権利の実現
【第38条】
本項に掲げられたいかなる人も、権限ある裁判所に提訴し、権利章典における権利が侵害され、または脅かされていることを申し立てる権利を有する。裁判所は権利の宣言を含む適切な救済を与えることができる。裁判所に提訴できる人は、以下のとおりである。
(a) 自分自身の利益のために行為する者
(b) 自分自身の名義で行為できない他人のために行為する者
(c) ある集団もしくは階級の一員として、またはその利益のために行為する者
(d) 公益のために行為する者
(e) その構成員の利益のために行為する団体
本条は、人権訴訟を起こす権利と、そうした訴訟を起こす適格者について規定する。人権を絵に描いた餅に帰さないため、提訴権を憲法上保障するとともに、訴訟適格を広く定めている。特に、集団や階級のためにする代表訴訟や公益訴訟、団体訴訟の形態も認めるのは先進的と言える。
権利章典の解釈
【第39条】
1 権利章典を解釈するに際して、裁判所、審判所または審査会は―
(a) 人間の尊厳、平等及び自由に基づく開かれた民主的な社会の礎となる諸価値を推進しなければならない。
(b) 国際法を考慮しなければならない。
(c) 外国法を考慮することができる。
2 いかなる法律を解釈するに際しても、またコモン・ローまたは慣習法を発展させるに際しても、すべての裁判所、審判所または審査会は、権利章典の精神、趣旨及び目的を推進しなければならない。
3 権利章典は、これに合致する限り、コモン・ローもしくは慣習法によって認められ、もしくは与えられたいかなる権利または自由の存在をも否定しない。
第二章権利章典の最終条の本条は、権利章典の解釈に当たっての一般的な基準を定めている。いずれも基本的な内容であるが、第1項で裁判所その他の評定機関に国際法の考慮を義務付け、外国法の考慮をも容認するのは、狭量な国内法優先主義を排する先進的な規定である。なお、第3項でコモン・ローや慣習法を尊重するのは、かつて植民地支配を受けた英国の系譜を引くコモン・ロー主義の伝統を守るものだろう。