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犯則と処遇(連載第8回)

2018-11-30 | 犯則と処遇

6 矯正処遇について(下)

 前章で、「矯正処遇」にはさらに細分化された種別があると述べたが、その種別としては軽いものから順に、第一種から第三種まで三つの区分を想定することができる。この種別を分ける基準となるのは、反社会性向と病理性の強弱である。
 従って、司法機関による各種別の選択決定にあたっても、刑罰とは異なり、結果の重大性とか犯行態様の悪質性などといった応報的要素によるのではなく、反社会性向と病理性の程度を科学的に判定したうえで決せられるのである。

 具体的に見ていくと、まずは「第一種矯正処遇」であるが、これは1T=1年とし、法定更新は1年ごとに2回まで(最長3年)、裁量更新は2年を年限として(通算5年が上限)認められる種別である。これに該当するのは、比較的軽微な犯則行為者で、病理性も弱いが、反復性が認められ、一定以上の反社会性向を持つ者である

 次いで「第二種矯正処遇」であるが、これは1T=3年とし、法定更新は1回目2年、2回目1年を限度に(最長6年)、裁量更新は4年を年限として(通算10年が上限)認められる種別である。これに該当するのは、反社会性向は強いが、病理性はさほど強くない者である。

 最も重いのは「第三種矯正処遇」である。これは1T=5年とし、法定更新は1回目3年、2回目2年まで認められ(最長10年)、裁量更新は認められない代わりに「終身監置」が予定されている種別である。これに該当するのは、病理性の強い者であるが、その中でも精神医療的対応を必要としない「A処遇」とそれを必要とする「B処遇」とにさらに下位区分される。 

 なお、「終身監置」は、前章でも述べたとおり、例外的な矯正困難者に対する処分であるから、改めて司法機関による決定を絶対条件として、極めて慎重な運用が要求される。
 ただし、「終身監置」に付された場合でも、再犯の危険が相当程度に除去されたと認められるときは、通常の保護観察よりも行動制限の強い特別保護観察付きでの「仮解除」が許され、「仮解除」の間にさらに改善・更生が進めば「本解除」も許されるというように柔軟性を持たせる。

 以上の三種の「矯正処遇」に共通しているのは、もはや懲役刑におけるような労働(刑務作業)の強制はないということである。「矯正処遇」の中心はどこまでも矯正のためのプログラムそのものである。

 その具体的な内容も三種別で異なっており、反社会性向がさほど強くない者を対象とする「第一種矯正処遇」では外部講師を招聘しての講話や対象者同士でのワークショップのような集団的処遇が中心となる。
 これに対して反社会性向が強い者を対象とする「第二種矯正処遇」では心理セラピーやカウンセリングなどのより個別的な処遇が中心を成す。
 さらに病理性の強い者を対象とする「第三種矯正処遇」ではよりいっそう個別性が強化され、全体として治療的な処遇が中心となる。特に「B処遇」では臨床心理士や医師も加わったチームによる医療的な対応が行われる。


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