨幣交換を前提とする「社会主義」計画経済であれば同じ問題が生ずる可能性はあるが、真の計画経済は貨幣交換によらない無償供給経済であるから、平常時と非常時の流通システムは同一であり、非常時の混乱は最小限に抑えられるであろう。

そうすれば、平常時の文明的生活―資本主義の文明化作用―が一つの災害によってたちまち難民生活さながらに暗転してしまうような耐え難い激変事態―資本主義の難民化作用―を防ぐことができる。

こうしてみると、日本のようにいつどこで大地震に見舞われるか予知できず、しかも今後もいくつもの大地震が予測されるような―本来、地質的には人間の永住に適しない―土地柄では、市場経済ではなく、計画経済のほうが適していることを実感できるのである。


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